未来の働き方? 注目を集める「パラレルキャリア」
近年、これまでの働き方が大きく見直されるようになり、終身雇用で一生同じ企業で働き続けるという時代は終わりつつあると言われるようになりました。数社転職したり、フリーランスになったり、育児中には時短勤務をしたりと、働き方はどんどん多様になっています。
そんな多様性の中から最近登場してきた働き方として、「パラレルキャリア」というスタイルがあります。自身の人生をより幅広いものにしうるパラレルキャリア。どういった働き方で、どんなメリットが期待できるのか、探っていきましょう。
パラレルキャリアとは何か?
「パラレルキャリア」とは、“もうひとつの仕事”を持つということを意味します。副収入を得るという目的が多い「副業」とは異なり、もうひとつ別のキャリア・名刺を同時並行的に(=パラレルに)獲得するという意味合いがあります。
パラレルキャリアでは、企業での仕事中心の生活というものから離れて「好きなことを仕事にする」、「楽しい日々を送る」など多様な生き方、働き方を評価する世代に特に広がりを見せています。「生活のためにお金を稼ぐ」という概念から離れて、自分を磨き、心を豊かにしたいと考える若者が、この働き方の支持者となっています。主に、休日や就業時間後を利用してパラレルキャリアの時間をつくりだしているようです。また金銭的に豊かになることが目的ではないため、ボランティアやNPO法人などで働き、収入が発生しないケースがあります。
パラレルキャリアが注目されるようになった背景
パラレルキャリアのニーズが高まった背景としては、人々の労働に対する価値観がチェンジしたことや、企業側の変化があります。下記のように、大きく5つの背景が挙げられます。
- ・終身雇用制度の形骸化
- ・「好きなことを仕事にしたい」というニーズの高まり
- ・副業や兼業など、もうひとつのキャリアを持つことを受容する企業の登場
- ・多彩なキャリアを持つ人からのアイデアに期待する、企業側の課題意識の強まり
- ・企業内にしばられない人脈構築への評価
いくつかの企業では、多彩なキャリアを持つ人への期待感を高めつつあります。例えば、日本IBMや東芝、日立製作所などが、副業を容認しています。このように、社外での労働を認めていく企業は今後増えていくだろうと見込まれます。これは単一の企業の中にいるだけでは生まれ得ない発想や人脈を培い、最終的には自社に還元してほしいと期待しているのだと考えられます。
パラレルキャリアのメリット
会社員として忙しく働きながら、パラレルキャリアをするメリットとはどういった点にあるのでしょうか?
・多様な立場を体験できる
企業の一員として支持を受けて働く一方で、NPO法人やボランティアの組織の中で自分の頭で考え行動したり支持を出したりする立場も体験することができます。多様なものの見方ができるようになるでしょう。
・「働くこと」や「利益」についての概念を捉え直すことができる
NPO法人への所属やボランティア団体の運営などでパラレルキャリアを実現する人もいます。こうした活動は非営利ですから、利益を上げることを目的としません。企業とは異なる組織のあり方を体験することで、働く意味を捉え直すことができます。
・企業という組織にとらわれないため発想や人脈が豊かになる
企業内だけでは培えない経験や人脈を得ることができます。
・企業にとらわれないため、心的な余裕が持てる
企業での業務や人間関係がうまくいかずに、メンタルの疾患を患う会社員が後を絶ちません。ひとつの居場所しか持てないと、「逃げ場がない」と追い詰められるような思いをしがちです。企業とは他に社会に接続する他の場があれば、心的な余裕が持てるようになるでしょう。
・時間を大切に行動できるようになる
企業で働いていない時間はすべてパラレルキャリアにかけられる時間となります。そのため、ダラダラと残業しない、休日も有意義に過ごせるなど時間を上手に使おうとする意識が高まります。
実はGREE株式会社やインスタグラムなども、パラレルキャリアから生まれた企業です。パラレルキャリアは、個人にとってだけでなく、社会を豊かにするという意味でも魅力的な働き方であるといえそうです。(ライター:香山とも)