増える女性起業家、その背景と課題とは?
労働人口が減少するなか、国では「すべての女性が輝く社会」を実現するための施策を進めています。また、2013年には安倍内閣の指針として「日本を米国のようにベンチャー精神あふれる『起業大国』にする」と明言されました。これらの2点から、メディアでは女性起業家が取り上げられる機会が増えています。注目される女性起業家台頭の背景と、未だ残された課題について考えてみましょう。
女性起業家が増加する背景とは?
待遇改善によりビジネスでの男女平等が進んだといっても、やはり結婚や子育てで働きたくとも働き続けられない女性少なくないです。そうした中でも、女性たちが起業という道に注目しはじめています。背景にあるのは何でしょうか?
自分の働きがいを重視する価値観
「結婚したら家庭に入る」、「子どもが産まれたら育児に集中する」…といった、これまでの女性像にとらわれない女性たちが増えています。もちろん家庭も大切にしたいけれど、社会とのつながりや自分の働きがいも大事にしたい…そんな気持ちを持つ女性の増加が起業増加の一因にはあるようです。ネイルサロンやカフェの開業、サロネーゼとして自宅でお教室を開くなど、高収入になるために起業するというよりは、やりがいや生き甲斐を求めて起業する女性が増えています。
資金面の負担軽減
これまでは「起業する」というと、「私財をなげうって行う」というイメージがありました。しかし、2006年の法改正により、現在では資本金1円から起業できることとなっています。また、国が起業をバックアップするという傾向も強まっています。
バーチャルオフィスを借りれば低コストでオフィスの住所を取得でき、SNSで宣伝費用をおさえることもできるなど、事業運営にかかる資金が下がっているため、より起業しやすくなっていると捉えられるでしょう。
情報とノウハウの取得が容易になった
これまでは、起業のプロに聞かなければわからなかった起業ノウハウがインターネットを通じて取得できるようになりました。また、情報ツールの普及により、若手女性起業家などを目の当たりにし、「自分でもできるかもしれない」と触発されるといったこともあるようです。情報入手のしやすさから、起業へのハードルが下がり、女性起業家が増加したと考えられます。
女性向け市場の増大
一般的に「消費行動を決めるのは8割が女性」だといわれています。家庭においても女性が財布を握っていることが多く、女性のニーズが理解できている女性起業家は、それだけでマーケットに強みがあるのです。実際に起業のなかでも一般消費者向けの事業を立ち上げる女性約25%と最も多いことがわかっています。(日本政策金融公庫総合研究所「2013年度新規開業実態調査」の結果から)
女性起業家をめぐる今後の課題とは?
とはいえ、男女問わず起業に対するハードルはまだまだ高いようです。廃業してもリスクを最小限にとどめられる、「小さな起業」という経営手法の認知が必要です。日本政策金融公庫総合研究所「2013年度新規開業実態調査」によると、女性起業家ならではの悩みとして特に以下の3点が挙げられています。
- 経営の相談ができる相手がいないこと
- 業界に関する知識の不足
- 家事や育児、介護等との両立
女性起業家は、他の起業家や業界の人と知り合う機会が不足し、経営に行き詰まるケースが少なくありません。家事や育児などのプライベートと両立しなければならないため、男性起業家よりも人脈開拓に割ける時間がないという面もあります。雇用者・被雇用者を含めた、働く女性全体に対する支援が必要とされるでしょう。
女性起業家が増えることで、新たなビジネスの創出、それに伴う市場全体の活性化、雇用創出などが期待できます。今のうちから女性起業家が活躍しやすい環境を作ることが、『起業大国』日本の実現には必要不可欠と言えるでしょう。(ライター:香山とも)