20代後半からの転職準備とキャリア検討 5つの具体的アクション
20代後半は、新卒で入社した会社にも慣れ、将来の自分のキャリアについて考える時期です。より良い条件や自己実現を求めて、転職を考え始める人も多くなります。しかし、キャリアの主体的形成には周到な準備と計画が必要で、具体的な行動に移せない人がほとんどです。
今回は、20代後半の普通のホワイトカラーを対象に、転職を視野に入れた「キャリア形成」のための5つのアクションプランを紹介します。「あのとき真面目に考えておけばよかった」と後悔しないために、知っておきたいステップです。
アクション1:自己分析
転職準備の第一歩は、自分自身を深く理解することです。
1.価値観の明確化
「仕事を通じて実現したいことは何か」、具体的に書き出してみましょう。これがすべてのスタートになります。給与、やりがい、ワークライフバランスなど、さまざまな要素がありますが、それぞれについてどのようなことを求めるのかを具体化し、優先順位を付けてみます。
大手転職サイトが提供する、無料のキャリア診断を受けてみてもいいかもしれません。そこでは「毎日定時に帰れる仕事がしたい」のか、「尊敬できる上司の下で働きたい」のか、などを尋ねられ、自分の志向が分かります。
2.仕事の好き嫌いの整理
これまでの経験から、楽しいと感じた仕事と苦手な仕事をリストアップしてみましょう。それぞれの理由も併せて考察してみると、自分が目指すべき仕事が見えてきます。
ただし、気をつけるべきなのは、仕事には「好きなことより、できること、得意なこと」という側面があることです。会社から求められる役割を果たすためには、好き嫌いより「そのことが得意か、他人よりうまくできるか」が重要だったりします。
3.長所と短所の分析
仕事上での自分の強みと弱みを5つずつ書き出してみましょう。ただし、強みや弱みは環境の中で相対的に決まる部分もありますし、努力によって伸ばせる長所や、克服できる短所もあります。固定的に考えすぎなくてもいいでしょう。
具体例:Aさん(28歳、営業職)の自己分析結果
- ・価値観:チャレンジングな環境、成果に応じた評価、専門性の向上
- ・好きな仕事:顧客折衝、新規開拓、数値分析
- ・長所:コミュニケーション力、粘り強さ、数字への強い意識
- ・短所:細部への注意不足、文書作成の遅さ
この自己分析を通じて、Aさんは営業経験を活かしつつ、より専門性の高い分野への転職を検討することにしました。
アクション2:業界・企業研究
自己理解を深めたら、次は転職先の候補となる業界や企業について調べましょう。
1.業界動向の情報収集
まずは興味のある業界について、情報収集をしましょう。ここで集めた情報は、実際に面接したり、その業界に転職して働いたりする際にも役立ちます。新聞や業界専門誌を定期的に読んだり、関心のある業界のセミナーや展示会に参加したりしてみましょう。
2.企業研究
収集した情報を基に、興味のある企業の公式サイトや採用ページを詳しく読み込みましょう。企業の決算報告書や中期経営計画のチェックもおすすめです。有価証券報告書の読解は、営業職として働くうえで必要スキルですので、読み慣れておくといいでしょう。
3.社会人の声を聞く
公開情報だけでは、細かな実態は分かりません。情報収集や企業研究で生じた疑問を基に、現役社員やOBOG、業界関係者に実際に会い、話を聞くことが大事です。転職サイトの口コミ情報の中にも参考になるものがあります。
具体例:Bさん(27歳、事務職)のIT業界研究
- ・IT業界専門誌を定期購読し、クラウドサービスの需要増加トレンドを把握した。
- ・興味を持ったIT企業3社の決算報告書を読み、業績好調の要因を分析した。
- ・大学の先輩でIT企業に勤める知人にオンラインで話を聞き、業界の実情を理解した。
この研究を通じて、Bさんは自社の業務効率化経験を活かせるITコンサルタントへの転職を目指すことを決意しました。
アクション3:スキルアップ
業界研究を進めると、転職に必要なスキルが見えてきます。ここでは、現実的なスキルアップ計画を立てましょう。
1.必要スキルの特定
志望する業界・職種の求人情報から、求められるスキルをリストアップします。そして、自分の現在のスキルとのギャップを分析しましょう。
2.学習計画の策定
必要スキルを埋めるために、書籍や専門誌を活用した自己学習を行います。SchooやUdemyなどのオンライン学習サービスも活用しましょう。セミナーや勉強会への参加も有効です。
3.実践の場の確保
学習したスキルを、実践の場で試してみる場所を確保しましょう。転職しなくても、プロジェクトへの参加など現職での新しい挑戦ができる場合には、その機会をうまく利用するべきです。また、副業やボランティアを通じて、経験を蓄積することも考えられます。
具体例:Cさん(29歳、経理担当)のITスキルアップ計画
- ・転職目標:IT企業の財務マネージャー
- ・必要スキル:基本的なプログラミング知識、データ分析スキル、英語力
- ・学習計画:「プログラミングゼロから始める」シリーズの書籍で基礎を学ぶ。UdemyでExcelのVBA講座を受講する。週末英会話スクールに通学する。
- ・実践:社内の業務改善プロジェクトにボランティアで参加する。経理部門のデータ分析タスクを率先して担当する。
アクション4:アドバイザーの確保
転職成功の鍵は、信頼できるアドバイザーを確保し、適切な情報や助言を得ることです。
1.転職サービスの適切な活用
転職エージェントとの面談で市場動向を把握します。そして、転職サイトのスカウトサービスに登録し、自分の市場価値を確認しましょう。その転職サービスを利用して転職する必要は必ずしもありませんが、情報収集や相談相手としては有効です。
2.業界コミュニティへの参加
関心のある業界の勉強会やイベントに積極的に参加しましょう。オンライン上の専門コミュニティでも情報収集ができます。
3.社内外のメンター確保
社内に信頼できる上司や先輩がいれば、定期的なキャリア相談の機会を作りましょう。自分が目指したいキャリアをどう形成していけばよいか、社会人の先輩に相談するという形がいいでしょう。
ただし「いまの会社を辞めて別の会社に行きたい」というと、トラブルになりかねませんので注意が必要です。転職経験のある知人にアドバイスを求めるのもいいでしょう。
具体例:Dさん(26歳、営業職)のネットワーキング活動
- ・転職エージェント2社と面談し、自らのキャリア目標について説明。具体的なポジション例を提示してもらう。あわせて自己PRの方法についてアドバイスを受ける。
- ・マーケティング関連の勉強会に月2回参加し、人脈を広げる。
- ・元上司とオンラインミーティングで相談する。
アクション5:転職活動
ここまでの準備を踏まえ、実際の転職活動を実行します。
1.転職目標の設定
転職希望時期、志望業界・職種、希望年収を明確に定める。それぞれの目標に対する達成基準を設定する。
2.スケジュール作成
履歴書・職務経歴書の作成期限を設定する。応募活動の開始時期を決める。面接対策の計画を立てる。
3.現職での並行活動
現職での成果を整理する(転職後も活かせる実績づくり)。なお、転職活動に備えた貯金を推奨される場合もあるようですが、20代の場合、基本的に転職先は前職の在籍中に決めておくべきでしょう。
具体例:Eさん(28歳、事務職)のWeb業界転職計画
- ・目標:1年後にWeb制作会社のディレクターとして転職。年収は現職から20%アップを目指す。
- ・スケジュール:1~3ヶ月目:Web制作の基礎知識習得、ポートフォリオ作成開始/4~6ヶ月目:転職サイトに登録、職務経歴書の作成/7~9ヶ月目:積極的な応募活動開始、面接対策の強化/10~12ヶ月目:内定獲得、現職での引き継ぎ準備
- ・並行活動:現職での社内Webサイト改善プロジェクトをリードする。
転職準備はキャリア形成の過程
20代後半での転職は、キャリアアップの大きなチャンスです。本コラムで紹介した5つのアクションプランを着実に実行することが、成功への近道となります。
重要なのは、転職準備そのものが、キャリア形成の過程として、現在の仕事にも良い影響を与える可能性があるということです。
自己理解を深め、新しいスキルを習得し、人脈を広げることは、転職の有無にかかわらず、あなたのキャリアを豊かにしていきます。
また、この準備プロセスを通じて、本当に転職すべきかどうかの判断材料も得られるでしょう。現職でキャリアアップができるのであれば、そのような選択もあるはずです。
焦らず着実に、前向きに行動を起こしていけば、必ず道は開けていくはずです。自分のキャリアに主体的に向き合い、充実した職業人生を築いていってください。