ITエンジニアがネット業界に転職して感じる仕事のギャップ
会社の将来性や職務内容を考えたとき、ITエンジニアが転職候補の一つとしてネット業界を候補に挙げることは珍しくありません。人気のWebサービスを手掛けることや勤務の自由度などに期待しているという人も多いでしょう。
しかし期待し過ぎるあまり、IT業界とネット業界の違いやイメージとのギャップに幻滅してしまうこともあるようです。転職後に幻滅しないためにも、仕事における違いをよく知った上で転職に臨む必要があります。
1. 開発手法の違い
多くの場合、ITエンジニアは「フォーターフォール」型と呼ばれるスタイルで開発を進めていきます。各種の設計工程で仕様の決定とドキュメントの整備をしていく手法で、大規模で比較的長い期間(数ヶ月から数年)の開発で用いられるスタイルです。
これに対してネット業界の場合、多くは「アジャイルソフトウェア開発」のひとつである「エクストリーム・プログラミング」で開発されています。これはドキュメントよりもソースコードを、組織開発よりも個人を重んじた、人間中心の開発プロセスです。比較的少人数で、短期間の開発を反復しながら進めます。
エクストリーム・プログラミングには、仕様書などのドキュメントがほとんど存在しません。その分、開発スピードも早く、仕様変更も何度も起こります。アジャイル開発に取り組みながら理解を深め、その違いに慣れる必要があります。
2. 個人の裁量の違い
ITエンジニアの場合、開発手順や各種仕様について全員で細かくレビューし、決定をしていくことがほとんどです。これに対してネット業界では、「個人を重んじる」というアジャイル開発の思想が強いため、個人個人が決定を下すことが少なくありません。
例えばWebサービス開発の場合、UIや細かなデザインなどは、多くの場合、現場のWebエンジニアのセンスに任されます。裁量と職域(PM、SE、PG)がハッキリと分かれていないので、エンジニアという肩書きでもPMのような判断をすることがあると認識しておいてください。
この1、2を踏まえて、技術職が感じるIT業界とネット業界における開発の違いを表にまとめると、以下のようになります。
|
IT業界の開発 |
ネット業界の開発 |
---|---|---|
開発手法 |
ウォーターフォール型が多い |
アジャイル開発のエクストリーム・プログラミングが多い |
個人の職域・裁量 |
明確 |
あいまい |
意思決定の根拠 |
全員の合意が中心 |
個人のセンスが中心 |
意思決定のスピード |
比較的遅い |
比較的早い |
転職すること自体、日常がガラリと変わるような出来事です。業界が変わるのであれば、その変化はさらに大きなものとなるでしょう。「ITエンジニアの頃とは、何もかもが違う」といったことがほとんどで、その違いに驚くことは多いはずです。逆にその違いを明確にして転職に備えれば、ギャップを軽減してスムーズな転職を実現できるはずです。(ライター:ナレッジ・リンクス/原 進)