学生たちを悩ませるブラックバイトとは?
ブラック企業の問題が周知されるにしたがって、同様の問題が学生アルバイターの身にも起きていることが明らかになってきました。いわゆる「ブラックバイト」がこれに当たります。
ブラックバイトは、一人暮らしの学生たちを悩ませる問題ですが、正社員として働く人にとっても無関係ではありません。近親者や友人・知人がブラックバイトに苦しんでいるかもしれませんし、もしかしたらあなたの会社や取引先が学生たちをブラックバイトで働かせている可能性もあります。ブラックバイトの問題について、詳しく考えてみましょう。
ブラックバイトとは何か?
ブラックバイトという言葉を提唱した中京大学の大内裕和教授は、ブラックバイトを「学生であることを尊重しないアルバイト」と定義づけています。具体的には、以下のような事例がブラックバイトの典型例として報告されています。
- 学業に支障をきたすようなシフトを強要する
- 正社員並みの重いノルマを課す。また、自腹での買い取りを強要する
- 準備や片付け、残業の時間分の賃金が支払われない
- 後任者を見つけてから辞めるように強要する
- 店長・マネージャー等からのパワハラ・セクハラ、嫌がらせ
1に関しては、試験や卒業論文作成などを無視したシフトで働かされ、単位を落としてしまうこともあるようです。バイトを辞めれば済むのではないかと思う人もいるでしょうが、4のように「辞めるのなら、後任者を見つけてから辞めるのが常識だ」などと詰め寄られ、辞めたくても辞められない状況に追い込まれてしまう学生も多くいます。
学生アルバイターに正社員並みの責務とノルマを課すのであれば、正社員並みの給与と待遇を保証するべきです。しかし、そういった報酬や見返りもないままに、社会人経験の少ない非正規労働者を搾取するというのがブラックバイトの実態と言えるでしょう。
なぜブラックバイトが増えたのか?
では、なぜこうしたブラックバイトの問題が取り上げられるようになったのでしょうか。これには、大きく以下の2点が指摘されています。
- 非正規労働者の増加と、その働き方の変化
- 一人暮らし学生への仕送り額の減少と、それに伴う学生バイトの増加
リーマンショック以降、企業は人件費削減のために非正規労働者を大量に採用するようになりました。しかし、非正規労働者が増えたからと言って、顧客に提供するサービスの質を落とすことは困難です。また、正社員が減った分、売り上げが減ってもいいと考える経営者もまずいません。結果的に、正社員に求められていた責務やノルマを、アルバイターやパート社員が肩代わりすることになりました。
一方、リーマンショックによって企業の業績が悪化すると、親が子(学生)へ支払える仕送り金額も減ります。例えば、10万円以上の仕送り金額を受け取っている学生の割合は、1995年には62.4%いました。しかし、その後ほぼ右肩下がりを続け、2014年には29.3%に減少。逆に、仕送り金額0円~5万円未満の学生は1995年の7.3%から、2014年には23.9%へと増加しています。仕送り金額が減れば、学生たちはアルバイトしながらの学生生活を余儀なくされます。企業側は、アルバイターの確保には困らないため、1のように重責を負わされる学生アルバイターが増えてしまうのです。
ブラックバイト問題への対策
ブラックバイトは、まだまだ問題が認知されたばかりであり、社会全体の議論を呼び起こすまでには至っていません。そのため、まずは以下のような対策が早急に望まれるでしょう。
- ブラックバイト問題の社会的認知をさらに高める
- 労働組合や弁護士団体による学生アルバイターへの支援
- 行政によるブラックバイト問題の実態把握と対策
- 非正規労働者に関する労働法規の遵守を、企業に徹底させる
- 学生への負担が少ない奨学金制度の確立
ブラックバイトによって働く意欲を失った学生は、正社員として働くことさえ避けるようになるかもしれません。そうなれば、少子化に悩む日本の労働市場にとって大きなマイナスです。また本来、学業を優先させるべき学生たちが、ブラックバイトで苦しんでいいはずもありません。ブラック企業問題と同様に、社会全体としてブラックバイト問題にも取り組んでいく必要があるでしょう。