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    「基幹システム刷新プロジェクト」に転職するには?今求められるスキルと転職成功のポイント

    「基幹システム刷新プロジェクト」に転職するには?今求められるスキルと転職成功のポイント

    企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、「2025年の崖」と呼ばれる重要な転換点を迎えています。これは経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」で指摘されていた課題で、レガシーシステムの問題を解決できなければ、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるというものです。

    この状況下で、基幹システム刷新プロジェクトに携わる専門人材への需要は高まっています。今回は、基幹システム刷新プロジェクトへの転職を考えている方に向けて、求められるスキルや転職成功のポイントを解説します。

    「基幹システム刷新プロジェクト」の現状とキャリア機会

    「基幹システム刷新プロジェクト」とは、企業の中核を担う業務システムを現代のニーズに合わせて再構築するプロジェクトです。これは単なるシステム入れ替えにとどまらず、「モダナイゼーション」と呼ばれる、過去の資産を活かしながら生産性や安全性を高め、企業競争力の低下を防ぐ取り組みです。

    多くの日本企業は、長年使い続けてきた基幹システムの老朽化問題に直面しています。このままレガシーシステムの刷新を先送りすれば、システム障害リスクの増大、保守費用の高騰、人材不足などの深刻な課題に直面することになります。

    特に、レガシーシステムを担当できる人材が退職や高齢化によって減少し、IT人材の不足は約43万人にまで拡大すると予測されています。

    一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2024」によると、レガシーシステム刷新への理解は近年確実に浸透してきており、多くの企業が対策を進めています。しかし、依然として課題は山積しており、以下のような状況が見られます。

    1. 深刻なIT人材不足

    基幹システムを担うIT人材の不足は深刻で、特にCOBOLなどレガシー技術に精通した人材の枯渇が進んでいます。同時に、モダン技術を用いたシステム刷新を担える人材も不足しており、この二重の人材不足が市場において大きなキャリアチャンスを生み出しています。

    2. 投資判断の難しさ

    企業の経営層にとって、レガシーシステム刷新は「システム自体は問題なく稼働している」ように見えるため、投資効果に対する理解を得にくいという課題があります。システムが正常に動作している状態で刷新の必要性を説明できる人材は、プロジェクト推進において重要な役割を果たします。

    2. マイグレーションの技術的難しさ

    レガシーシステムからの脱却は、「現行資産を流用できる」「同一仕様の製造は容易」という認識と実態の間に大きな乖離があります。実際には、長年の改修によってシステムの全容把握が困難になっており、要件・仕様がブラックボックス化しているケースが多いのです。

    こうした状況が、基幹システム刷新プロジェクトに携わる人材へのニーズを高めています。では、このキャリア領域で成功するために必要なスキルとは何でしょうか。

    「基幹システム刷新プロジェクト」で求められる具体的スキル

    基幹システム刷新プロジェクトにおいて高い価値を持つスキルは、大きく分けて技術スキル、ビジネススキル、コミュニケーションスキルの3つに分類できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

    1. 技術スキル:レガシーとモダンの両方の知識

    基幹システム刷新では、古いシステムから新しいシステムへの移行が必要となるため、両方の技術に関する知識が求められます。特に重要なスキルとしては、以下のようなものが考えられます。

    • レガシー言語(COBOL、PL/Iなど)の理解
    • モダン言語(Java、C#、Pythonなど)の実装経験
    • データベース移行の知識(階層型DBからRDBMSへの移行など)
    • クラウド環境の構築・運用経験
    • マイクロサービスアーキテクチャの理解
    • DevOpsの実践経験

    これらの中で、特に価値が高いのは、レガシーシステムを理解した上で、モダン技術への移行方法を設計できる「橋渡し」の人材です。そのような人材は非常に希少で、市場価値も高くなっています。

    2. ビジネススキル:業務知識と移行戦略の立案能力

    基幹システムは企業のビジネスプロセスそのものを体現しているため、技術だけでなく業務への深い理解も必要です。以下のスキルがあると強みになります。

    • 特定業界の業務知識(金融、製造、物流など)
    • プロジェクトマネジメント経験
    • 費用対効果の分析・説明能力
    • リスク管理能力
    • システム移行戦略の立案経験

    特に、経営層に対してレガシーシステム刷新の必要性を説明し、投資判断を促せる能力は、プロジェクト成功の鍵となります。これは「システムがまだ動いているのに、なぜ刷新が必要か」という疑問に対して、将来リスクとビジネス価値の観点から説明できる能力です。

    3. コミュニケーションスキル:多様なステークホルダーとの協働

    基幹システム刷新プロジェクトは、多様なステークホルダーが関わる大規模プロジェクトになることが多く、以下のようなコミュニケーションスキルが重要です。

    • ビジネス部門とIT部門の「翻訳」能力
    • 要件のヒアリングとドキュメント化能力
    • チーム間の調整能力
    • 現場の抵抗感を和らげる説得力
    • ナレッジ移管の促進能力

    特に、長年使われてきたシステムには「暗黙知」が多く存在します。これを表面化させ、新システムに適切に反映させるコミュニケーション能力は非常に重要です。

    転職市場で求められる経験

    転職市場においては、上記のスキルに加えて、具体的な実績や経験が問われます。以下に、市場価値を高める実践的経験を挙げます。

    1. プロジェクト規模とフェーズの経験

    大規模な基幹システム刷新プロジェクトの経験は大きな強みになります。中でも、以下の経験は特に評価されます。

    • 要件定義から運用保守までの全フェーズ経験
    • 数十人規模以上のプロジェクト参画経験
    • プロジェクト統括やPMOの経験
    • 複数回のリリース経験

    実際のプロジェクトでは予期せぬ問題が多発するため、様々な局面での課題解決経験があることが重要視されます。

    2. モダナイゼーション手法の経験

    モダナイゼーションには様々な手法があり、それぞれの手法の実践経験は大きな強みとなります。主な手法としては、リプレース(置き換え)、リホスト(基盤移行)などがあります。これらの手法を使い分け、最適な刷新アプローチを提案できる経験は高く評価されます。

    3. 業界特化型の経験

    基幹システムは業界ごとに特性が異なるため、特定業界での経験は大きな武器になります。特に以下の業界は基幹システム刷新のニーズが高い傾向にあります。

    • 金融業界(銀行、保険、証券など)
    • 製造業界(生産管理、SCMなど)
    • 流通・小売業界(物流系システムなど)
    • 公共・インフラ系(大規模基幹システムなど)

    これらの業界での業務知識と技術知識を兼ね備えていると、市場価値は一層高まります。

    転職成功に向けたアプローチ

    上記のスキルや経験を持っている、または習得を目指している方は、以下のアプローチで転職活動を進めると成功率が高まります。

    1. キャリアの棚卸しと自己分析

    まずは自身のキャリアを棚卸し、基幹システム刷新プロジェクトにおいてどのような価値を提供できるかを明確にしましょう。

    • レガシーシステムの経験とモダン技術の経験の両方を整理する
    • プロジェクトでの具体的な貢献、数値実績を洗い出す
    • 自身の強みとなる特定業界や技術領域を明確にする

    特に、「2025年の崖」問題解決における自身の価値を言語化できると、面接で説得力が増します。

    2. 専門性の証明と知識のアップデート

    基幹システム刷新に関わる専門性を証明するためには、適切な資格取得と継続的な知識更新が重要です。以下に、分野別に有効な取り組みをご紹介します。

    クラウド関連の認定資格

    基幹システムのクラウド移行に関連する主要な認定資格があります。

    • AWS認定資格
      • AWS認定ソリューションアーキテクト–アソシエイト(SAA):クラウド設計の基礎資格として最も評価が高い
      • AWS認定デベロッパー–アソシエイト:クラウドアプリケーション開発向け
      • AWS認定データベーススペシャリスト:データベース移行に特化
    • Microsoft Azure認定資格
      • AZ-900(Azure Fundamentals):クラウド基礎知識の証明として入門に最適
      • AZ-104(Azure Administrator):運用管理スキルの証明
      • AZ-305(Azure Solutions Architect):設計スキルの証明
    • Google Cloud認定資格
      • Professional Cloud Architect:マルチクラウド環境で評価が高まっている

    なお、クラウド資格は実務経験と組み合わせることで真価を発揮します。基幹システム刷新プロジェクトではAWS SAAかAzure Solutionsアーキテクトのいずれかを持っていると評価されやすい傾向があります。

    プロジェクト管理・システム設計関連資格

    基幹システム刷新では技術だけでなく、プロジェクト管理能力も重視されます。

    • IPA情報処理技術者試験
      • プロジェクトマネージャ試験:国内で広く認知された管理能力の証明
      • システムアーキテクト試験:設計能力の証明として有効
      • データベーススペシャリスト:データ移行プロジェクトで価値が高い
    • 国際的なプロジェクト管理資格
      • PMP(Project Management Professional):大規模プロジェクト管理での国際標準
      • PRINCE2:構造化されたプロジェクト管理手法
      • アジャイル関連認定(PSM、SAFeなど):モダン開発手法のスキル証明

    レガシー技術・移行関連の専門性

    レガシーシステムからの移行には、従来技術の理解も必要です。

    • メインフレーム関連
      • COBOL関連資格:日本アイ・ビー・エム認定プロフェッショナルなど
      • DB2、IMS、CICS関連の技術認定
    • ERP移行関連
      • SAP認定コンサルタント:特にS/4HANAへの移行案件で需要大
      • Oracle EBSスペシャリスト認定

    継続的な学習と知識更新

    資格取得と並行して、以下の取り組みも効果的です。

    • モダンアーキテクチャの研修や勉強会への継続的参加
    • DevOpsや自動化ツールのハンズオン経験の獲得
    • 業界セミナーやカンファレンスでの最新動向のキャッチアップ
    • コミュニティ活動やオープンソースプロジェクトへの参加

    これらの資格や経験を組み合わせることで、レガシーからモダンへの橋渡し役としての市場価値を大きく高められます。転職市場において、基幹システム刷新の経験と関連資格を併せ持つ人材は特に希少で、高い評価を得やすい傾向にあります。

    3. 面接対策と自己アピール

    基幹システム刷新プロジェクトへの転職においては、技術面だけでなく、問題解決能力や戦略的思考を示すことが重要です。面接では以下のポイントを意識しましょう。

    • 過去のプロジェクトでの具体的な課題と解決策を事例として準備する
    • システム刷新における自身の役割と貢献を具体的に説明できるようにする
    • 業務理解とITの両面からの価値提案ができることをアピールする
    • 「2025年の崖」問題に対する自身の見解や解決アプローチを用意する

    技術的な質問だけでなく、ビジネス視点での質問も予想して準備しておくと良いでしょう。

    長期的なキャリア戦略

    最後に、基幹システム刷新市場の今後と、長期的なキャリア戦略について考えてみましょう。

    1. 市場ニーズの変化予測

    レガシーシステム刷新の需要はここ数年でピークを迎えると予想されています。その後は、刷新されたシステムの運用・改善フェーズへと移行していくでしょう。このため、以下のスキルへの投資も検討すべきです。

    • クラウドネイティブ開発のスキル
    • データ活用・分析のスキル
    • APIエコノミー関連のスキル
    • セキュリティ特化型のスキル

    現在の基幹システム刷新プロジェクトで得た経験を、これらの領域へと発展させていくキャリアパスが考えられます。

    2. 自己成長のための継続的学習

    IT業界は技術革新が早いため、継続的な学習が不可欠です。基幹システム刷新の経験を基盤としつつ、以下の分野への学習投資も検討しましょう。

    • コンテナ技術やKubernetesなどのオーケストレーションツール
    • サーバーレスアーキテクチャやマイクロサービス
    • 自動化・CI/CDパイプライン構築スキル
    • クラウドセキュリティやガバナンス

    これらのスキルは、基幹システム刷新後のモダン環境でも継続的に価値を持ちます。

    3. 市場価値を高める実践的アプローチ

    長期的な市場価値を高めるためには、基幹システム刷新の経験を土台にしつつ、以下のような実践的アプローチが有効です。

    • 特定業界への深い理解と技術的専門性の両立
    • 複数のクラウドプラットフォームでの実践経験
    • 大規模移行プロジェクトのリード経験の獲得
    • 社内外での知見共有や執筆活動

    特に、レガシーシステムの知識とモダン技術の両方を理解した上で、ビジネス価値を実現できる人材は、今後も高い市場価値を維持できるでしょう。

    「2025年の崖」を越える専門人材となるために

    基幹システム刷新プロジェクトは、日本企業がDXを進める上での避けて通れない道となっています。しかし、レガシーシステムからの脱却は想像以上に難しい取り組みであり、多くの企業が「認識と実態の乖離」に直面しています。

    このような状況下で、レガシーシステムの知識とモダン技術の両方を理解し、ビジネス視点で価値を提供できる人材の需要は今後も高まっていくでしょう。特に、システムの刷新だけでなく、組織の変革や業務プロセスの最適化までを視野に入れた「変革推進者」としての役割を担える人材は、その希少性からも高い市場価値を持ちます。

    転職を考えている方は、この記事で紹介したスキルや経験を意識的に習得・アピールし、自身の市場価値を高めていくことをお勧めします。2025年の崖を乗り越えた先の未来において、企業のDX推進を支える重要な人材となれるよう、戦略的にキャリアを構築していきましょう。

     

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