「働く高齢者」の活躍が期待される背景とその懸念点
日本の高齢化社会が深刻化していることは、もはや周知の事実。そんな中、これまで「高齢者」として位置づけられてきた65歳以上の労働力を活用しようという動きが活発化しています。なぜ今、「働く高齢者」の活躍が期待されているのでしょうか? そして高齢者を雇い入れる上での注意点・必要な施策とはどういったことなのでしょうか? 具体的に考えてみましょう。
高齢者が働く社会になってきた背景
高齢者の雇用が期待されている理由はいくつかあります。そのなかでも大きな要因となるのは、以下の5項目です。
- 高齢化の進行
- 労働人口の減少
- 健康な高齢者の増加
- 労働意欲の高い高齢者の増加
- 年金受給年齢の引き上げの可能性
高齢化社会の深刻化するとともに、日本の労働人口はどんどん減少していきます。女性や外国人の雇用が進んだとしても、現在の産業規模を維持するのが難しいという予想もあるほどです。そんな中で、すでに業務知識や経験のある高齢者を活用していくことは、日本の産業全体を維持する上で重要なポイントとなるといわれています。
また、医療の進歩や健康意識の高まりなどにより、「65歳以上イコール老人」とはいえなくなってきています。中には自宅で老け込むことを嫌い、「外に出て働きたい!」と考える人もいるほどです。65歳以上であっても、心身ともに健康で社会でまだまだ活躍できる方が増加しているのです。
そして最後に、年金受給年齢の引き上げの可能性が高まっていることが挙げられます。年金支給を70歳から開始するように選択できる制度がすでに存在しますが、2014年5月には、これを75歳まで拡大を検討する案が厚生労働省から示されました。つまり、年金暮らしを開始する年齢が引上げられる方向性にあるわけです。将来的には、65歳で退職しても年金支給開始まで無給期間ができる可能性もあるでしょう。
このように、社会的に高齢者のニーズが高まっているという背景と、高齢者を取り巻く状況の変化の両面から働く高齢者の活躍が期待されているのです。
高齢者雇用が促進される上での企業側の注意点
これまでの企業の定年を引き上げ、65歳以上の高齢者を雇用する(雇用し続ける)に当たってはいくつかの注意が必要です。いくら元気に見えても、65歳を超えた方が20代の若者と同じように働けるわけではありません。また、高齢者の知識や経験にふさわしい職場・業種でなければせっかくの能力を活かすこともできないでしょう。働く高齢者の雇用に当たって、注意すべきを思われるポイントを挙げてみました。
- ・フレックス制度の導入
- ・適材適所な配置の検討
- ・高齢者向けの労災防止マニュアルの作成と順守
いくらスキルが高く元気だとはいっても、65歳の人が20代の若者と同じ仕事量をこなせるわけではありません。長時間労働は心身に負担をかけてしまうでしょう。そのため、高齢者に合ったフレックス制度など自由な時間の働き方を導入していく必要があると考えられます。
また、一般的に高齢者は力仕事やITに不慣れです。複雑なパソコン業務や体力重視の職場に配置しても、雇用側にとっても高齢者の側にとってもメリットがない結果になってしまいます。適材適所を意識した配置を検討しなければならないでしょう。
最後に、高齢者向けの労災防止マニュアルの運用を進めていく必要があります。いくら元気に見えるお年寄りでも身体機能は落ちています。若い時と同じように自動車の運転や工作機械の操作を行うことも難しくなるでしょう。高齢者および職場の安全を守るために、転倒防止や作業姿勢の改善(腰痛、疲労防止など)、視聴覚機能の補助(照明の明るさ、PC画面の拡大表示など)を配備していく必要があります。
高齢社会がごく当たり前のものになった現在、65歳以上の労働者がどんどん増加していくことが予想されます。きちんと整備した上で高齢者の雇用を進めていくことが、高齢者にとっても、社会全体にとってもプラスになるはずです。(ライター:香川とも)