獣医 ~怪我・病気の動物たちを助ける専門医~
仕事の役割 ~家畜からペットまでを幅広く診療~
獣医師は牛や馬、豚といった大型動物から犬や猫、鳥などのペットまで、あらゆる動物の診療を業務とする専門家です。一般的には「ペットのお医者さん」というイメージが強いものですが、ほかにもさまざまなシーンや現場で活躍しており、働く場所によって仕事内容も幅広いものとなっています。独立してペット専門の獣医として活躍するのはもちろん、例えば畜産業の現場では牛や馬、豚、鶏といった家畜の診療や病気の予防、また食肉の安全性検査なども行います。また動物園での動物たちの診療、また、野生動物の保護や管理を行う獣医師もいるなど、活動領域は多岐にわたります。
実際の業務としては人間相手の医師と変わらず、病気・怪我の動物たちの診療とその治療、手術などをおこないます。当然ながら動物相手に問診するわけにはいかないので、その飼い主から具体的な症状を聞き取ります。その上で健康状態を判断し、投薬・手術などの治療を進めていきます。動物相手の仕事なので、怖がる動物たちを落ち着かせたり、手際よく注射したりと独特のコツと経験が求められるシーンも少なくありません。
おおよその年収
平均年収は約640万円と一般的には高年収の職業ではありますが、やはり人間の医師と比べるとやや低めです。
求められる能力 ~専門知識とコミュニケーション能力~
獣医師になるには、獣医学部や獣医学科などがある獣医系大学に入学して学ぶ必要があります。4年間しっかり勉強できる時間はもちろん、獣医系大学は学費も高いのでそれなりのお金も重要でしょう。
当然ながら、人間の医師と同じく、獣医師になった後でも常に最新の獣医学を学び続けていく必要があります。特にペット専門の獣医師を目指す場合、犬や猫、小鳥、ハムスターなど異なる動物たちを相手にすることもあります。毎日が勉強の連続と言ってもいいでしょう。
また、動物の気持ち・表情を察してあげることはもちろん、「どんな症状が気になるのか」「普段どんな世話をしているのか」などを聞き取らなければならないので、飼い主のコミュニケーション能力なども必須です。また、動物が好きであっても、勤務先によっては実験に使われる動物と関わらなければならなかったり、たくさんの動物の最期を看取ったりしなければならないこともあります。ただ「かわいい」だけでなく、「命に触れる仕事である」ということを十分に理解しておく必要があります。
向いている人柄 ~“好き”だけでなく動物全般に興味がある人~
犬が好き、猫が好き……といった“好き”の気持ちだけではなく、生態や病理学を含めて動物全般に興味を持てる人が向いています。愛情も大切ですが、感情移入し過ぎる人は動物の最期を見届けなければいけないこともあるので、辛さも倍増してしまうでしょう。次から次へと病気やケガをしたペットがやってきますので、動物を愛する一方で、現実に冷静に対処できる精神力のある人なら、獣医師としても信頼されるはずです。
仕事のやりがい ~動物も人も笑顔が戻った瞬間に大きなやりがい~
病気に苦しんでいる動物が元気になり、飼い主の笑顔が見られたときこそ、獣医師のやりがいでしょう。言葉を話せない動物なので、診療や治療は大変ですが、動物のしぐさや表情などから病気・怪我を読み取り、今までに培った知識や経験を生かして問題解決していきます。誰にでもできる仕事ではありませんので、動物も人も笑顔にできる仕事は達成感につながります。
仕事の辛いところ ~動物の最期を見届けなければいけない仕事~
獣医師になる人は動物好きな人が多いので、動物の最期を看取るときが一番辛いでしょう。医療が発達したとはいえ、獣医師がどれだけ懸命に治療を行っても、残念ながら助からないことも多々あります。そのような時に「あの時こうしていれば良かった」と自分を責めてしまうことがあります。何度経験しても、動物の死は辛さにつながってしまうようです。また、動物相手の仕事なのでどうしてもにおいが体に移ったり、暴れる動物たちにかまれたり、ひっかかれたりしてしまうことも珍しくありません。(ライター:二之形幸子)