銀行の法人営業 ~融資を通じて企業の成長を見守る~
仕事の役割 ~金融のプロとして企業の資金サポートを行う~
銀行の法人営業では、企業や個人事業主のお客さまに対して融資の提案を行うことが主な仕事です。成長の見込める企業へ資金を貸し付け、その事業の成長や発展をお手伝いし、適切な利子を得ることがミッションと言えるでしょう。法人営業の具体的な仕事内容は次の2点です。
●融資…企業や個人事業主への事業資金の貸し付け。
●提案営業…企業ニーズに合わせた商品提案。潜在ニーズを明確にする商品提案を行います。法人営業は長期的に企業が成長していく方法を提案します。
金融のプロとして、「今、必要な設備投資」や「妥当な運転資金」など企業のお金に関わる問題をあらゆる角度から検証し、経営者と一緒に企業の発展をサポートしていきます。銀行の法人営業は金融の知識はもちろん、いかに経営者と信頼関係が築けるかが重要なポイントになります。
おおよその年収
平均年収は約580万円。専門知識が求められることと、企業を相手にした責任重大な業務を担うことになるので、年収も比較的高めです。
求められる能力 ~経営者に信頼される人間性と金融の知識~
まず金融機関としての、金融や企業財務に関する知識、M&Aや事業承継などの投資銀行業務、運用業務などの知識が幅広く求められます。常に知識を深めていくことが大切です。また融資した企業が倒産してしまっては大きな損失を被ってしまいますから(貸し倒れ)、数字に対するシビアなセンスが必要です。
その上で、企業の課題や問題、潜在ニーズを探るためにも、経営者とのコミュニケーション能力が必要になります。経営者とのコミュニケーションでは「事業や経営者に対する関心」が必要不可欠です。好奇心旺盛に人や企業に関心を持つことが大切で、相手の話を真剣に聞く姿勢が求められます。また、信頼できる「人間性」を持ち、親身になって相談に乗ってくれる相手にしか、経営者は本音を話しませんし、融資を受けようとも思わないでしょう。信頼できる相手との間には経営のパートナーとしての深い人間的なつながりが生まれていきます。常に、幅広い分野の勉強をし、人間性を高める努力を続けることが大切です。
向いている人柄 ~経営的視点を持ちながら冷静に仕事ができる人~
銀行の法人営業は人と話すことが好きで、メンタル面もタフな人が向いています。銀行員はたくさんの人と話をするので、喋りのプロと言えるくらいの人が向いています。また、銀行の営業パーソンとしてではなく、企業の経営者であるかのような感性と考え方、「経営者の視点」を持って行動できる人は経営者にもベストパートナーとして信頼されるでしょう。
とはいっても、お金を扱う仕事上、ただ人当たりが良いだけではいけません。時には融資をお断りしたり、業績の悪い顧客企業から融資を引き上げたりといった判断も下さなければいけません。そのため、情に流されない冷静さも必要です。
仕事のやりがい ~融資が企業の発展や拡大に結びつく実感~
一般企業の新人営業職は、雑用やアシスタント的な仕事から始まる職業が多いなか、銀行の法人営業は新人の頃から、経営者たちと数千万、数億円のビジネスの話ができます。また、提案した融資の話がまとまり、さらには企業の事業発展・拡大に結びついたときの実感こそが、この仕事の大きな醍醐味でしょう。営業としてではなく、経営者としての視点を持ちながら仕事ができる、大変やりがいのある仕事です。
仕事の辛いところ ~時には非情な判断を下さなければいけない~
単に融資を貸し付けるだけでなく、貸す企業の財務諸表や事業内容を隅々まで把握しなければいけません。そのため残業・激務は当たり前で数字が好きだから銀行員になるという、甘い考えでは長くは勤まらないようです。
また、顧客企業の財務状況が悪くなれば追加融資を断ったり、融資を引き上げたりといった判断も行います。そうした中では、企業側から「お金のことしか考えていない」「困ったときに助けてくれない」と非難されることもあるでしょう。銀行は「晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を返せと言う」としばしば言われますが、こうしたシビアな世界で生きていく覚悟も必要です。(ライター:二之形幸子)