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    【SaaS業界への転職】インフラ系クラウド営業の現状と将来性 DX推進の基盤を支える

    SaaS業界

    DX基盤となるクラウドインフラの需要は急速に高まっています。富士キメラ総研の調査によると、SaaS(Software as a Service)市場は年平均成長率10.9%で拡大を続けており、2028年には3兆円に迫る見込み。それに伴いインフラ系クラウド営業の重要性も増しています。

    しかし、このフィールドでは単なる「物売り」ではなく、顧客のビジネス課題を理解し、最適なソリューションを提案できる「コンサルティング型営業」が求められています。本コラムでは、従来の営業からの転職を考える30代前後の方々に向けて、インフラ系クラウド営業の現状、必要なスキル、そして将来性について解説します。

    インフラ系クラウド市場の急成長

    クラウドインフラは、企業がDXを進める上で欠かせない基盤技術です。市場の拡大とともに、この分野の営業職の需要も高まっています。

    1. インフラ系クラウド需要の急増

    コロナ禍を契機に、企業のデジタル化は一気に加速しました。テレワークの導入やオンライン会議の普及など、ビジネスの在り方が根本から変化する中、その基盤となるクラウドインフラへの投資は急増しています。

    総務省の「通信利用動向調査」によると、日本企業のクラウドサービス利用率は2023年時点で77.5%に達しています。この数字は「全社的にクラウドサービスを利用している」の50.5%と「一部の事業所または部門で利用している」の27.0%をあわせたものです。

    この調査では、クラウドサービスを利用する企業の約9割が「効果を実感している」と回答しています。これらの数字は、日本企業におけるクラウドサービスの普及が急速に進み、多くの企業がその効果を認識していることを示しています。

    このトレンドは今後も継続すると予測されています。ガートナー社の分析によると、日本のパブリッククラウドサービス市場は急速に成長しており、2025年には約3兆1,355億円の規模に達すると見込まれています。さらに、2025年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)16.65%で拡大し、2030年には6兆円を超える市場になると予測されています。

    特にIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)といったインフラ系サービスの成長率は25%を超えており、市場の拡大とともに営業人材の需要も高まっています。

    2. インフラ系クラウドの導入状況と今後の展望

    日本企業におけるクラウド導入は段階的に進んでいます。初期段階では単純なファイル共有やバックアップ目的での利用が多かったものの、現在は基幹系システムのクラウド移行が本格化しています。この流れは「クラウドファースト」から「クラウドオンリー」へとシフトしており、新規システム構築においてはオンプレミス(自社運用)を前提としない企業が増加しています。

    業種別に見ると、金融・保険業界では、セキュリティ上の懸念からクラウド導入に慎重な姿勢を示していましたが、金融庁がフィンテック推進の観点からクラウド活用を後押ししており、導入が進んでいます。また製造業では、IoTやデジタルツインといった技術とクラウドを組み合わせた「スマートファクトリー」への投資が活発化しています。

    今後5年間の展望としては、マルチクラウド(複数のクラウドサービスの併用)やハイブリッドクラウド(オンプレミスとクラウドの併用)の形態が主流となり、さらに複雑化するクラウド環境を適切に設計・提案できる営業人材の価値は一層高まるでしょう。

    3. インフラ系クラウドの機能と主要サービス

    インフラ系クラウドは、主にコンピューティングリソース(仮想サーバー)、ストレージ、ネットワーク機能を提供するサービスです。これらは「IaaS」と呼ばれ、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platformなどが代表的なプロバイダーとなっています。

    IaaSの上位層には、アプリケーション開発環境を提供する「PaaS」があり、さらにその上にはすぐに利用できるソフトウェアを提供する「SaaS」が位置しています。インフラ系クラウド営業は、主にIaaSとPaaSの提案を担当することが多いですが、顧客のニーズに応じてSaaSも含めた総合的なソリューションを提案するケースも増えています。

    IDC Japanの調査によれば、日本のクラウド市場におけるサービスごとのシェアは、Amazon Web Services(AWS)が31.9%で最大手となり、Microsoft Azureが21.6%、Google Cloud Platform(GCP)が12.0%と続いています。

    これらの「クラウドビッグ3」が市場の65%超を占めており、日本国内でもグローバル市場と同様に主要なクラウドプロバイダーとして圧倒的な存在感を示しています

    富士通クラウドやNTTコミュニケーションズなどの国内ベンダーも一定のシェアを保持しており、日本市場特有の規制や法的要件に適応したサービス提供が求められています。なお、クラウド市場は急速に変化しており、各プロバイダーの市場シェアは今後も変動する可能性があります。

    インフラ系クラウド営業のやりがい

    インフラ系クラウド営業は単なる製品販売ではなく、顧客のDX推進パートナーとしての役割を担います。多くの営業担当者がこの点にやりがいを感じています。

    1. インフラ系クラウド営業の本質

    インフラ系クラウド営業の本質は、「顧客のビジネス課題を理解し、最適なクラウドソリューションを提案すること」にあります。従来型の営業と大きく異なるのは、単に製品機能やスペックを説明するのではなく、顧客のビジネスモデルや業務プロセスを深く理解した上で、それを変革するためのパートナーとなる点です。

    例えば、小売業の顧客であれば、店舗運営やオムニチャネル戦略、顧客データ分析などの課題に対して、どのようにクラウドが貢献できるかを提案します。製造業であれば、生産管理や品質管理、サプライチェーン最適化などの観点からソリューションを構築します。この過程で、顧客のビジネスに対する理解を深め、業界知識も蓄積されていきます。

    営業としての醍醐味は、顧客と共にデジタル変革の青写真を描き、その実現に向けてプロジェクトを推進していく点にあります。自分の提案がきっかけで顧客のビジネスが大きく変わる瞬間を目の当たりにできることは、大きな充実感をもたらします。

    2. 顧客企業のパートナー

    インフラ系クラウド営業は「提案して終わり」ではありません。導入後も顧客との関係は続き、運用フェーズでの課題解決や新たなソリューション提案など、長期的なパートナーシップを構築していくことになります。

    特にクラウドの世界では、技術やサービスの進化が速く、顧客が最新の機能やベストプラクティスを活用できるよう、継続的に情報提供やアドバイスを行う役割が求められます。「顧客のデジタル変革を共に歩む」というスタンスで関係を深めていくことで、単なるベンダーではなく、信頼されるアドバイザーとしての地位を確立することができます。

    このような関係性の中で、顧客の成長とともに自分自身も成長できる点が、インフラ系クラウド営業の大きな魅力です。顧客との対話を通じて業界知識や技術的理解を深め、その知見を他の顧客にも提供していくという好循環が生まれます。

    3. ストック型ビジネスの特徴

    インフラ系クラウドビジネスの大きな特徴は、サブスクリプション(定額利用料)モデルに基づく「ストック型」の収益構造にあります。従来型のパッケージソフトウェア販売では、一度の大きな契約が収益の中心でしたが、クラウドでは顧客が継続的に利用することで収益が積み上がっていきます。

    このビジネスモデルは営業担当者にとっても大きなメリットがあります。まず、一度契約を獲得すれば、その顧客からの継続的な収益が発生するため、安定した営業実績につながります。また、既存顧客のクラウド利用が拡大すれば(アップセル)、自身の実績も自動的に向上するという好循環が生まれます。

    さらに、顧客との長期的な関係構築が前提となるため、短期的な販売圧力に悩まされることが少なく、顧客にとって真に価値のある提案に集中できる環境があります。成功報酬型のインセンティブ制度を採用している企業も多く、実力次第で高い収入を得るチャンスもあります。

    インフラ系クラウド営業に求められるスキル

    インフラ系クラウド営業に求められるスキルインフラ系クラウド営業として成功するためには、技術的な知識とビジネス感覚の両方が求められます。特に他業種からの転職を考える場合は、これらのスキルをどう習得するかが重要です。

    1. クラウド基盤の基礎知識

    インフラ系クラウド営業に必要な技術知識は、決して専門エンジニアレベルである必要はありません。しかし、顧客との対話や社内エンジニアとの連携をスムーズに行うためには、一定の技術理解が不可欠です。

    最低限押さえておくべき知識としては、「クラウドコンピューティングの基本概念」「主要なサービス(コンピュート、ストレージ、ネットワーク等)の機能と特徴」「セキュリティの基本原則」などが挙げられます。また、各クラウドプロバイダーが提供する基本的な認定資格(AWS認定クラウドプラクティショナー、Microsoft認定Azure基礎など)を取得することで、体系的な知識を習得できます。

    技術的な知識は、実際の業務を通じて徐々に深めていくことが可能です。入社当初は「わからないことは素直に聞く」という姿勢で、社内のエンジニアや先輩営業から学ぶ姿勢が重要です。また、オンライン学習プラットフォームやクラウドベンダーが提供する無料トレーニングを活用することで、効率的にスキルアップすることができます。

    2. 提案力と課題発見力

    インフラ系クラウド営業の核心は、技術的な説明よりも「顧客の課題を発見し、最適なソリューションを提案する力」にあります。これは従来の営業経験が大いに活かせる部分です。

    良い提案をするためには、まず顧客のビジネスモデルや業務プロセスを理解することから始まります。「なぜそのシステムが必要なのか」「どのような課題を解決したいのか」「導入によってどんな効果を期待しているのか」といった本質的な問いを投げかけ、顧客と対話を深めていくことが重要です。

    また、「課題の言語化」も重要なスキルです。顧客は自社の課題を明確に認識していないケースも多く、漠然とした不満や問題意識を具体的な課題として整理し、それをクラウドソリューションと結びつける能力が求められます。この「顧客の潜在ニーズを掘り起こす力」は、経験を積むことで徐々に磨かれていくものです。

    3. SaaS特有の商談プロセス理解

    インフラ系クラウド営業の商談プロセスは、従来型のパッケージソフトウェア販売と大きく異なります。この違いを理解し、適切なアプローチができるかどうかが成功の鍵となります。

    まず、意思決定者が多様化しています。従来はIT部門が主な窓口でしたが、現在は事業部門のリーダーやデジタル戦略責任者など、複数の関係者が意思決定に関わるケースが増えています。そのため、各関係者の関心事を理解し、それぞれに合わせた提案アプローチが必要です。

    また、サブスクリプションモデルでは、初期契約よりも長期的な利用拡大(アップセル・クロスセル)が重視されます。このため、導入後のサポート体制やROI(投資対効果)の見える化、段階的な導入計画の提示など、長期的な視点での提案が求められます。

    さらに、「PoC(概念実証)」や「パイロット導入」といった小規模なトライアルから始め、効果検証後に本格導入するアプローチが一般的です。このような段階的な導入プロセスをスムーズに進めるための知識とスキルも必要となります。

    他業種からの転職成功のポイント

    未経験からインフラ系クラウド営業への転職を成功させるためには、自身の強みを活かしつつ、新しい分野への適応力をアピールすることが重要です。

    1. 未経験でも評価されるアピール方法

    未経験でも評価されるアピール方法面接前にクラウドの基礎知識を学び、簡単な資格(AWS認定クラウドプラクティショナーなど)を取得するなど、自己投資の姿勢を示せると好印象を与えます。業界セミナーやイベントに参加し、業界トレンドへの関心を持っていることもアピールポイントになります。

    次に、「過去の営業経験の応用可能性」を具体的に示すことです。例えば、「複雑な商材を分かりやすく説明した経験」「長期的な顧客関係を構築してきた実績」「新規開拓で成果を上げた方法論」など、クラウド営業でも活かせるスキルを具体的なエピソードとともに伝えましょう。

    さらに、「顧客業界への知見」も強みになります。金融、製造、小売など特定業界での営業経験がある場合、その業界知識はクラウド営業でも大きな武器になります。「前職で得た○○業界の知識を活かし、業界特有の課題に対するクラウドソリューションを提案したい」といった意欲を示すことで、未経験というハンディをカバーできます。

    2. 自己PR戦略

    自己PR戦略転職活動では、自分自身を「商品」として効果的にPRする戦略が必要です。インフラ系クラウド営業への転職を成功させるために、以下のポイントを意識した自己PRを心がけましょう。

    「なぜクラウド業界なのか」という明確な動機と将来展望を示すことが重要です。単に「成長業界だから」という表面的な理由ではなく、「デジタル変革を通じて顧客のビジネス課題解決に貢献したい」「技術の進化とビジネスの接点に立ちたい」など、より本質的な動機を伝えましょう。また、5年後、10年後のキャリアイメージも具体的に描けていると、長期的な視点を持っていることをアピールできます。

    次に、「成果へのこだわり」を示すことも重要です。過去の営業活動で達成した定量的な成果(売上目標達成率、新規開拓件数など)を具体的に示し、その背景にある工夫や努力も併せて伝えましょう。クラウド業界は成果主義の傾向が強いため、「結果を出せる人材」であることをアピールすることが効果的です。

    また、「チームワークとコミュニケーション能力」も重視されます。クラウド営業では、社内エンジニアや様々な専門家とチームを組んで提案を行うことが多いため、「多様なバックグラウンドを持つメンバーと協働して成果を上げた経験」などをアピールすると良いでしょう。

    次のステップへの一歩を踏み出す時

    インフラ系クラウド営業は、日本企業のDX推進が本格化する今、大きな可能性を秘めたキャリアパスです。技術的な知識とビジネス課題解決能力の両方が求められる挑戦的な職種ですが、その分だけ市場価値も高く、安定した需要が見込めます。

    従来の営業スキルを活かしながら、新たな知識を獲得することで、より高い年収と充実したキャリアを構築できるでしょう。転職市場が活発な今こそ、自分の市場価値を高め、次のステップに進む絶好のタイミングです。変化を恐れず、前向きに挑戦することで、あなたのキャリアに新たな展望が開けるはずです。

     

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