転職前に知っておきたい給与制度の違い
企業におけるさまざまな職種の中でも、営業職は特に大きな給与の差が生まれやすい職種です。その背景にあるのが、給与制度の違い。例えば年俸制やインセンティブ制度などを導入している企業では、特に給与差が成果によって大きく開くでしょう。
しかし中にはこうした給与制度の違いよくわからないまま転職し、思うような待遇を得られていない人も少なくありません。特に営業職でよくある給与制度として、「月給制」「年俸制」「インセンティブ制度」を覚えておきましょう。
月給制
大手企業をはじめ、国内において最も多いのが月給制です。営業職に限らず、事務や経理、技術職などでも月給制が基本でしょう。毎月の給与額が定められており、年1〜2回の人事考課を通じてその金額が改定されます。なお、月給制の企業では賞与が別途設けられている場合が多く、会社全体の業績に応じてその金額が決まります。
月給制の場合、あらかじめ昇給の幅が定められており、飛び級のように給与額が大幅に上がることは少ないでしょう。そのため、給与の伸び率は緩やかとなります。その反面、よほど営業成績が悪い、あるいは業績不信等にならない限り、減額となることもあまりありません。したがって、月給制は安定志向が強い方、安定的にノルマをあげられる営業職(既存顧客向けのルート営業など)に適した給与制度と言えます。逆に「どんどん成果をあげて出世したい」「一気に稼ぎたい」など上昇志向の強い方にとっては、物足りなく感じてしまうでしょう。
年俸制
1年に1回、前年度の営業成績に応じて年間給与を決定し、それを12分割して毎月支払うのが年俸制です。基本的に賞与はありませんが、年間給与を14分割して、決まった月に2か月分支払っている企業もあります。
年俸は前年度の成果を踏まえたうえでの期待値と捉えることもでき、多くの場合、年俸決定と同時に次年度の目標(=ノルマ)が与えられるでしょう。それを下回れば、当然ながら翌年度は減俸となります。逆に期待値を大きく上回る成果があげられれば、一気に高給を得ることも可能です。営業成績と給与額とが、とても密接に繋がった給与制度と言えます。
成果によって毎年給与額が見直されるため、極端な例だと、成果によっては給与が前年度の半分以下になる可能性もあります。ただしそれは成果に対する正当な評価であり、「自分の実力をしっかり評価してほしい」「早くから高給を得るためガンガン働きたい」という方には、良いモチベーションになるでしょう。特に外資系企業やベンチャー企業に多く見られます。尚、初年度は採用選考を経て、前職の年収などを踏まえながら年収が決定します。ただし、いくらそこで高い給与が提示されても、安心してはいけません。初年度の成果が思うように出なければ、すぐに翌年度からは給与が下がってしまうのです。
インセンティブ制度
インセンティブ制度では、固定の基本給にプラスして営業成績に応じた給与が上乗せされます。インセンティブはまさに自身の営業活動に対する評価であり、成果が給与に正しく反映される制度と言えるでしょう。不動産会社や生命保険会社といった営業主体の企業で多く見られ、成果次第では入社初年度でも高給を目指すことが可能です。
ただしインセンティブがある分、固定の基本給は低めに設定されています。成果が出なければインセンティブが得られず、結果として年収が低くなる可能性もあるでしょう。「インセンティブで稼ぐ」と意気込んで転職した結果、かえって転職前より給与が下がることもありえます。安定志向より上昇志向が強く、特に「若いうちにがむしゃらに働いて稼ぎたい」「実力を磨き、それに見合った給与を獲得したい」という人に向いている環境です。
収入は働くうえで大切なポイントです。転職時には、「今より高い収入を得たい」と考える人が少なくないでしょう。しかし、営業形態や商材、業界、あるいは企業規模などが異なれば、必ずしもこれまで通りに営業成果を挙げられるとは限りません。インセンティブ制の給与を選んだばっかりに、転職後に年収が下がる可能性もあります。自身がどのように働きたいのかをよく考え、企業の体制をあらかじめ把握したうえで、転職先を選ぶようにしましょう。(ライター:ナレッジ・リンクス/三河賢文)