企業がITエンジニアに求めるコミュニケーションスキル
技術職であるITエンジニアは、しばしば“コミュニケーション能力は重視されていない”という誤解を受けがちです。しかし多くのプロジェクトではチームで仕事を進めます。また、プロジェクトメンバーが自分一人であっても、顧客とのやり取りが発生することもあります。
そしてもちろん、ITエンジニアを採用したい企業の採用担当者も「必要最低限のコミュニケーション能力は持っていてほしい」と考えています。では、ITエンジニアに求められるコミュニケーションスキルとは、具体的にはどのようなものでしょうか。
コミュニケーションの3つの領域
具体的なスキルを考える前に、「コミュニケーションとは何か」という点を以下の3つの領域に分けて考えてみましょう。
- 理解力
- 表現力
- 協調力
1. 理解力 他者が求めているものを理解できるかどうか
上司の指示を正しく理解できるか、システム開発に詳しくない顧客の要望を察することができるかは、理解力の有無に大きく左右されます。
同じことを言っていても、相手の立場や知識レベルによって何が言いたいのか、微妙なニュアンスが変わってくることがあるため、まずは相手がどのような知識を持っているのか、自分が認識したことが正しいかどうかを確認することが重要です。
2. 表現力 こちらの言いたいことを正しく伝えられるか
相手の知識レベルを理解した上で、正しく伝わる言葉、平易な言葉を選べるかどうかが問われます。例えば自分が抱えている開発上の問題点や、システムのセールスポイントを的確かつ分かりやすい言い方で伝えるには、その人の表現力が関わってきます。
またITエンジニアは、技術職以外の人々に対しても「これくらい誰でも知っているだろう」と思い込んでしまうことがしばしばあります。しかし、相手がITに関してどれくらいの知見を持っているかは、実際に確認してみるまではわかりません。思い込みでこちらの言いたいことを伝えるのは、あとあとコミュニケーションのズレを生みます。
3. 協調力 他者の立場を思いやることができるか
大規模な開発プロジェクトでは他のメンバーと意見が対立することもあるでしょう。また、仕様の急な変更についてクライアントから必死にお願いされることもあります。こうした際に、ただ自分の意見を通すだけでなく、ときには自分の意見や考えを引っ込めたり、少しばかり余計な仕事を引き受けたりする姿勢は、ビジネスパーソンとして重要な能力です。
仲間と意志の疎通はできるか、自分だけではなく全体の進捗状況を把握しているか、手遅れになる前に問題提起できるかなど、課題を一緒に解決していく意識が大切です。
ITエンジニアが身に付けておきたい5つのコミュニケーションスキル
以上のことを踏まえると、ITエンジニアには、下記の5つのコミュニケーションスキルが求められると言っていいでしょう。
- 上司や同僚の支持や意見を正確にくみ取ることができる。
- クライアントのあいまいな表現から、本当の要望を察することができる。
- 相手の立場や理解度に合わせたわかりやすい表現ができる。
- 正しく具体的で、かつ事実に基づいた判断・報告ができる。
- 状況に合わせて自分の意見を取り下げたり、譲歩したりすることができる。
いかがでしょうか。1つも当てはまらない場合は、「コミュニケーション能力に乏しい」と判断されて転職時(あるいは転職後)に苦労する可能性があります。
コミュニケーション能力を向上させるには、何よりも日々の意識が大切です。まずは同僚や顧客とちょっとした雑談をしてみてはどうでしょうか。仕事の話だけでなく、最近のIT業界の動向、話題の新製品の評判などきっかけはいくらでもあるはずです。
ITエンジニアも社員である以上、組織内で人との交わりは避けられません。企業が求めるコミュニケーション能力を知った上で、適切な意志疎通ができるようにしておく必要があるでしょう。(ライター:ナレッジ・リンクス/原 進)