不動産鑑定士 ~不動産の価値を見極めビジネスに生かす~
仕事の役割 ~不動産価値を評価し、適正利用を推進する~
不動産鑑定士の仕事は、読んで字のごとく、不動産の価値を鑑定することです。おもな業務は「鑑定評価業務」と「コンサルティング業務」に分けられます。前者の鑑定評価とは、土地や建物などの経済的な価値を判定し、その結果を金銭として見積もること。一戸建てからマンション、空き地などの価値を、立地条件や建築年数などから算出します。この評価には、公的な鑑定評価と民間の評価があります。
●公的な鑑定評価…地価公示、都道府県の地価調査、相続税評価など
●民間の鑑定評価…不動産売買・賃料などの取引に関する鑑定業務、資産評価など
もう1つのコンサルティング業務は、不動産の有効活用法についての専門的なアドバイスをおこなう業務です。土地活用の具体的な方法、マンションの建替え相談、事業計画・資金計画の指導など、不動産の価値を判断するプロフェッショナルとして、総合的なコンサルティングをおこないます。不動産鑑定士の勤務場所は、不動産鑑定事務所が一般的ですが、不動産会社の鑑定部門や銀行、建築会社などに所属する人もいます。また、資格を持って建築コンサルタントなどと兼務する人もいるようです。
おおよその年収
平均年収は約650万円と高めです。高度な専門知識が求められるだけでなく、不動産という大金が動くビジネスに関わるため、自然と高給を実現できるようです。弁護士や公認会計士と比べるとやや見劣りしますが、サラリーマンの平均水準を上回る年収です。
求められる能力 ~専門知識と実務スキル、運転免許~
不動産鑑定士として働くには、不動産鑑定士の国家試験を受けて合格する必要があります。学歴や年齢を問わずに受験できる資格ですが、一次試験、論文試験の2つの試験を受ける必要があり、難易度も高めです。これらに合格するまでも大変ですが、その後も実務修習を受けて必要な単元を修得する必要もあるなど、目標を掲げて努力する姿勢が求められるでしょう。また、実際に不動産鑑定の仕事をする上では、民法や経済学、会計など実務に関連する幅広い知識、論理的思考も求められます。
その他、不可欠な基本スキルはとしては運転免許があるでしょう。地方の企業や山林内の空き地、都会から離れたゴルフ場などの評価をすることも多く、そのような場合は車を使うのが一般的です。実際、採用条件に「普通自動車免許必須」とうたっている鑑定事務所も多くなっています。
向いている人柄 ~デスクワークと外回りの両方が苦にならない人~
不動産の鑑定評価では、資料の読み込みや金額の算出、報告書作成といった仕事だけでなく、現地調査や関係者へのヒアリングなどの業務もあります。そのため、オフィスクワークとフィールドワーク、両方好きな人が向いています。また鑑定評価では数千万円~数億円レベルの金額が動くことも珍しくありません。「なんとなく」や「こんな感じ」といったあいまいなことは許されないので、論理的に思考でき、かつ説明できる人が向いているでしょう。
仕事のやりがい ~不動産の価値を金額で表せる唯一の専門職~
不動産の利用価値や経済価値を把握して、それを金額で表すことができる日本で唯一の資格です。資格取得の難易度も高く、「不動産鑑定士である自分にしかできない仕事だ」と思えることこそが、やりがいの元になるでしょう。さらに今後は全国的な空き家問題などで不動産鑑定士が活躍するチャンスも考えられます。普通のサラリーマンよりも年収も高いので、自然にモチベーションが上がる仕事です。
仕事の辛いところ ~一人前になるまでは無収入に耐えることも~
不動産鑑定士試験の合格後、実務研修を受けなければいけないのですが、その研修中の収入の低さが、この仕事ならではの「辛さ」として挙げる人が多いようです。将来的には高い収入が約束されてはいますが、場合によっては一時的な無収入もあり得ます。また、依頼主の中には、過度なプレッシャーをかけてくる人もいます。鑑定結果に不服を申し立ててくる依頼主はしょっちゅうで、そういったプレッシャーの中で割りきって仕事をしなければいけない辛さがつきものです。(ライター:二之形幸子)