「地方で働く」人が増加中? その背景にあるものとは?
3.11の東日本大震災以降、人々の働き方は大きく変わりました。特に、東京一極集中の労働状況が見直されつつあります。「毎日満員電車で通勤して高層ビルの中で深夜まで働くよりも、地方でゆったり暮らしたい」「地元での人間関係を大切にしながら働きたい」という思いを持っている人が増えているのです。
なぜこのように地方で働くことが見直されようとしているのでしょうか? そして、そのメリット・デメリットとはどんなことでしょうか?
地方で働こうと考える人々が増えた背景
首都圏にも大きな被害を与えた東日本大震災。これをきっかけに「自分が本当に大切にすべきものは何か」と考える人が増えてきました。震災以降に結婚するカップル、いわゆる「絆婚」が増加したこともそんな背景があってのことでしょう。
同様に、こうした「人とのつながり」や「人間関係重視」を働き方の基準にする人も増えました。「地元に帰って実家を継ぎたい」とUターンを決意する人、人間関係が希薄な都心で過ごしたくないとIターンをしたりする人が増えたのだと考えられます。
そしてまた、現在は「都心の方が豊かに暮らせる」というが崩れつつあります。年功序列で賃金が上がることはなくなり、生活コストだけがかかる首都圏よりも、家族や友人・知人と支え合って生きる地方の方が生活コストをおさえられて、結果的に豊かに暮らせると考える人が増えています。
さらに、ネット環境が整備されたことにより、必ずしも都心に暮らさなくとも仕事ができるようになったという点も大きいでしょう。地方に居ながらにしてビジネスの中心にいることが可能になったのです。
地方で働くことのメリットとは?
上記のような背景から、多くの人々が地方移住に注目し始めています。地方で働くという選択には大きく4つのメリットがあると考えられます。
- ・生活コストの削減
- ・Uターン、Iターン者への支援制度
- ・豊かな自然環境
- ・人とのつながり
・生活コストの削減
地方では一般的に土地代が安く、固定費を下げることができます。同じ金額を支払っても、田舎の方が広い住宅に住めるでしょう。家賃で浮いたお金を、他の楽しみにまわしたり貯蓄をしたりすることができるので、都心よりも豊かに暮らせるといわれています。
・Uターン、Iターン者への支援制度
過疎化が進む地域では、UターンやIターン者への支援制度を整備して移住者を増やそうとしています。空き家を無料・格安で貸し出したり、仕事を斡旋・紹介したりすることが多くの地方で行われています。地縁がない場所でも安心して暮らせるようなサポートが、自治体レベルで行われています。
・豊かな自然環境
きれいな空気や水、自然の豊かさを思う存分享受することができます。都会で騒音や空気汚染などに悩まされていた方も、地方では安心して暮らすことができるでしょう。また、自然が近い分、新鮮な野菜や海の幸に触れることもでき、毎日の生活が豊かになる可能性もあります。余暇には畑を耕したり、海に出たりと自然と共に暮らしていくこともできるでしょう。
・人とのつながり
一般論ですが、地方では近隣の人との交流がさかんです。季節の祭りやイベントなどで、人と人との支え合いを大切にしながら暮らしていくことができるでしょう。
地方で働くことのデメリットとは?
メリットが注目される一方で、地方ならではのデメリットもあります。地方の良さの裏側にあるデメリットはどんなことなのでしょうか。
- ・仕事が限られている
- ・これまでの人間関係がリセットされる
- ・娯楽と出会いが限られる
- ・子どもの教育が不安
ネット環境の整備により、地方でできる仕事の幅は広がりました。とはいえ、そもそも地方には企業が少ないので、都心に比べると業務の内容はまだまだ限られています。自身で起業するに当たっても職種が限られてくるでしょう。また、顧客企業と直接会わなければいけない営業のような業務の場合は地方にいることは大きなネックになります。
これまで築いてきた人間関係がリセットされるのも、仕事には大きな影響を与えるでしょう。ビジネスの人脈がいったんなくなるということでもあります。
生活面から見ると、ウィンドウショッピングや様々な料理店といった娯楽が限られます。どうしても人口が少なくなるので、人との出会いも首都圏よりは少なくなるでしょう。また、周囲に塾や予備校がない、通える範囲に進学重視の高校がない、といった子どもの教育面での悩みもあります。地域によっては、高校生のうちからから下宿しないといけない場合もあります。
地方で働くことにはメリットもデメリットもあります。Uターン・Iターンで地方への転職を考えている人は、自分はどんなふうに働きたいのか、どう生きたいのかを立ち止まって考えてみることが必要だといえそうですね。(ライター:香川とも)