「退職あいさつメール」の最新ルール 社内外に送信禁止の会社も?
雇用流動化が進み、転職は珍しくなくなってきました。それに伴い「退職あいさつメール」のマナーも変化しています。例えば、取引先等に対して「退職メール」の送信を禁止するケースが増えているということです。
今回は、適切な「退職メール」の作成と送付に関する情報を提供します。最新トレンドを踏まえていますので、退職者だけでなく、人事担当者や管理職にとっても、円滑な退職プロセスの指針として参考になると思います。
会社が「退職メール」を禁止する理由
最近は退職者が「退職メール」を送ることを禁止または制限する会社が増えています。その理由と会社の対処法について整理します。
1.情報漏洩の防止
会社の情報漏洩を防ぐため、退職者と顧客・取引先とのコンタクトを制限する会社が増えています。
退職が決まった時点で、退職者の機密情報へのアクセス権限を即時停止したり、退職者が保有する会社情報の返却を義務付けたりしています。また、退職後の守秘義務について改めて確認を行う会社も増えています。
2.顧客引き抜きの防止
特に営業職などでは、顧客の引き抜き防止が大きな課題となっています。
そのため、競業避止義務の徹底や、退職後の一定期間における顧客接触禁止などの措置が取られることがあります。退職メールを通じて個人的な連絡先を伝えることを禁止している会社もあります。
3.退職者の多さを隠す
会社イメージの保護や、残る社員のモチベーション維持のため、退職者の多さを隠そうとする会社もあります。
このような場合「社内異動」として説明するよう指示したり、退職情報の公開を社内に限定したりすることがあります。
4.業務の混乱防止
あいさつメールによる業務中断を避けるため、退職あいさつの方法や時期を制限する会社もあります。例えば、退職あいさつを業務時間外に限定したり、一斉送信ではなく個別に行うよう指示したりすることがあります。
これらの制限は会社の利益を守るためのものですが、一方で従業員の自由を過度に制限する可能性もあり、バランスの取れた方策が必要です。
「退職メール」を禁止しない考え方
「退職メール」を禁止する会社がある一方で、現代でも重要な役割を果たしているという考え方もあるでしょう。
1.円滑な業務引継ぎ
特に社外取引先への後任者紹介を含め、退職あいさつメールは業務の継続性を確保する上で重要な役割を果たします。
2.人間関係の維持
将来的な人脈の基盤作りや再就職の可能性を考慮すると、良好な関係性を維持するために、社内外のあいさつは依然として有益です。
3.組織文化の継承
ていねいなあいさつは組織の価値観を反映し、残った従業員のモチベーション維持にも寄与します。
退職を明かさずに引き継ぎする方法
退職者が「退職メール」を送らなくても、円滑な業務引き継ぎは可能です。
後述するように、「退職メール」を禁止する会社では、顧客に対し、退職者の退職理由を伏せて「担当者変更」として通知することが一般的です。この際、業務の継続性を強調し、顧客に不安を与えないよう配慮することが重要です。
新担当者の経験やスキルを簡潔に紹介し、引き継ぎが完了していることを明確に伝え、必要に応じて上司への連絡先などのサポート体制について説明しましょう。
「退職メール」に関する最近の傾向
「退職メール」を巡る状況は、近年大きく変化しています。
1.一斉メールの簡素化
雇用の流動化や、業務の混乱防止の観点から、退職メールを送る場合でも、簡素かつ事務的にすることがマナーになりつつあります。長々と書かないように。会社や上司批判を匂わせるような書き方などもってのほかです。
2.送り先の自由
「退職メール」を送るかどうかを、本人の判断に委ねる会社もあります。全社員向けの一斉送信ではなく、直接関わりのあった部署や同僚、重要顧客のみに限定して送付する傾向も強まっています。
3.カジュアルな方法
従来の一斉メールに代わり、親しい人を対象に、社内SNSやチャットツールなどを活用した、よりインフォーマルなコミュニケーション手段でのあいさつが増えています。
カジュアルな雰囲気での別れのあいさつが可能ですし、写真や動画を活用した、より個人的な表現もできる点がメリットといえます。
「退職メール」のテンプレート
社内向けテンプレート
送信のタイミングは「最終出勤日」が適切ですが、上司と相談し、部門や役職に応じた柔軟な調整をしましょう。
一斉メールで送る場合、内容は簡潔な退職事実の伝達と、在職中の感謝の気持ちの表明に絞りましょう。個人的なエピソードの言及は、特に親しい同僚や上司へ送る場合に限りましょう。
件名:退職のご挨拶
皆様
お世話になっております。[氏名]です。
このたび、[退職日]をもちまして[会社名]を退職することとなりました。
[在籍期間]の間、皆様には大変お世話になり、心より感謝申し上げます。
[具体的なエピソードや学んだこと]
私の担当業務については、[後任者名]に引き継ぎます。
今後とも[会社名]をよろしくお願いいたします。
末筆ながら、皆様のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
[氏名]
[連絡先(任意)]
社外向けテンプレート
前述の通り「退職メール」は送らず、退職前に引き継ぎを行う場合のメールです。今後の業務については、上司や後任の担当から別途連絡を入れてもらいましょう。
件名:担当者変更のお知らせ
[取引先名] 御中
平素より大変お世話になっております。[会社名]の[氏名]でございます。
このたび、社内異動に伴い、[退職日]をもちまして担当を離れることとなりました。
後任には[新担当者名]が着任し、[引継ぎ完了日]に引継ぎを完了いたしました。
[在任期間]の間、[具体的な取引内容]など、多大なるご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
今後とも変わらぬお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
末筆ながら、貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
[会社名]
[部署名]
[氏名]
新担当者連絡先:
[新担当者名]
[メールアドレス]
[電話番号]
退職はキャリアの終わりではない
定年などの例外を除き、退職はキャリアの終わりではありません。新しいスタートでもあり、社内外への連絡はていねいに行いましょう。
ただし、会社として「退職メール」の送信を禁止または制限している場合には、それに従いましょう。会社との関係性は良好に保っておくべきです。情報漏洩などの疑いをかけられないようルールを守りましょう。
社内へのあいさつで、感情的になって会社批判をすることは禁物です。トラブルがあったとしても、できるだけ冷静に退職すべきです。仲の悪かった上司や同僚も、いつか退職するかもしれません。