営業職が起業に誘われたときの注意点
昔と比べて、起業のハードルはかなり低くなりました。そのため、「起業するから一緒にやらないか?」などと誘われるケースもよく見られます。特に営業職は経営の要とも言える重要な仕事。そのためスタートアップの段階では、とても重宝されることでしょう。しかし起業への誘いにのることは、通常の転職とは異なります。場合によっては、後悔することになりかねません。営業職が起業へ誘われた際、注意すべきポイントを詳しく見てみましょう。
起業当初の営業活動
起業に誘われるということは、つまり会社の立ち上げにゼロから関わるということ。もちろん商品・サービスが決まっていることは前提ですが、「どうやって売るのか」などの営業戦略もゼロからの出発と考えて良いでしょう。特に、誘い相手が営業経験を持たない場合、そもそもの売り方や営業戦略の立案まで、すべてを一任される可能性もあります。
中には起業時、前職の繋がりからすでに顧客を抱えた状態でスタートする場合もあるでしょう。しかし基本的には、ゼロから顧客開拓が必要と考えてください。取り扱う商品・サービスが誰に求められ、どのような提案が適するのかは、営業職が自ら考えていくこととなります。
立場によっては給与ゼロもあり得る
起業に誘われる場合、「従業員として雇われる」のか「役員として参画する」のかで大きな違いがあります。前者であれば事前に条件を詰め、とりあえずの給与は得られるでしょう。しかし役員の場合、給与ではなく役員報酬が支払われます。役員報酬はその金額こそ事前に取り決めますが、利益が出なければ支払われない可能性も少なくありません。そして雇用契約ではないため、たとえ支払われなくても会社に文句が言えないのです。
もちろんその反面、経営そのものに深く関われるでしょう。利益が大きくなれば、それだけ多くの収入も期待できます。問題は、成功するまで諦めず取り組む覚悟があるかどうか。役員として誘われた場合には、ハイリスク・ハイリターンである点をよく理解しておかなければいけません。そういう意味で、起業への誘いは転職ではなく、自ら起業するのに近い状況といえるでしょう。
営業活動外の仕事も発生する
起業時に営業職として誘われた場合、担うべき業務は営業実務だけに留まりません。少数で起業するならば、企業活動において必要な業務すべてをその人数でこなす必要があります。例えば広報・販売促進、経理、ときには商品・サービスの開発および改善に関わる場合もあるはずです。そのため、ただ営業活動だけに集中できる環境ではありません。営業職として成果をあげながら、企業の運営全般にも関わる。当然、忙しさはこれまでの比ではないでしょう。限られた時間でどれだけ多くの仕事をこなせるか。業務効率を上げていかなければ、営業活動そのものが進まなくなってしまいます。
起業に誘われたら、舞い上がらず現実的に考えましょう。どのような事業に取り組もうとしており、社会的ニーズや将来性はどうなのかを考えます。また、自分自身に「起業したいのか?」と問いかけてください。ここで取り上げた注意点を踏まえながら、営業職として目指すべき理想像と、起業後のイメージを照らし合わせます。いくら友人・知人からの誘いでも、決して安易にのってはいけません。自分にとって最良の選択をしてください。(ライター:ナレッジ・リンクス/三河 賢文)