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    「有給休暇の取得率70%」の目標達成に向けて 課題と展望

    2025年1月17日 転職の基本  -  転職ニュース

    有給休暇日本の労働環境において、有給休暇は労働者の権利として重要な役割を果たしています。しかし、その取得率は長年にわたり低迷を続けており、働き方改革の重要な課題となっています。

    有給休暇は単なる休息の機会ではなく、労働者の心身の健康維持や生産性向上にも寄与する重要な制度です。この制度の本質を理解し、適切に活用することが、より健全な労働環境の構築につながるのです。

    有給休暇制度とは?

    有給休暇とは、労働者が賃金を受けながら休暇を取得できる制度です。正式名称は「年次有給休暇」といい、労働基準法第39条に基づいて定められています。

    この制度の主な趣旨は、労働者の心身の疲労を回復させ、ゆとりある生活を実現することにあります。また、労働力の維持培養を図る目的もあります。

    有給休暇は、労働者の権利として法律で保障されており、使用者は原則として労働者が請求する時季に与えなければなりません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者は他の時季に変更することができます。

    有給休暇制度の経緯

    日本の有給休暇制度は、戦後の労働基準法制定以降、段階的に拡充されてきました。労働基準法が制定され、年6日の有給休暇の付与が義務付けられたのは1947年です。

    その後、1987年に最低付与日数が年10日に引き上げられ、1993年には継続勤務期間の要件が1年から6ヶ月に短縮されました。1998年には付与日数の増加ペースが速まり、6年6ヶ月で20日に達するよう改正されました。

    最近の重要な変更としては、2019年4月の働き方改革関連法の施行により、年5日の有給休暇取得が義務化されました。これは、有給休暇の取得促進を図るための重要な施策となっています。

    有給休暇取得の現状

    厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、日本の有給休暇取得率は着実に向上しているものの、まだ課題が残されています。

    2022年の有給休暇取得率は62.1%で過去最高を記録しました。この結果は、2019年の52.4%から約10ポイント上昇しており、働き方改革関連法の施行以降、着実に改善傾向にあることを示しています。労働者1人あたりの平均付与日数は17.6日で、そのうち実際に取得した日数は10.9日となっています。

    企業規模別では、1000人以上の大企業で65.6%、30〜99人の中小企業で59.8%と、規模が小さくなるほど取得率が低下する傾向が見られます。業種別では、「複合サービス事業」が74.8%と最も高く、「電気・ガス・熱供給・水道業」が71.4%で続いています。一方で、「宿泊業、飲食サービス業」は49.1%と最も低く、「運輸業、郵便業」も51.0%と低い水準にとどまっています。

    課題と展望

    有給休暇取得率の向上に向けて、企業には課題が残されています。

    人手不足と業務量過多

    厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」によると、48.8%の企業が「人手不足」を、41.3%の企業が「業務の繁忙」を有給休暇の取得促進における課題として挙げています。

    これらの問題に対処するためには、業務プロセスの見直しや効率化、適切な人員配置、そして必要に応じた採用活動の強化が求められます。また、AIやRPAなどのテクノロジーを活用して業務の自動化を進めることも有効な解決策となるでしょう。

    業務カバー体制の不足

    同調査によれば、36.3%の企業が「代替要員の確保」を課題として認識しています。この問題に対しては、業務の属人化を防ぐためのマニュアル整備や、クロストレーニングによる多能工化の推進が有効です。

    特に大企業と比べて取得率が低い中小企業では、経営資源の制約から有給休暇取得促進に苦慮しているケースが多いです。この問題に対しては、政府による支援策の拡充や、業界団体を通じた好事例の共有などが有効でしょう。

    従業員の意識改革

    有給休暇の取得率向上を妨げるものには、企業側だけでなく従業員側の要因も存在します。同調査によると、38.7%の企業が「従業員の意識」を課題として挙げています。この問題を解決するためには、経営層からの積極的なメッセージ発信や、有給休暇取得の意義に関する社内教育が重要です。

    最近の動向

    有給休暇制度をめぐっては、近年さまざまな新しい取り組みが見られます。

    柔軟な取得制度の普及

    厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、66.0%の企業が時間単位での有給休暇取得制度を導入しています。これにより、従業員はより柔軟に休暇を取得できるようになっています。

    特別休暇の拡充

    同調査によると、いわゆる「シックリーブ」など病気休暇制度を導入している企業は29.3%、ボランティア休暇制度を導入している企業は8.9%となっています。これらの制度は、従業員のワーク・ライフ・バランスの向上に寄与しています。

    積立休暇制度の導入

    失効した年次有給休暇を積み立てて、特定の目的で使用できる制度を導入する企業が増えています。同調査によると、積立休暇制度を導入している企業は25.7%となっています。

    ワーケーション制度の導入

    休暇と仕事を組み合わせる「ワーケーション」を、コロナ禍を機に普及したテレワークと有給休暇の柔軟な取得を組み合わせた制度として導入する企業も出てきています。具体的な導入率のデータは現時点で公的な統計がありませんが、今後の動向が注目されています。

    取得義務に違反すると罰金も

    2019年4月に施行された働き方改革関連法により、すでに年5日の有給休暇取得が義務化されています。この法律に基づき、年5日の取得義務に違反した場合、労働基準法第120条により、対象従業員1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。

    経済協力開発機構(OECD)の2020年のデータによると、日本の有給休暇取得率は52.4%で、フランス(100%)、ドイツ(99%)、イギリス(98%)などと比べて大きく下回っています。この差は、日本の労働文化や制度の特殊性を反映しています。

    政府は「過労死等の防止のための対策に関する大綱」において、2025年までに有給休暇取得率70%を目標として掲げています。有給休暇制度の適切な運用は、労働者の満足度向上や企業の競争力強化にもつながります。私たち一人ひとりが、この制度の本質を理解し、より良い労働環境の実現に向けて行動を起こすことが求められています。

     

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