「好き」や「あこがれ」だけで転職しても成功しない理由
はじめて転職する人の中には、志望動機に「御社の製品が好きだから……」、「この仕事にあこがれていて……」などの理由を述べる人が少なからず見られます。特に社会人経験の浅い若手の方では、その傾向が強いでしょう。
もちろん製品・サービスへの愛着、あるいは仕事への夢は尊重されるべきですし、仕事においても大切です。しかし、それを全面に押し出して転職できるほど、面接官はそんなに甘くありません。なぜ「好き」や「あこがれ」で転職するのが難しいのでしょうか?
「好き」にもレベルがある
同じ「好き」という気持ちでも、その程度はさまざまです。例えばテレビゲームが趣味の人が、ゲームプログラマやその営業、広報・宣伝などの職業に転職したとしましょう。しかし、「ゲームで遊ぶのが好き」なだけでは、転職後に大きな困難にぶつかっても乗り越えることができないでしょう。ゲームプログラマや営業の仕事でぶつかる困難を乗り越えるためには、「もっとよいゲームを作りたい」、「もっと自社のゲームの売上を伸ばしたい」といったモチベーションが必要だからです。消費者としてゲームが好きなだけでは、こうしたモチベーションを維持することができません。
単なる「好き」という気持ちを土台に、困難を乗り越えるだけの自分を確立できるのか。その「好き」という思いが、自分のためではなく、ユーザーや顧客にも向けられる思いなのかを、よく吟味する必要があります。
「好き」だから「向いている」とは限らない
採用する企業側は、気持ち以上に会社あるいは仕事に向いているか否かを見極めています。なぜなら、転職者には成果を求めているからです。例えば、1日中ずっと見ていられるほどのテレビ好きの人が、必ずしも番組制作に向いているかと言うと、そうではありません。テレビ制作には発想力や調整力、コミュニケーション能力など、さまざまな能力が求められます。もしかすると、テレビとは何の関係もないオモチャの企画開発者やWebプロデューサーのほうが、テレビ制作者に向いていることだってあるのです。「好き」なことを仕事にしたいのであれば、それ相応の能力をまずは身に付ける必要があるでしょう。
表面的なあこがれはイメージギャップを生む
人がとある仕事にあこがれるとき、どこから得た情報をもとに憧れを抱くでしょうか。実際にその仕事に従事している人の姿だったり、テレビや雑誌などのメディアだったり、さまざまなケースがあるでしょう。しかし、外から見えるのはその仕事の一部分に過ぎません。そうした情報を鵜呑みにすることは、転職後のギャップを生んでしまいます。
もしかしたら、その仕事には辛い研修期間や修行期間があるかもしれません。また、雑務や泥臭い人間関係、給与の低さに悩んでいる可能性もあるでしょう。これらは、実際に働いてみないと分からない部分です。あこがれている仕事があるならば、よい面・悪い面を含めて、できるだけその実態を知りましょう。実際に働いてみることは難しくても、直接その仕事に従事する方(もしくは過去に従事していた方)から話を聞くことはできます。
仕事は「好きだから」、「あこがれの仕事だから」というだけで活躍できるほど、簡単なものではありません。自分の得意・不得意やモチベーションの高さなども、成功できるか否かの重要な要因になります。これは、どんな職種でも同様です。好きという気持ちも大切にしながらも、現実的な目線でしっかり見極めましょう。(ライター:ナレッジ・リンクス/三河賢文)