「マタハラ」の問題点と防止の意義とは?
今、女性への新しいハラスメントとして「マタハラ」が問題になっています。マタハラとは、マタニティハラスメントの略。働く女性が妊娠や出産をきっかけに職場で嫌がらせを受けたり、解雇や自主退職に追い込まれたりすることなどを指します。
日本労働組合連合会の調べによると、妊娠経験のある女性労働者の4人に1人がマタハラを受けたことがあるといわれています。その一方で、問題の認知度はまだまだ低く、表面化しにくいという現状があります。マタハラの問題点とともに、なぜマタハラは防止されるべきなのか改めて考えてみましょう。
マタハラの4パターン
上記の通り、マタハラとは妊娠や出産をきっかけにして働く女性が嫌がらせを受けることです。「マタハラNET」では、マタハラを大きく4パターンに分けて紹介しています。
- ・昭和の価値観押しつけ型
- ・パワハラ型
- ・言葉によるいじめ・無視型
- ・追い出し型
「昭和の価値観押しつけ型」は、「子どもができたら家庭に入るものだ」「女性の幸せは仕事にはないぞ」などと価値観を押しつけてくるタイプです。悪意はないですが、世代のギャップや女性の力を活用するような社会的風潮についていけていないタイプです。「パワハラ型」は、妊婦や子育て中の女性社員に対し、過重労働などを強いるタイプのマタハラです。妊娠や育児で休んだり早退したりすることを許さない職場の風土から起こります。
「言葉によるいじめ・無視型」は、悪意を持って妊婦に接することを指します。「妊娠して楽してるよね」「迷惑なんだけど」などと言ったり、態度で示して無視したりすることをいいます。「追い出し型」は、「妊婦を雇う余裕はこの会社にはない」「他の社員に迷惑だろう」などと言って、解雇や退職奨励、配置転換、契約社員に対する突然の契約更新などを強いることです。
このように、悪意の有無にかかわらず、妊娠・出産をきっかけにこれまでと同じパフォーマンスで働けなくなった女性社員に対して、精神的・肉体的苦痛を与えるようなことは総じてマタハラと見なせるでしょう。上司や経営者からのマタハラだけでなく、同僚や同じ女性同士からも「妊娠して一人だけ楽をしている」などとマタハラ被害を受けることがあります。
マタハラの違法性
働きながら健康的に妊娠・出産・子育てをする権利は、労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などによって守られています。例えば男女雇用機会均等法の第9条「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」では、「事業主は、女性労働者が妊娠・出産・産前産後休業の取得、妊娠中の時差通勤など男女雇用機会均等法による母性健康管理措置や深夜業免除など労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由として、解雇その他不利益取扱いをしてはならない」と定めています。
また2014年10月23日には、病院に勤務していた女性が妊娠後に降格されたことについて、「妊娠がきっかけの降格は、自由意思に基づき女性が明確に同意した場合や、事業主側に特段の事情がある場合をのぞき、違法で無効」という判断が最高裁場所で下されています。
マタハラ防止を広める意義とは
このように、マタハラはセクハラやアルハラなどと同じく、倫理的にも法律的にもNGなものです。その防止に努めるのは、企業や働く私たち自身にとって当然のことと言えるでしょう。しかし、それ以外にもマタハラ防止を推進する意義があります。
例えば、現在の日本では労働力不足が叫ばれています。高齢者や外国人労働者の登用なども進められていますが、それだけでは不十分ですし、優秀な働く女性が妊娠をきっかけにキャリアを断絶させてしまうことは大変もったいないことです。妊娠をしてもキャリアを途切れさせずに働くことが可能な社会は、日本経済の発展につながるでしょう。
また、労働力不足の背景には深刻な少子化問題があります。「クビになるのなら生まない」、「降格されるから出産に踏み切れない」という女性の声を無視したままでは、少子化問題は解決しないでしょう。
そしてまた、「社員の個々人の生活やキャリア観に合わせた働き方」を社会や企業が奨励することで、女性はもちろん、男性も生き生きと働きやすい職場になっていくでしょう。私生活に不安のない人のほうが安心して仕事に打ち込むことができるのは、想像に難くありません。
マタハラ防止は決して女性のためだけのものではありません。働く女性はもちろん、男性にとってもプラスにつながるものですから、会社全体・社会全体で考えていかなけれならない問題と言えるでしょう。(ライター:香川とも)