ブラック企業から退職するための4つの心構え
「ブラック企業から退職したい」と考えても、なかなか実行にまで踏み切れない人は少なくありません。「退職の話を切り出したら理不尽に怒られるのでは……」と懸念する人、「会社を辞めることはキャリアダウンにしかならない」と余計な先入観を持っている人もいるでしょう。ブラック企業から脱出するためにも、以下のような心構えをしっかりと身につけておきましょう。
1. 退職・転職は労働者に認められた権利だと心得る
日本国憲法の第22条には「職業選択の自由」が定められており、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と記されています。つまり政治家など社会的に重要な職業でもない限り、本人の退職・転職を妨害することは憲法に反するのです。ブラック企業から抜け出す第一歩として、退職は憲法にも認められた労働者の権利であると、しっかり肝に銘じておきましょう。
2. 「会社に迷惑がかかる」と考えない
「いま辞めたら会社に迷惑がかかるのでは」「繁忙期だから退職できないかも」といった気持ちから、退職をためらってしまう人がいます。しかしそれで働き続けた結果、会社があなたの将来のキャリアを実現してくれる保証はあるのでしょうか? いざ働けなくなったら「もう来なくていいよ」とあっさり解雇するのがブラック企業です。退職に際しての業務引き継ぎ(あるいは引き継ぎマニュアルの作成)など、やるべきことさえやっていれば、退職して迷惑がかかると考える必要はまったくありません。
そもそも企業とは、病気やケガ、定年、結婚・出産などの理由で、毎年ある程度の退職者が出て当たり前のものです。「辞めたら損害賠償する!」などと言って退職を妨げようとする経営者は、組織運営に無能なだけだと知っておきましょう。また、退職した人の後任者を用意するのは会社の責任ですから、「辞めたら顧客に迷惑をかけてしまう」と思い悩む必要もありません。
3. 「転職者=負け組」と思い込まない
退職意思を切り出すと、「転職は負け犬のすること」「逃げる人が転職先で成功するわけない」と引き止め工作をしてくるブラック企業は多数あります。しかし、日本では年間で約250~300万人の転職者がいると推計されています。もしブラック企業側の言い分が正しければ、毎年250万ものビジネスパーソンがキャリア形成に失敗していることになりますが、そうしたニュースは聞こえてきません。
また、ブラック企業にありがちなサービス残業(給料の未払い)やパワハラ、セクハラなどはれっきとした違法行為です。そうした違法のまかり通る会社に身を置くことが、まともなキャリア形成に役立つのでしょうか? 転職は、新たなキャリア形成であり、それだけで“負け”にも“逃げ”にもなりません。転職についてのネガティブな意見に耳を貸すことなく、粛々と次の会社を探しましょう。
4. 世の中にあるさまざまな会社と働き方を知る
ブラック企業で日々の仕事に追われていると、他社に転職することや、別の職業にキャリアチェンジすることが頭から抜け落ちてしまいがち。また、「どうせどの会社もブラックだし……」と、働き方を変えることをあきらめてしまう人もいるようです。しかし、日本には大小さまざまな400万社以上の企業が存在します。海外も含めれば、それこそ星の数ほどの会社が存在するでしょう。常識的に考えて、そのすべてがブラック企業のはずがありません。もちろん、完ぺきなホワイト企業は多くはないでしょうが、たとえそうだとしても最初から「もう行き場がない!」と絶望してしまうのは、明らかにもったいないでしょう。
また現代では、必ずしも正社員だけが“正しい働き方”ではありません。自営業やフリーランスで働く人、派遣+副業で会社にしばられずに働く人、ネットで株取引をしながらアルバイトで働く人もいます。さまざまな会社と多様な働き方に目を向け、「ブラック企業でも働き続けるしかない」などと思いこまないことが大切です。
ブラック企業問題は、「とっとと辞めればいいのに」で済ませられないことも多く、確かに根深い問題です。しかし、個人個人が自らのキャリア形成に主体的になり、“あと一歩”を踏み出すことができれば解決できるケースも多くあります。「自分のキャリアは自分でつくる」という意識を持ち、会社に依存しない生き方を目指しましょう。