外国人労働者受け入れ増加の背景と、そのメリット&懸念点
近年、外国人労働者の受け入れに関する議論が活発です。従来は専門的・技術的分野を担う外国人労働者のみを奨励していましたが、外国人労働者を積極的に雇用しようという動きとなっています。なぜ政府はこのような方針へ転換したのでしょうか。そのメリットと懸念点も合わせて考えてみましょう。
外国人労働者受け入れの背景
2013年10月時点で国内の外国人労働者は約72万人に達しており、2008年から比べて約23万人も増えました。国籍別に見ると中国からの労働者が一番多く、次いでブラジル、フィリピンの順番になります。
外国人労働者の受け入れ促進が議論されている背景には、複数の要因があるようです。
- 少子化による若手労働者の不足
- 東日本大震災の復興への労働力不足
- 東京オリンピック施設建設への労働力不足
- 介護、家事労働者の不足
この中でも特に少子化による若手労働者の不足が大きな要因です。この状況は日本の労働人口の減少とともに、今後ますます深刻化していくでしょう。その上でさらに、東日本大震災が起き、復興が急務となりました。東京オリンピックの開催も決まり、建設・土木業界はさらに人手を必要とするようになったのです。
また、女性の社会進出が当たり前となり、家事労働力が必要になりました。これまで女性が担うことが多かった介護も専門家・専門事業者に頼ることが一般的になってきました。しかし、家事や介護は低賃金労働であることもあり、人手が不足しています。今後高齢化が進むに連れてこれらの労働力は必要性が高まるようになるでしょう。
外国人労働者受け入れ促進のメリットとは
外国人労働者が増えることのメリットとは何なのでしょうか。確認してみましょう。
労働力が補充されれば、人手不足で悩む業界にとっては大きな助けになります。飲食業界や建築・土木業界、介護業界などにその力が活かされることと予測されるでしょう。また、家事労働から女性が解放されることで、優秀な女性の社会進出を一層進めていくことができる可能性がありますし、親の介護によってキャリアが断絶するということも少なくなるはずです。
また、外国人にとっても日本で働くメリットは大きいです。自国で仕事がない、あるいは十分な賃金が得られない労働者が日本で働くことで、実家の家族に送金することができます。また日本で得た経験やスキル、資格などは、自国に戻った後でも役立つでしょう。
■外国人労働者受け入れに際しての懸念点
一方で外国人労働者を多く受け入れるに当たり、不安の声もあがっています。おもに下記のような意見が上がっています。
- 外国人労働者の雇用促進の前に、国内の女性や若者の活用を考えてほしい
- 外国人が増えることによって治安が悪化するのではないか
- 言葉の問題などをクリアしていない状態での受け入れてもスムーズに業務になじめないのではないか
- 弱い立場の外国人労働者を搾取するようなブラック企業が一層増えるのでは
- 日本の文化がわからない外国人労働者に家事労働や介護などができるか
このような懸念点を鑑みると、ただ単に外国人労働者を増加させるだけではトラブルも発生する可能性も考えられます。業務内容だけでなく、日本語や日本の文化・習慣を伝える機会も必要となるでしょう。また、外国人労働者が不当な扱いを受けないように、外国人労働者の雇用を促進する企業にも一定の基準が求められます。
もはやグローバル化は当たり前のものとなり、外国人と働くことは避けられそうにありません。ここで上げられた懸念点をどう解決していくかが、外国人労働者受け入れの成否を分けそうです。(ライター:香川とも)