勤務先が倒産!転職活動で注意すべき点は?
勤務先の倒産によって転職をせざるをえなくなるケースは、あまり多くはありませんがありうることです。大きな精神的ショックを受けることもあるでしょうが、うまく乗り越えて新たなキャリアを築きましょう。
今回は、転職で成功するための具体的な対策について「倒産理由別」に解説したうえで、共通して有効な方法についても触れます。困難な状況を前向きに捉え、次のステージへ進むためのヒントを提供します。
倒産理由別の対策
会社の倒産理由は様々ですが、それによって転職活動の進め方も異なります。
1.業界不況が原因の場合
業界全体が不況に陥っている場合、同業界での再就職は難しいと考えるべきでしょう。他業種へのキャリアチェンジを念頭に転職先を探しましょう。
例えば、コロナ禍で旅行業界が打撃を受け、多くの旅行関連企業が倒産したような状況では、同業他社も苦境に立たされており、同じ業界での転職が困難です。
業界経験の浅い若い人の場合は、まったく新しい分野に飛び込んでみることも考えられます。
中堅以上の場合は、それまでの営業や顧客対応、プロジェクトマネジメントなどの経験で培った専門スキルや汎用スキルを抽出し、他の業界でも応用できるものがないか考えてみましょう。その力を増幅できるデジタルスキルを身につけるで、転職先の選択肢が広がる可能性もあります。
2.社内問題が原因の場合
企業の経営戦略の失敗や内部の問題が原因で倒産するケースもあります。このような場合、業界全体に影響は少なく、同業他社への転職が現実的です。
例えば、あるファッションブランドが、消費者ニーズの変化や競争激化に対応できずに経営不振となり倒産しました。この場合、市場自体は健全であるため、同業他社への転職が可能です。
業界に関する知識や自身の業績や専門スキルを強調し、同業他社への転職を目指しましょう。特に専門知識や顧客対応の経験は、同業他社で評価されやすいです。
面接で倒産の理由を聞かれた際には、ネガティブな批判を避け、客観的に状況を説明し、「市場の変化に対応できなかったが、その中で自分は業務改善に取り組んだ」というように自己の努力や貢献を前向きに伝えます。
3.天災などが原因の場合
天災やパンデミックなど、外的な要因によって会社が倒産する場合、業界や地域全体に影響が及ぶことがあります。このような状況では、倒産が個人の責任ではないことを強調しつつ、次のステップへ進む準備をしましょう。
例えば、大規模な天災が起きた場合、被災地の企業が多く倒産することがあります。このような場合、引っ越しを含めた他地域での転職を検討する必要があるでしょう。地域を離れられない場合には、残された産業に適応するためのリスキリングも必要です。
面接では、遭遇した状況を踏まえ、不可抗力による倒産であったことを冷静に説明する程度でよいでしょう。
4.技術革新などが原因の場合
技術の進歩や消費者の嗜好の変化により、企業が市場に適応できずに倒産するケースがあります。このような場合、同じ業界での転職は難しくなります。
例えば、デジタルカメラやスマートフォンの普及により、フィルムカメラの市場が急激に縮小し、多くのフィルムカメラ関連企業が倒産し、業界自体が衰退しました。これと同様なことは、他の業界でも起こり得ます。
若い人の場合は、まったく新しい分野のスキルを身につけ、大胆なキャリアチェンジをすることも考えられるでしょう。デジタル技術やAI、データ分析など、成長分野のスキルを学び直すことが重要です。
中堅以上の場合は、営業、顧客対応、プロジェクトマネジメントなどの汎用的なスキルとともに、それまで培ってきた中核的な技術が他の業界でも応用できるものがないか、を考えることが得策と考えられます。
5.規制や法改正が原因の場合
法改正や新しい規制によってビジネスが立ち行かなくなり、企業が倒産することもあります。この場合、法規制を理解しつつ、業界の再編や新たな市場への適応が求められます。
例えば、労働者派遣法の改正により、派遣社員の待遇や契約条件が厳しくなり、派遣会社の倒産が続出したことがありました。規制の影響で事業継続が難しくなったケースです。
このような場合でも、新たに環境に適応して生き残る同業他社もあります。その場合には、前職での経験を活かして同業他社に転職することがひとつの選択肢となります。一方で、業界の将来性を考えてキャリアチェンジの機会とすることも考えられます。
倒産理由に関係なく有効な共通の対策
会社が倒産した場合、どのような理由であれ共通して実行すべき対策があります。
1.自己分析とスキルの棚卸し
まず、倒産後は自分の職務経験やスキルを振り返り、市場価値を再確認しましょう。履歴書や職務経歴書の作成を行いながら棚卸ししてみましょう。
社会人経験の浅い社会人であれば、キャリアチェンジによる新しい分野での挑戦も十分考えられます。一方で、中堅以上であれば、これまでの経験やスキルと、同業他社や異業種の仕事の中で、どう活用できるかを考えることが大切です。
2.人的つながりの活用
倒産後、人的つながりを活用することは非常に重要です。過去の同僚や業界関係者とのつながりを通じて、新しい職の情報を得たり、紹介してもらえるチャンスを広げることができます。リファラル(紹介)採用も活用し、人脈を通じての転職活動を積極的に進めましょう。
3.転職エージェントなどの活用
転職エージェントや企業のリクルーター(採用担当)を活用することで、倒産後の転職活動を効率的に進められます。彼らは業界の求人動向に詳しく、面接対策や履歴書の添削などもサポートしてくれるため、特に倒産の影響で早急に職を見つける必要がある場合には効果的です。
4.金銭面での準備
倒産後は、金銭的な準備も重要です。失業期間が長引く可能性に備え、退職金や失業保険を確認し、生活費を計算しながら転職活動を進めましょう。余裕を持った経済計画を立てることで、焦らずに自分に合った仕事を見つけることができます。生活費を削減する工夫や、収入の安定を図るための副業の検討も有効です。
5.精神面でのケア
倒産による精神的なストレスや不安を軽減するために、メンタルケアも大切です。キャリアの転換期には焦りや不安がつきものですが、十分な休養を取り、リラックスできる時間を作ることが重要です。信頼できる家族や友人に相談することで、精神的なサポートを得ることも心の健康を保つ手助けになります。
倒産前に行動を起こすべきか?
倒産絡みの転職活動については、倒産後に行うべきか、倒産直前に行うべきか、ということがよく問題になります。確認すべきなのは、倒産を予見しての事前転職は、退職理由が「自己都合」になることです。
会社の経営状況は外部から確認できるものではなく、志望企業や面接担当者には、その会社が本当に倒産するか否かを判断する材料がありません。
そのため「何か本当の理由を隠しているのでは?」「会社のせいにしているのでは?」などの疑惑を抱かれてしまう可能性もあるでしょう。「本当に倒産するこを見越して転職しているのか?」と退職理由について深掘りされるかもしれず、そのことを踏まえたアクションが必要です。