進む朝方勤務とは? そのメリットと注意点
とかく働き過ぎと言われる日本では、深夜残業も珍しくありません。しかし連日の深夜残業では社員の疲労はたまる一方ですし、企業側としても残業代の支払いに逼迫するケースがあるようです。
そんな中、朝方勤務に注目が集まっています。始業前の時間を有効活用するこの方法は政府の支援も受けていますが、労働者としてはどんなメリットや注意点があるのでしょうか。整理していきます。
朝方勤務とは何か?
朝方勤務とは「残業ありき」の働き方を見直して、始業前の時間に業務を進めようという働き方です。業務の効率化や社員の健康管理の面から、導入を検討する企業が増えています。政府も長時間労働の見直しの観点から、朝方出勤を推奨しており、「労働時間等設定改善法」の指針改定を視野に入れて動き出しています。
海外においては朝方出社が一般的になっていることも、この動きを後押ししています。例えば、経済産業研究所が2011年3月に公表した調査によると、「午前8時前に仕事を始める正社員の割合」は日本では7.0%なのに対して、ドイツは46.7%、イギリスは20.6%となっています。そして、この数字に比例するように、「午前5時前に仕事を終える正社員の割合」は日本の3.7%に対して、ドイツ51.1%、イギリス36.7%となっているのです。
日本でも、実際に朝方勤務を導入している大手企業もあります。例えば伊藤忠商事は2014年5月から朝方出社を本格始動させました。長時間労働を削減し、業務の効率化を図ることを狙っています。試行期間を経た上での本格導入ということもあり、早朝の勤務では特別手当も支給や、朝ごはんとしてのヨーグルトなどが配られるなど、働きやすい爽やかな労働環境となっているそうです。
朝方勤務のメリットと注意点
労働者にとって朝方勤務にはどんなメリットや注意点があるのでしょうか。整理してみましょう。
【メリット】
- ・ダラダラと続く長時間労働から解放される
- ・深夜の仕事が減り、体調管理がしやすくなる
- ・夜の時間が自由になり、ワークライフバランスの改善が見込める
- ・朝は一般的に頭の回転が速いため、業務効率が上がる
朝方勤務にすることにより、深夜にまで及ぶ長時間労働が是正される可能性があります。これにより、体調管理がしやすくなり、ワークライフバランスが保たれる可能性が高まります。また、きちんと睡眠が取れていれば、基本的に朝のほうが脳が活発に働くと言われています。1日の労働で疲れ切ったままダラダラと深夜労働を続けるよりも、業務効率が上がる早朝に業務を集中したほうがよいというわけです。
【注意点】
- ・残業代を削減され、無賃労働になる可能性がある
- ・労働する時間が朝に移っただけで、拘束される時間は変わらないことも
- ・残業も減らせず、早朝勤務も加わり、一層長時間労働になる
- ・低血圧など、朝方勤務が合わない社員への配慮が必要
- ・育児や介護の問題で家庭と仕事との両立が難しくなる場合も
まず懸念されるのが、企業が「残業代を払わないようにするために、朝方勤務を導入する」ことです。伊藤忠商事のように、朝方勤務に対しても特別手当を支給することが確約されていればこの問題はクリアできますが、残業代に頼って働いている人にとっては、朝方勤務が不利な働き方となってしまう危険性もあるでしょう。
また、早朝にも労働するようになっただけで、結局拘束時間は変わらなかったり、むしろ一層増えたりすることも考えられます。さらに、体調的に朝出社することが厳しい社員や、保育園の送り迎えや介護などで朝が多忙な社員にとっては、朝方勤務が導入されることによりかえって働きにくくなることも考えられます。深夜残業是正に手放しに喜ぶのではなく、労働者にとって有効な働き方になるよう見守っていく必要があるでしょう。(ライター:香山とも)