中高年層の転職が活発! その理由と転職時の注意点は?
よく「転職は35歳までに」と言われています。いわゆる「転職35歳限界説」ですが、現在は35歳以上の中高年層も転職を活発化しており、企業側もベテラン人材の採用を推進しています。その背景には何があるのでしょうか。
差別化や人手不足解消のためベテラン人材に期待
総務省「労働力調査」によると、2003年時点で転職者(仕事に就いている人のうち、1年前に別の仕事に就いていた人)の数は男女合計で約325万人でした。そのうち15歳~34歳の転職者が183万人(57%)だったのに対し、35歳以上の転職者は140万人(43%)でした。
これに対し2013年時点では、転職者は男女合計で約286万人。15歳~34歳の転職者が130万人(45%)なのに対し、35歳以上の転職者は157万人(55%)と過半数を占めました。10年前の数値とほぼ逆転していることがわかります。転職者の数は減少しているものの、その中における中高年層の比率は増えているわけです。
中高年層の転職者増加の背景にある要因としては、商品やサービスの移り変わりが急激になったこと、そして少子化による人手不足などが挙げられます。
現在、市場のフラット化やコモディティ化が進み、競合企業間で商品およびサービスの差があまり見られなくなっています。どの企業の商品(サービス)を買っても同じ品質という状況なのです。こうした中で少しでも自社製品・自社サービスを差別化するため、企業は資格や専門職を持った即戦力の人材を求めるようになっています。
また、こちらの記事にあるように、日本は現在、少子化による人手不足が懸念されています。新卒者を一から育てている余裕がない企業にとっては、中高年であっても即戦力となる人材がほしいわけです。また、少子化に伴い元気なシニア層も増えてきました。2012年に制定された改正高年齢者雇用安定法によって、定年の実質的上限も65歳まで引き上げられましたし、やがて70歳まで引き上げられる可能性も見えてきています。
そのほか、「転職がごく当たり前のものとなり、他社から中高年のリーダー人材を招くことに企業側の抵抗感がなくなってきた」、「バブル崩壊後の就職氷河期に不本意な就職活動を強いられた現在の35歳~40歳がリベンジ転職を始めている」などの要因も挙げられるでしょう。
中高年の転職者は経験が活かせる分野で勝負すべし!
このよういくつかの要因が絡み合って活況を呈している中高年層の転職ですが、35歳以上の人材が必ずしも転職に成功できるわけではありません。
例えば、中高年人材が評価されやすい分野と評価されにくい分野があることは念頭に置いておきましょう。例えば小売・販売業や事務職などはルーチンワークでこなせる業務が少なくないため、ベテランと若手の差が付きにくい分野です。そのため、企業も取り立てて中高年層がほしいというわけでもありません。
逆にメディカルや建設、不動産など業界やモノづくり系エンジニアなどの専門職は中高年層に有利。こういった分野では現場でしか身につけられないノウハウや微妙なコツ、現場で通じる“ツーカー”といったものが大いに評価されるからです。現場で研さんを重ねたベテランであれば、企業からも評価されやすくなります。
また、35歳以上になると確かに自分のキャリアや実績で誇りたい点も出てくるでしょうが、面接でそれを理由に給与引き上げを狙うことはほどほどにしておくべきです。交渉は業界の平均年収などを参考にして臨むとよいでしょう。
いかに転職市場が盛り上がっているとはいえ、若い世代の転職のように経験ゼロから働き始めることは難しいものです。自身が積み重ねてきたキャリアを活かせるような分野・企業を転職候補として定めるのが有効でしょう。(ライター:香川とも)