面接で提示された条件が求人広告と違う! これってありなの?
転職サイトを使って転職している人なら、求人広告に書かれていた内容と面接で提示された条件が違うという場面に遭遇したことが、一度や二度はあるでしょう。「年収500万円と書いてあったが、面接では年収350万円スタートと言われた」、「東京勤務と書いてあったのに、神奈川勤務を打診された」といった具合です。
年収・給料や勤務地だけでなく、ときには仕事内容や雇用形態までもが違っていたという例もあるようです。果たしてこれに問題はないでしょうか?
求人票や求人広告は「スーパーのチラシ」と同じ
結論から言うと、面接時に求人票や求人広告と違う待遇・仕事内容を提示するのは、違法ではありません。
なぜなら求人票・求人広告は、法律的には「申込みの誘因」と位置付けられているからです。「申込みの誘因」とは、契約(就職であれば雇用契約)について「申込みしませんか?」と誘う文書などを指します。身近な例で言えば、スーパーのチラシがこの「申込みの誘因」に当たります。スーパーのチラシを見て、「お店から売買契約の申込書だ」と思う人はいませんよね。それはあくまでも申込み(売買)を誘うだけのものです。
したがって、求人広告だけで「この条件であなたを雇用します」と宣言したことにはなりません。同様に、その求人票・求人広告に応募したからといって「この条件で雇われることを承諾します」とはなりません。最終的な雇用条件を決めるのは、採用が決まった際に交わされるお互いの合意と、その合意に基づく雇用契約書なのです。
求人票と違う内容を提示する理由
ではなぜ企業側は、求人票や求人広告と違う内容を面接で提示するのでしょうか? 多くの場合は、応募者のポテンシャルに期待してのことです。つまり「求人票に書かれている年収では採用できないけど、あなたが今後成長することを期待して、この年収であれば採用できると思います」という条件提示です。
求人票・求人広告が「応募を誘うもの」である以上、そこに書かれているものは“候補者へ提示できる最大限の待遇”と見なせます。つまり「弊社は最大でこれくらいまで好待遇できる用意があります」というものなのです。企業側が想定するスペックに満たない候補者には、年収を下げて提示することもあると認識しておきましょう。
あまりにもかけ離れた内容を提示されたら?
このように、面接時に求人票や求人広告と違う待遇や仕事内容を提示することは、基本的には問題のない行為です。とはいえ、あまりにも実態とかけ離れた内容を求人広告に載せるのは、やはり好ましくありません。求人広告(ハローワークの求人票含む)の内容については、以下のような指針が出されています。
- 明示する労働条件等は、虚偽又は誇大な内容としないこと。
- 求職者等に具体的に理解されるものとなるよう、労働条件等の水準、範囲等を可能な限り限定すること。
- 求職者等が従事すべき業務の内容に関しては、職場環境を含め、可能な限り具体的かつ詳細に明示すること。
- 労働時間に関しては、始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働、休憩時間、休日等について明示すること。
- 賃金に関しては、賃金形態(月給、日給、時給等の区分)、基本給、定額的に支払われる手当、通勤手当、昇給に関する事項等について明示すること。
- 明示する労働条件等の内容が労働契約締結時の労働条件等と異なることとなる可能性がある場合は、その旨を併せて明示するとともに、労働条件等がすでに明示した内容と異なることとなった場合には、当該明示を受けた求職者等に速やかに知らせること。
- 労働者の募集を行う者は、労働条件等の明示を行うに当たって労働条件等の事項の一部を別途明示することとするときは、その旨を併せて明示すること。
(平成11.11.17 労働省告示第141号)
これらはあくまでも指針なので、法的な決まりではありません。ですが、もし面接であまりにも求人広告とかけ離れた採用条件を提示されたのなら、その企業への転職は避けたほうが無難かもしれません。また、この転職サイトやハローワークに問い合わせてみるのもいいでしょう。