新しい組織の形「ホラクラシー」ってなに?
突然ですが、「ホラクラシー」という言葉を聞いたことはありますか? ホラクラシーはIT企業を中心に導入が進んでいる、新しい組織の考え方です。これまで縦社会的な企業で慣れ親しんできた日本人にとっては驚くようなこのマネジメント制度。そのホラクラシーの概要と導入のメリット・デメリットを考えていきます。
ホラクラシーとはなにか?
ホラクラシー(Holacracy)は、「柔軟な組織」「効率的な組織運営」「役割の明確化」「主体性の強化」などを目的にした新たな組織の形です。ヒエラルキーやピラミッド型組織とは真逆の言葉として認識されており、序列がない組織を意味します。つまり、端的に言えば「上司や部下という関係性がない」というのが特徴なのです。ホラクラシーの企業では、組織をこまかくグループ分けして意思決定と実行を行っていきます。対等な立場の人たち同士が役割分担をし、自走し続ける組織といえます。フランスやドイツ、オーストラリア、イギリスなどの企業やNPOで導入が進んでおり、日本でも複数の企業が実践しています。
【ホラクラシー型組織を取り入れている企業】
- ザッポス
- Airbnb
- エバーノート
- ダイヤモンドメディア など
ホラクラシーのメリット・デメリット
ホラクラシーを取り入れるメリットやデメリットはどういったことなのでしょうか。
ホラクラシーのメリット
・個々の社員の自立
上司からいわれたことを実践するという仕事のスタイルではないので、一人一人が自立します。個々が創造し、実行に移し、評価するためのプロセスを常に保てるよう意識するようになります。また、自己責任能力も高まります。
・多様性の確保
それぞれが意見を出し合うことで成立する組織のため、インプットやアウトプットが多様になり、これまでになかったような創造性あふれる経営ができます。
・意思決定が早まる
ピラミッド型の組織のように上司に承認を取っていく必要がないため、基本的に意思決定が早まります。特にIT・ウェブの業界でこのメリットが顕著に生かせるでしょう。
・人間関係のストレスの軽減
全員が同僚として平等なので、パワハラやセクハラといった上下関係に根差したトラブルに悩むことはなくなるでしょう。
・メンバー全員の当事者意識が高まる
全員が意思決定にかかわるので、当事者意識が育ち、「長期的な視点でみたらどういう決断や実行するのがふさわしいか」を考えるようになっていきます。個々の成長を促すことができるといえるでしょう。
ホラクラシーのデメリット
・意思決定を分散させるための下準備が大変
グループごとに意思決定していくには、そのための情報共有が欠かせません。そのための下準備に手間がかかる可能性はあります。
・ホラクラシー組織に向かない人もいる
ホラクラシー組織のメンバーとして活躍するには自己責任能力も必要ですし、意思決定する力も不可欠です。そのため、自分で判断することなどを望まない人にとっては、やりにくさを感じずにはいられません。ホラクラシーに馴染めるような適性が必要とも言えるでしょう。
・個々人の自律・自立、自己管理が必要不可欠
ホラクラシー組織には、常に自律・自立的に考えて、行動することが欠かせません。逆を言えば、自主的な活動に手を抜く人が出てしまうと、組織全体のバランスが崩れる危険性も秘めています。
ホラクラシー型組織は、従来の縦型組織を根幹から覆すマネジメントです。企業によっては慎重に導入可否を吟味することとなるでしょうから、今後、ホラクラシー型組織が広がりを見せるかどうかは未知数です。しかし、ホラクラシーへの適性やメリット・デメリットを踏まえ、上手に活用することができれば新たな価値を創造することができると考えられます。今後、先進事例から学んでいこうとする企業が増えていくことでしょう。(ライター:香山とも)