「子連れ出勤」の検討に つくば市が作成した「基本マニュアル」が役立つ
つくば市は、子育て世代の働き方を支援するために「つくば市型子連れ出勤基本マニュアル」を2018年3月に作成し、2019年3月に最終更新しました。
このマニュアルは、子育てと仕事の両立を目指す企業や従業員に向けた具体的なガイドラインを提供し、地域全体での子育て支援の促進を図っています。今回は「子連れ出勤」検討の基本情報として、このマニュアルの概要を紹介します。
つくば市の取り組みの概要
つくば市はこのマニュアルで、子連れ出勤の定義や目的、メリットを明確にし、導入に向けた準備や研修、具体的な実施方法などを詳細に解説しています。特に、0歳から1歳半程度の子どもを対象とした子連れ出勤の導入が推奨されており、安全面や業務効率の観点から注意点も示されています。
マニュアル作成以降、つくば市は子連れ出勤の普及に努めており、2023年3月には導入を検討する企業向けに簡易版のリーフレットも公開しています。これらの取り組みは、少子化対策や女性の活躍推進、働き方改革の一環として位置づけられ、地域の企業や労働環境に影響を与えています。
外部リンク|つくば市|つくば市型 子連れ出勤 基本マニュアル (PDFファイル: 1.2MB)
以下に、このマニュアルの各章について詳しく解説します。
子連れ出勤の定義と目的
最初に書かれているのは、子連れ出勤とは何を指すのかということです。
子連れ出勤とは
子連れ出勤は、職場に子どもを連れて行くことで、育児と仕事を両立させる新しい働き方です。これにより、育児中の親が職場での業務を継続しながら、子どもとの時間を大切にすることが可能になります。特に、テレワークやフレックスタイム制度が普及する中で、柔軟な働き方として注目されています。
この背景として、日本では少子化が進行しており、若い世代の労働力確保が急務となっています。また、育児休業後の復帰率が低いことも問題視されています。そこで、子連れ出勤という働き方を推進することで、育児と仕事の両立支援を強化し、労働市場への参加を促進することが狙いです。
マニュアルの目的
このマニュアルは以下の目的を持っています。
- 育児と仕事の両立支援:育児中の従業員が安心して働ける環境を提供し、仕事と家庭生活のバランスを取ることを支援します。
- 企業文化の変革:子連れ出勤を通じて、多様な働き方を受け入れる企業文化を醸成し、従業員満足度を向上させます。
- 地域活性化:地域全体で子育て支援に取り組むことで、つくば市自体の魅力向上にも寄与します。
子連れ出勤のメリット
子連れ出勤には、従業員にとってのメリットのみならず、企業にとってのメリットもあります。
従業員へのメリット
- ストレス軽減:職場で子どもと一緒にいることで、親は安心感を持ちつつ仕事に集中できます。
- 復職支援:育休明けにスムーズに職場復帰できる環境が整うことで、離職率が低下します。
- 柔軟な働き方:フレックスタイムやテレワークと組み合わせることで、自分のライフスタイルに合った働き方が可能になります。
企業へのメリット
- 人材確保:子育て支援制度が充実している企業は、求職者から高い評価を受けやすくなります。
- 生産性向上:従業員が安心して働ける環境は、生産性向上にも寄与します。
- ブランド価値向上:地域貢献や社会的責任(CSR)への取り組みとして評価されることがあります。
導入手順
子連れ出勤制度の導入手順として、以下のステップが整理されています。
環境整備
子連れ出勤を実施するためには、安全で快適な環境が必要です。
- 専用スペースの確保:子どもが遊べるスペースや休憩室など、安全な場所を設けます。
- 設備の整備:おむつ替え台や授乳室など、必要な設備を整えます。
社内ルールの策定
導入に際しては社内ルールを明確にすることが重要です。
- 利用条件:対象となる従業員や年齢制限について明記します。
- 勤務時間の調整:フレックスタイム制度との併用について明確なガイドラインを設けます。
従業員への周知
導入後は従業員への周知活動が重要です。社内説明会やパンフレット作成などで情報提供し、理解と協力を得るよう努めます。
実施事例
つくば市では、子連れ出勤に関する取り組みを実際に行っています。具体的には、2018年頃から「子連れ出勤モデル事業」を開始し、市内での子連れ出勤を推進してきました。
また、近隣のつくばみらい市は、2023年12月に職員が子どもや孫を連れて出勤する「子連れ出勤」を正式に導入しました。この制度は、小学6年生までの子どもや孫を連れて出勤できるもので、伊奈庁舎・谷和原庁舎・教育委員会棟・保健福祉センター・みらい平市民センターに勤務する職員が利用可能となっています。試験導入期間には、職員15人と子ども18人が制度を利用し、本格導入に向けて準備を進めました。
最近では、茨城県東海村の鈴木ハーブ研究所が2024年2月に、親子出勤(子連れ出勤)のテスト運用を実施しました。本社と配送センターの2か所で実施され、8名の従業員が利用。キッズスペースやワーキングスペースを設置し、子どもの様子を見ながら仕事ができる環境を整えました。配送センターでは、子どもたちが職場体験をする機会も設けられました。
実施上の注意点
導入にあたっては以下の注意点があります。
- 安全管理:職場内で子どもが安全に過ごせるよう配慮することが不可欠です。
- 業務への影響:業務に集中できる環境づくりとともに、周囲への配慮も必要です。
- 家族との合意形成:家族との話し合いによって理解と協力を得ることが重要です。
地域社会にも良い影響
「つくば市型子連れ出勤基本マニュアル」は、地域全体で子育て世代を支援し、新しい働き方として注目される「子連れ出勤」を推進するための重要なツールです。つくば市のウェブサイトには「子連れ出勤の導入に向けて(リーフレット)」とともにマニュアルが掲載されていますので、詳しくはそちらを参照してください。
企業はこのマニュアルを参考にしながら、自社に合った形で導入・運用していくことで、従業員満足度や生産性向上につながるでしょう。この取り組みは地域社会全体にも良い影響を与えることが期待されます。今後、このような柔軟な働き方が広まり、多様なライフスタイルが受け入れられる社会になることが望まれます。