IT業界にブラック企業が多いと言われるワケ
グーグルやアップル、マイクロソフトといった最先端のグローバル企業が名を連ねるIT業界。ベンチャー企業の数も多く、起業から数年で上場する会社も珍しくありません。
しかし、ブラック企業問題が知られるようになるにつれて、「IT業界はブラック企業ばかり」という声も散見されるようになりました。IT業界とブラック企業の関係について考えてみましょう。
IT業界の多重下請け構造
建築業界と同じく、IT業界には“多重下請け構造”があります。例えば、大手百貨店が「各店舗の商品在庫を管理できるシステムがほしい」と考えたとしましょう。そのようなとき、まず大手の有名IT企業(大手SIerと呼ばれます)が元請けとしてシステムの仕様策定や大まかな設計を行い、実際の開発(プログラミング)やそのテストなどは中小企業に2次請けとして委託するのが一般的です。2次請けでも人手が足りなければ3次請け、4次請け…とさらなる下請けへ委託されていきます。
もちろん、独自の自社サービスを開発・販売している中小企業や、顧客企業から直接受注を行っている中小企業もあります。しかしIT業界の中小企業は、この多重下請け構造の中で2次請け・3次請けとして業務を行っている会社が圧倒的に多いのが現状です。
多重下請け構造がブラック化を招く!
このような構造は、下請け企業に次のような問題点を引き起こします。そしてこれこそが、IT業界にブラック企業が多いと言われる理由です。
- 中間業者が多く入るため、下請け企業ほど利益が低くなる
- 開発現場の仕事量が元請け企業の意向に左右される
- 細分化された仕事しかできないので、やりがいが感じられない
利益の少なさは、そのまま社員の給与の低さにつながります。また、仕事量が元請け会社の意向に左右されやすいので、急な追加開発をお願いされて徹夜作業や休日出勤を強いられることも多々あります。さらに下請け企業の社員は、元請けから降りてきた仕事をこなすだけになりやすく、プロジェクト全体を把握することができません。結果、「自分は何の仕事をやっているんだろう」、「何のための仕事なんだろう」とやりがいを見失ってしまいます。「IT業界はブラック企業が多い」という声は、こうした多重下請け構造を背景として生まれてきたものなのです。
ブラックではないIT企業を見分ける質問
もちろん、下請けの中小企業の中にも働きやすさとやりがいを感じられるIT企業はあります。ブラック企業ではないIT企業を見分けるコツは以下の通りです。
1. 独自サービスの開発にも人材を割いている
下請けの受託開発だけでなく、独自サービスの開発・販売も行っている企業は、元請け会社に依存しない経営を目指していると見なせます。ただし、独自サービスを開発しているとうたっていても、有名無実化している可能性があります。転職面接などでは「○○のサービスを行っていますが、開発にはどれくらいの人員・予算を割いていますか?」と質問してみましょう。
2. 入社4年目以上のITエンジニアが複数在籍している
ブラック企業の度合いが強まれば強まるほど、若手エンジニアが3年以内に退職してしまいます。逆を言えば、入社4~5年目以上の中堅エンジニアが多く在籍していれば、長く働き続けられるIT企業と推測できます。面接で現場リーダークラスのITエンジニアに会わせてもらい、その方に在籍年数を質問してみると良いでしょう。
3. ITエンジニアに対する人事評価・福利厚生が整っている
ITエンジニアの仕事に対して理解がある会社では、開発への貢献度やチーム内での役割に応じた人事評価を行っています。また、自主勉強会に対するサポートや資格取得支援制度などの福利厚生も設けています。こうした制度が整っていれば、ITエンジニアを酷使するような会社ではないと見なせます。
4. 現場のエンジニアの「その会社で働く理由」がポジティブである
面接でエンジニアの人たちとも面談させてもらい、「あなたが考える、この会社で働き続ける理由は何でしょうか?」と質問してみてください。ここで「技術力が高く、スキルが身につく」、「会話しやすく、人間関係が良好」といったポジティブな答えが返ってきたら、まともなIT企業である可能性が高いでしょう。
最終的にブラック企業かどうかを判断するのはあなた自身ですが、上記のような質問からエンジニアが酷使されていないか、下請け構造に依存していないかなどをある程度推測できます。転職や就活での判断材料に役立ててください。