LGBTを支援する企業の増加とその背景
近年、一般にLGBTと呼ばれる性的マイノリティの人々の受け入れ、支援を表明する企業が増えてきています。就職活動での差別的な扱いを撤廃するのはもちろん、LGBTの人々が働きやすいような労働環境の整備を進めている企業も登場しているのです。
このような動きは、欧米諸国から日本企業でも徐々に見られるようになってきました。背景にある社会の情勢とはいかなるものなのでしょうか? そして、どういった企業がLGBTの人々を含むタイバーシティ化に乗り出しているのでしょうか?
LGBTとはどういった人々か?
LGBT(エル・ジー・ビー・ティー)とは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシャル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字を取りつくられた性的マイノリティの人々を指す総称です。
これまで、LGBTの人々の多くは、その生き方や性的嗜好を周囲から理解されず、苦しんできました。労働の場においては、LGBTであるというだけで面接時にあからさまな差別を受けたり、あるいはLGBTであることが分かったために解雇されたりといったこともかつては当たり前のようにありました。
また、就職活動に当たっては、自分自身のジェンダーとは異なる服装やふるまいを求められてしまうことがあります。就職後も同僚から「何で結婚しないの?」、「もしかしてそっちの気があるの?」といった言葉を浴びせられたり、同性婚では家族手当や結婚手当などの福利厚生が受けられなかったりするケースもあるようです。
LGBT支援の背景
しかし、こうした苦境の中から、LGBTの人々が声を挙げるようになり、多くの人々が差別や偏見で悩んでいることが明らかになってきました。各国で同性婚を認める動きが進み、アメリカ合衆国でも州によって異性のカップルと同様の婚姻形態が受理されています。
こうした世界的な情勢や、LGBTの人々の声が結実し、日本でも2015年に東京都渋谷区で、同性カップルに対して「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」を発行することが承認されたのです。この施策には賛否ありましたが、LGBTの人々の権利に行政側が取り組んだという意味で大きな潮流であると注目されました。
こうした流れを受け、ビジネス界でもLGBTの人々に対して門戸を閉ざす考え方を撤廃しようと動き始めました。マジョリティ側の視点を押し付けるのではなく、ダイバーシティ(多様性)の観点でLGBTの人々も働きやすい職場をつくる動きが生まれています。さらに、若年労働者の減少が国全体の問題となるなかで、「LGBTであるから」という理由で雇用の道を奪ってしまうのは大きな損失だという意見も弾みとなりました。
企業もLGBTを支援
企業も具体的なLGBT支援を表明し始めています。例えばアップルのティム・クックCEOは自身がゲイであることを表明し、同社が社内外の性的マイノリティを支持する立場であると明確に宣言しました。その他にもアメリカではセールスフォース・ドットコムやウォルマート・ストアーズなどの大手企業が、一部の保守的な州で検討される同性愛者らの差別につながりかねない法案に反対し、事業のボイコットを検討しています。
同様に、日本でも以下のような企業がLGBTの人々の受け入れ、支援を表明しています。
ゴールドマン・サックス
LGBTの学生を対象に就職説明会を開催しています。社内のLGBTグループの代表が福利厚生などを解説するほか、同居1年以上のパートナーを「ドメスティック・パートナー」として会社に届け出ることで、同性間でも異性同士の夫婦と同様の福利厚生を受けられるよう整備しています。パートナーを会社が契約する団体生命保険の受取人に指定することも可能なほか、働いていないパートナーの国民健康保険料の相当額を負担する制度も始めています。
LUSHジャパン
LGBTのカップルにも結婚祝い金を支給し、結婚休暇・介護休暇などを取得できるようにしました。また、採用試験においても、エントリーシートに性別の記入欄を廃止し、ジェンダーに関係なく受け入れる姿勢を示しています。
大企業が率先してLGBTを受け入れる会社をつくることで、社会全体に性的マイノリティを受け入れる動きが生まれつつあるといえるでしょう。(ライター:香山とも)