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    【SaaS業界への転職】基幹システム系営業の現状と将来性 クラウド移行の波に乗る

    SaaS

    企業のDX推進が加速する中、基幹システムのクラウド化・SaaS化の波が押し寄せています。オンプレミス環境で構築・運用され初期投資が大きく導入期間も長い従来型の基幹システムと、サブスクリプション型で素早く導入できるSaaS型では、システムの特性だけでなく営業手法や求められるスキルセットも大きく異なるのです。

    こうした市場の変化は、基幹システム営業に携わる人材にとって、大きなキャリアの岐路となっています。今回は、従来型の基幹システム営業からSaaS型基幹システム営業への転職について、両者の決定的な違いを整理しながら、転職の現状と将来性、そして成功のポイントを解説します。

    基幹システムとSaaS業界の概要

    まずは基幹システムとSaaSの基本的な概念を整理し、両者の決定的な違いを明確にしましょう。

    1. 基幹システムの定義と重要性

    基幹システムとは、企業の中核となる業務を支える情報システムのことです。具体的には、販売管理、在庫管理、会計、人事給与などの企業運営に欠かせない基本的な機能を担っています。

    基幹システムは企業活動の血液と言えるもので、データの一元管理や業務の効率化、経営判断の迅速化を支えています。多くの企業では業務の根幹を担うため、システムの停止は事業継続に直接影響します。

    例えば、製造業では生産管理システムが停止すると工場のラインが止まってしまいますし、小売業では販売管理システムがダウンすると店舗での商品販売ができなくなってしまいます。

    2. 従来型とSaaS型の決定的な違い

    従来型の基幹システムは、自社内にサーバーを設置し、各企業の業務に合わせて大規模カスタマイズを行う「オンプレミス型」が主流でした。導入には数千万〜数億円の初期投資と、半年から数年の構築期間が必要で、一度導入すると5〜10年は使い続けるのが一般的です。

    対照的に、SaaS(Software as a Service)型は、インターネット経由でサービスとして利用する形態で、月額課金制のサブスクリプションモデルが特徴です。初期投資を大幅に抑えられ、導入期間も数週間から数ヶ月と短縮できるというメリットがあります。ただし、カスタマイズの自由度は限定的で、標準機能での業務遂行が求められます。

    この違いは、営業手法にも大きな影響を与えています。従来型が大規模な一括契約を目指すのに対し、SaaS型は継続利用と段階的な機能拡張(アップセル)が収益の柱となるのです。

    3. 基幹システムのSaaS化トレンドと市場動向

    ここ数年、基幹システムのSaaS化が急速に進んでいます。複数の市場調査によると、国内SaaS市場は年率10%以上の成長を続けており、今後も拡大が見込まれています。特に、コロナ禍でのリモートワーク普及やDX推進の加速により、クラウドシフトは一層加速しています。

    基幹システム領域においても、SAP、Oracle、Microsoftなどの大手ベンダーが「クラウドファースト」戦略を掲げ、従来型からSaaS型への移行を強力に推進しています。中小企業だけでなく大企業においてもSaaS型基幹システムの採用が広がり、業界全体が「所有から利用へ」のパラダイムシフトを経験しています。

    この市場の変化は、基幹システム営業にとって従来のビジネスモデルでは対応できない新たな課題と、同時に大きなキャリア機会をもたらしているのです。

    SaaS基幹システム営業に求められるスキルセット

    従来型とSaaS型の基幹システム営業では、求められるスキルセットが大きく異なります。ここでは、SaaS型基幹システム営業に特有のスキルを解説します。

    1. 業務知識とテクノロジー理解の違い

    従来型の基幹システム営業では、特定業界の業務知識の深さが重視されてきました。一方、SaaS型営業では、幅広い業界知識に加え、クラウド技術やAPI連携、モバイル対応など、最新テクノロジーへの理解が不可欠です。

    特に、従来型では営業とSE(システムエンジニア)の役割が明確に分かれていましたが、SaaS営業では技術的な基礎知識(サブスクリプション管理、クラウドセキュリティ、データ連携など)を持っていることが求められます。

    例えば、「オンプレミスとクラウドのTCO(総所有コスト)比較」や「APIを活用した他システムとの連携方法」といった技術的な会話ができなければ、顧客との対話で信頼を得ることは難しくなっています。

    2. ROIを示すコンサルティング型提案力

    従来型営業では、大規模で長期的なシステム投資の提案が中心でしたが、SaaS型営業では、短期間で効果を示せる「スモールスタート」型の提案が重要です。

    顧客は月額課金制で利用するため、短期間でのROI(投資対効果)を重視します。そのため、「この機能があります」という製品説明型の営業ではなく、「御社のこの課題は、3ヶ月以内にこのような方法で解決でき、半年で投資回収できます」というコンサルティング型の提案が求められます。

    従来型では5年、10年単位の長期的な視点で提案していたのに対し、SaaS型では四半期、半期といった短期間での成果にコミットする姿勢が必要なのです。

    3. 顧客成功を主導する継続的関係構築力

    従来型営業ではシステム導入時の大型契約がゴールでしたが、サブスクリプションモデルが基本のSaaS営業では、継続利用と追加契約(アップセル・クロスセル)が収益の鍵となります。

    そのため、契約後の「カスタマーサクセス」活動が極めて重要です。従来のように「売って終わり」ではなく、顧客が実際にシステムを活用して成果を出せるよう支援し、継続的に価値を提供し続ける能力が求められます。

    契約更新率(リテンション率)と追加契約率が営業評価の重要指標となるため、定期的な利用状況の確認、新機能の紹介、成功事例の共有など、長期的な関係構築のための活動が必須です。従来型とは評価指標自体が根本的に異なる点を理解しておく必要があります。

    SaaS時代における基幹システム営業の役割

    従来型とSaaS型では、基幹システム営業の役割と位置づけが根本的に異なります。ここでは、SaaS時代特有の営業の役割について解説します。

    1. 導入支援からビジネス成果創出へ

    従来型の基幹システム営業は、主にシステム導入の支援を担ってきました。大規模なカスタマイズ前提のシステムを受注し、SE部門へ引き継ぐことが主な役割でした。

    一方、SaaS時代の営業は「システム導入の支援」から「ビジネス成果の創出支援」へと役割が大きく変化しています。SaaS型基幹システムは標準機能での利用が前提であるため、顧客の業務プロセス変革や最適化を提案することが重要です。

    具体的には、「御社の在庫回転率を20%向上するためにはこの機能をこう使うべき」「受注処理の工数を半減するにはこのワークフローを変更すべき」など、ビジネスKPIに直結する提案が求められます。つまり、導入後の成果にまで責任を持つ役割へと進化しているのです。

    2. マルチステークホルダー対応の調整役

    従来型営業では情報システム部門を中心に提案活動を行うことが一般的でしたが、SaaS時代では、情報システム部門に加え、業務部門、経営層、さらには外部パートナーまで含めた「マルチステークホルダー」への対応が必須となっています。

    なぜなら、SaaS型基幹システムの導入判断は情報システム部門だけでなく、実際に使用する業務部門や、投資判断を行う経営層の関与が大きくなっているからです。営業担当者は、これら異なる立場や関心事を持つステークホルダーの調整役を担い、全体最適の視点で提案を進める必要があります。

    従来型では技術的な評価が中心でしたが、SaaS型では業務効率化やビジネスインパクトなど、多角的な評価軸での説得が求められます。

    3. データ活用と継続的改善の伴走者

    従来型基幹システムでは「構築して終わり」という側面がありましたが、SaaS型では導入後の「データ活用」と「継続的改善」が極めて重要です。

    SaaS型基幹システムは常にアップデートされ、新機能が追加されていくため、営業担当者には顧客のデータ活用を支援し、継続的な改善を促す「伴走者」としての役割が求められます。例えば、蓄積されたデータを分析して業務改善点を発見したり、新機能を活用した業務効率化を提案したりする活動が重要です。

    従来型では運用保守チームに任せていた領域まで営業担当者が関与することが、SaaS時代の特徴といえます。月額課金制の下では、顧客が継続的に価値を感じることが最重要であり、そのための継続的な支援が営業の新たな役割なのです。

    SaaS基幹システム営業への転職を成功させるための準備

    従来型からSaaS型基幹システム営業への転身、あるいは他業種からSaaS基幹システム営業への参入を考える際は、両者の違いを理解した上での効果的な準備が成功の鍵となります。

    1. 対比を意識した自己PRの組み立て方

    SaaS型基幹システム営業への転職では、従来型との違いを理解した上で自己PRを組み立てることが重要です。例えば、従来型基幹システム営業の経験がある場合、「大型一括契約を複数獲得した実績」よりも、「顧客との長期的な関係構築により追加契約を獲得した経験」や「導入後も継続的に関わり成果創出を支援した事例」をアピールする方が効果的です。

    未経験者の場合も、「短期間で成果を出せる行動力」「新しいテクノロジーへの適応力」「顧客の業務改善に貢献した経験」など、SaaS営業に通じる要素を強調すべきです。履歴書や職務経歴書では、数字で示せる実績(契約継続率、顧客満足度など)に加え、どのように顧客のビジネス成果に貢献したかを具体的に記載することで説得力が増します。

    2. SaaS型基幹システム企業のビジネスモデル研究

    効果的な企業リサーチでは、SaaS型基幹システム企業の特有のビジネスモデルを理解することが重要です。特に、売上構造(新規獲得・継続収益・アップセルの比率)、営業プロセス(集客からクロージング、契約後のカスタマーサクセスまで)、評価指標(ARR:年間経常収益、CAC:顧客獲得コスト、LTV:顧客生涯価値など)は、従来型とは大きく異なります。

    主要SaaS企業(Salesforce、SAP、Microsoft Dynamics、NetSuiteなど)のビジネスモデルや成長戦略を研究し、面接時に「御社のビジネスモデルにおいて、私はこのように貢献できます」と具体的に説明できるよう準備しましょう。

    業界専門のセミナーやウェビナーへの参加も効果的です。特に、SaaSビジネスモデル特有の「PLG(Product Led Growth)」や「カスタマーサクセス」などの概念についても理解を深めておくと、面接で差別化できるでしょう。

    SaaS基幹システム営業としての未来を切り拓くために

    従来型からSaaS型基幹システム営業への転身は、想像以上に大きなキャリアチェンジです。ビジネスモデルが根本的に異なるため、単なるスキルの追加ではなく、思考様式や行動パターンの変革が求められます。

    特に、収益構造の違い(一括契約vs継続課金)、成功指標の違い(受注額vs継続率)、顧客との関わり方の違い(導入支援vs成果創出)を十分に理解し、適応する必要があります。この変化に対応できない場合、転職後に大きなギャップに直面することも少なくありません。

    とはいえ、基本的な業務知識や顧客理解力という基盤があれば、新たな営業手法は習得可能です。早期に変化を受け入れ、自己投資を惜しまず、SaaSビジネスの本質を学び続ける姿勢を持つことが成功への鍵となるでしょう。クラウド時代の波は今後も続き、その波に乗れる人材の需要は高まる一方です。

     

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