介護士 ~要介護者の生活サポートからメンタルケアまで~
仕事の役割 ~高齢者や障がい者をトータルに支える~
介護士は正式名称を介護福祉士といい、日常生活が困難な高齢者や障がい者の食事、入浴、排泄などの身体介護やケアをおこなうのがおもな仕事です。また、要介護者だけではなく、その家族に対しても、どのようにサポートすればよいか、介護疲れはないかなどのアドバイスをする役割も担っています。
介護士と似た仕事に「ホームヘルパー(訪問看護員)」もあります。ホームヘルパーは民間の養成講座を受講すれば取得できますが、介護士は国家資格であり、養成校を卒業するか、試験に合格しなければ取得できません。また、ホームヘルパーはその名の通り在宅介護が多く、介護士は各種の施設で活躍することがメインです。介護士の方が資格の取得難易度も高く、取得までの必要年数も長くなります。
資格を持っていなくても、食事の準備や掃除、入浴や排泄の補助など、簡単な介護の仕事はできますが、メンタルケアなど専門的な仕事は一部制限されます。勤務場所は、介護施設、老人ホーム、利用者の自宅などさまざまです。高齢社会の中、介護士の需要は増え続けています。
おおよその年収
平均年収は300万円ほどで、高い需要のわりにあまり多くありません。これは介護報酬が公定価格として行政に定められているからです。しかし、今後の超高齢化社会を見据えて、介護士の給与を引き上げようという声も出てきています。
求められる能力 ~専門技術と体力とコミュニケーション能力~
国家資格である介護士は、当然ながら介護に関する専門知識が求められます。ひと口に介護といっても、高齢者の介護か身体障がい者の介護かで、その内容も変わりますから、一人ひとりに合わせた最適なサポートとケアを考え、実行しなければなりません。また、相手の体を支えたり、抱き起したりすることも多いので、最低限の体力はどうしても必要です。
また、単にルーチンワークで仕事をこなせばいいのではありません。介護士に最も求められるのは、高齢者や障がい者としっかり向かい合うコミュニケーションスキルです。介護を必要とする人の中には、話すことが困難な人、自分がどうしたいか、何が不満か伝えることが困難な人もいます。そのような人に対して、積極的に気持ちを推測し、理解しようとする働きかけが求められます。年齢や性別、性格など、さまざまな人がいるので、どんな人とでも柔軟に対応できる柔軟性も大切です。介護を必要とする人は、常に不安と孤独を感じているもの。そんなネガティブな感情も払拭させてくれるくらいの、笑顔になれるコミュニケーション能力が必須です。
向いている人柄 ~ポジティブで気分転換の上手な人~
介護士は、人間相手の仕事なので、人に接するのが好きな人が向いています。しかし、実際に仕事をしてみると、要介護者からイライラして怒られたり、家族からも苦情を言われたりすることもあります。また、排泄物の処理をしたり、力仕事が必要だったりと決してラクな仕事でもありません。そうした中でもストレスにうまく対処し、いつも笑顔を絶やさず、自分の気持ちをコントロールできる人が向いています。
仕事のやりがい ~たくさんの人の「笑顔」に触れられる仕事~
やはり、人の「笑顔」を見られた瞬間こそが、この仕事のやりがいでしょう。あなたのサポートによって、要介護者はこれまでできなかったことができるようになります。それは散歩や毎日の食事など、本当にちょっとしたことかもしれませんが、要介護者にとっては非常にうれしく感じられるもの。そうした際、相手から「ありがとう」と言われることも多く、ホスピタリティ精神のある人にとっては大きなやりがいにつながります。また、高齢社会の中、需要が高まっている仕事なので、社会的にも大きな意義のある仕事ともいえるでしょう。
仕事の辛いところ ~肉体的・精神的なストレスと向き合う~
介護士は肉体的にも精神的にもきつい仕事と言われます。反面、給料は高くないので、「割に合わない」と感じる人も多いようです。また、寝たきりの障がい者を抱きかかえて移動させたり、高齢者の急な怪我や病気などに対応したりと、心身両面でストレスを感じやすい仕事でもあります。そうした負担を上手にコントロールできれば、自分の気持ち次第でやりがいにつながっていくでしょう。(ライター:二之形幸子)