「イクボス」が会社のイクメンを増やす?
育児に積極的な男性=「イクメン」という言葉が普及し、男性も積極的に育児に参画したいと表明するようになってきました。男性が育児休暇を取得する制度を整えている企業も確実に増えています。
しかし、男性社員が子どものことで休暇を取得したり、時短勤務を認められたりするのはまだまだ一般的ではありません。「出世や評価に影響するのでは」という思いから、育児に消極的になる男性社員もいるようです。そんな組織を変えるべく登場したのは、「イクボス」というイクメンを推奨する管理職(ボス)の存在。イクボスは、社員の育児や企業にどんな影響を与えるのでしょうか。
イクボスとはどんな管理職のことか?
イクボスとは、「男性の従業員や部下の育児参画へ理解のある経営者・管理職(ボス)」のことです。最近では、タイバーシティや女性の活躍などの観点なども広がりをみせているため、多様なバックグラウンドを持つ社員を理解して、育児へ理解を示すボスのことを指すワードとしても使われるようです。例えば、自分自身が子どもの成長を見守ることができなかったから、若い男性社員やワーキングママには積極的に育児休暇を取るように促すようなボスのことを指します。
「男性の育児」を取り巻く現状
イクメンという言葉は生まれましたが、子育てに積極的にかかわろうとする男性が直接・間接に様々な圧力を受ける事例もあります。具体的には、
- 子育てのための制度利用を認めてもらえなかった
- 「育休を取ればキャリアが傷つく」などと言われた
- 子育てのための制度利用をしたら嫌がらせをされた
などです。こうした圧力は「パタニティ(父性)・ハラスメント」または「パタハラ」と呼ばれます。パタハラ経験者は、全体の約1割程度だと言われています。
イクボスがもたらす影響
イクボスはこうしたイクメンを取り巻く状況を打開する存在として注目されています。イクボスは、社員にとっての影響、企業にとっての影響、社会にとっての影響を持っています。
【社員に対しての影響】
- 育休を取りやすい雰囲気を職場に生み出してくれる、育休の取得を認めてくれる
- 「子どもが風邪をひいた」など突然のトラブルに理解を示してくれる
- 育児に考慮した人事配置をしてくれる
【職場においての影響】
- 子育てと仕事を両立できると感じた社員が会社に定着するようになる
- 多様なバックグラウンドを持つ社員を受け入れる雰囲気が醸成される
- 個々の社員が我慢を無理強いされなくなるため、社内の風通しがよくなる
- 社員の満足度が高まり、会社への貢献度が上がる
- 育児に対しての制度も理解も整った企業と評価され、企業の人気が高まる
【社会への影響】
- イクメンがさらに増え、夫婦で子どもを育てる風潮が強まる
- 女性の負担が軽減し、社会で活躍する女性が増加する
- 労働人口が増え、経済的な発展が見込める
イクボスに求められる素養とは
イクメンなどを増やしたいと考えたところで、「現任の管理職を一掃して、イクボス的な考え方ができる人を抜擢する」のは現実的ではありません。現在いる管理職にイクボスになってもらうことが重要です。そのためには、どんな考え方が必要になってくるのでしょうか。
・社員が休んでも大丈夫なフォロー体制を組んでおく
育児では突発的なトラブルが発生するもの。社員が休んでも、残りの社員でフォローできるくらいの余裕は常にもつようマネジメントしておきましょう。
・イクボス自身もフォローに回る
育休や子育ての突発的な出来事で休みを取得する社員がいると、周囲の社員の負荷が増加することもよくあります。フォローする社員の負担感が増大しすぎないように、イクボス自身が常にサポートに入れるようにしておきましょう。
・それぞれが抱えている背景に寄り添う姿勢を持っておく
プライバシーを損なわない程度に、社員が抱える育児や家庭の悩みなどについて把握しておきましょう。個々の社員が抱えている問題や大変さに寄り添って、適正に業務を配分する必要があります。社員とのコミュニケーションがより欠かせなくなるといえるでしょう。