アクチュアリー ~金融商品の成否を左右する“保険数理人”~
仕事の役割 ~数学的手法で保険・年金の詳細を決める~
アクチュアリーは、確率や統計などの数学的な手法を活用して、おもに保険や年金の適正な保険料率や掛け金、支払い金などを算出する仕事です。おもに生命保険会社や損害保険会社、信託銀行などに所属し、各種保険をはじめとした金融商品の開発、準備金の算定といった業務に携わります。
具体的な仕事内容は、まず保険関連資料などから情報収集をおこない、死亡率・自殺率・事故率・災害確率・経済情勢などのデータを分析しながら、将来起こり得る事象を確率論・統計学を用いて予測します。そうした予測結果をもとに、どれくらいの保険料率や掛け金なら、金融商品として適切に成立するのかを判断し、新商品を開発したり、既存商品の改定などをおこなったりします。
一般的にはあまり馴染みのない職業かもしれませんが、保険会社にとってどのような保険プランを販売するかは、売上に直結する重要な問題です。アクチュアリーの手腕で保険プランが決まると言ってもよく、専門職として重要な役割を果たします。数学・統計が得意な人にとってはまさに天職とも呼べる職であり、「保険数理人」と呼ばれることもあります。
おおよその年収
高度な専門知識と技術が求められるため、平均年収は約1250万円と非常に高年収です。外資系企業だと年収が2000万円以上になることも珍しくないようです。
求められる能力 ~専門資格と数字から未来を予測する能力~
アクチュアリーになるためには「アクチュアリー資格試験」に合格しなければいけません。公益社団法人日本アクチュアリー会が実施する試験で、この試験に合格することでアクチュアリー会の「正会員」になり、晴れてアクチュアリーと認められます。アクチュアリー資格試験は非常に難易度が高く、合格率が10%前後の試験を1次試験で5科目、2次試験で2科目通過する必要があります。全科目合格するには、平均8年程度かかるとも言われており、長期的な視野で時間をかけて勉強をしていなければいけません。
晴れて資格を取得したあと、実際の業務では「膨大なデータから不確実な将来を統計的に予測する」ことが求められます。数字の扱いが得意なことはもちろん、個々の数字に隠された背景、数字から予測されうる未来を説得力あるものにしなければいけません。細部に至るまで徹底したロジックを組み立てる能力が必須でしょう。
また、専門職ではありますが、他の職業同様、会社という組織で働くことが多いので、当然コミュニケーション能力は求められます。数理的な作業から導き出された結論を、わかりやすく専門外の人に伝える能力も求められるでしょう。
向いている人柄 ~とにかく数字が好きで統計・数学が得意な人~
アクチュアリーは、確率論や統計学など、数理学に関する知識を駆使する仕事です。そのため、何よりも数字に強い人、数字を扱う仕事が得意な人でないと務まらない仕事です。理数系出身でなければならないということはありませんが、数学が好きな人に向いています。また、大量の資料を集め、そこに書かれたデータを分析し、保険や年金の適正な掛け金や支払い金などを算出していくので、几帳面で数字や計算が好きな人に向いている仕事です。
仕事のやりがい ~保険商品を開発する仕事に大きなやりがい~
保険商品の開発場面でアクチュアリーは活躍します。適正な保険金や支払い金を算出することは保険会社の命運を左右することでもあり、誰でもできる仕事ではないので、非常に責任のある仕事ですが、そのぶん、大きな達成感を味わえるでしょう。まだ人材不足の職業なので、経験を積めば積むほど重宝されるはずです。企業の将来を左右する重要な役割を担うので、自然と自信もわいてきます。
仕事の辛いところ ~年収は高いけれど、勉強と地道な努力が大切~
アクチュアリーの資格試験合格までに何年もかかることはもちろん、資格を取得してからも頻繁に行われる法改正の情報をキャッチアップすることが必要です。また、さらなるスキルアップを目指すためには、とにかく勉強するしかありません。毎日、当たり前のように情報収集をして、日々の勉強を重ねていける人ないと辛い仕事になるでしょう。また、華やかな職業のようにも思えますが、実は膨大なデータの調査・検証作業に取り組むことが求められます。(ライター:二之形幸子)