そもそも「転職の市場価値」っていったい何?
転職活動に取り組み始めると、「市場価値」という言葉を耳にすることがあります。人材としての市場価値、転職市場価値といった使われ方をされることもあるようです。なんとなく「市場価値=年収」、あるいは「市場価値=高度なスキル」と考えてしまいがいですが、この言葉の意味を本当に理解できている人は多くないようです。
また、「年収が低い自分は市場価値がないから転職できない……」などと勘違いしてしまうケースも少なくありません。転職における市場価値とは、本来何を表すものなのか。詳しく解説していきます。
市場価値とは「あなたがどれだけ求められているか」
転職における市場価値とは、ひと言で説明すれば、「社会全体において、あなたという人材がどれだけ求められているか」です。つまり事業団体に「採用したい!」と思われている人ほど市場価値が高いということです。
ここで重要なのは、現在の社会全体においてどんな要素が「採用したい!」につながるかを把握すること。つまり人材に対するニーズを見極めるということになります。例えば、近年はITエンジニアのニーズが右肩上がりで増加しています。教育制度を十分に持つ企業であれば、たとえ実務経験が少なくても戦力として期待されることでしょう。つまり「エンジニア経験がある」ということ自体が、それだけで大きな価値を持つわけです。また、中国経済の活性化や中国人観光客の増加によって、中国語スキルのニーズも高まっています。ビジネスレベルの中国語を話せる人材は、職種を問わず重宝されるようになりました。これは、数年前と比べて大きな変化と言えるでしょう。
逆に、ニーズの減少している職業やスキルもあります。例えばワープロの登場によってタイピスト(タイプライターでの文書作成を行う人)の需要は急速に減少しました。いくらその職種において素晴らしいキャリアがあっても、市場価値としては低くなってしまいます。もちろん過去の実績は、市場価値を決めるうえでの1つの軸となるでしょう。しかし、それだけで決まるものではないということを、十分に理解しておくことが大切です。
こんなスキルや資質も市場価値になる
ここまで読んで、「英語もパソコンもできないなら市場価値は低い」、「新卒だからなんの経験もないし、市場価値が低い」と思ってしまう人もいるでしょう。しかし、特別な経験やスキルだけが市場価値ではありません。例えばコミュニケーション能力や指導力、年齢の若さ、人柄の良さなども十分に市場価値として認められます。「英語もパソコンも苦手だけど、同僚たちやお客さんに好かれる笑顔で飲食店の店長として採用された」なんて事例は、いくらでもあるのです。
以下のような能力、資質はさまざまな業界・職種で活かすことができるでしょう。未経験職種への転職であっても、その部分が評価されて採用に至るケースも少なくありません。
- コミュニケーション能力
- 柔軟な対応力
- リーダーシップ
- ストレス耐性
- 臨機応変な対応力 ……など
具体的な実務での成果に限らず、こうした自分自身の強みを知っておくことも大切です。自己分析はもちろん、他者から見た評価を聞いてみるのもいいでしょう。内面的な事柄は、なかなか自分自身で気づかないものです。自分では「人材評価に直結しない」と思っているようなところが、実は企業において大きな評価ポイントになるかもしれません。
年収がいくら高くても、それは現在勤務している環境での話です。社外で通用する能力がなければ、社会全体における市場価値が高いとは言えません。今、そしてこれからの社会において、どのような経験・スキルが求められるのか。そのニーズに合致していることこそが、市場価値に繋がるのです。(ライター:ナレッジ・リンクス/三河賢文)