建設業における「女性活用」の必要性と課題解決への取り組み
建設業界は長らく男性中心の職場とされてきましたが、少子高齢化や労働力不足の深刻化に伴い、多様な人材を活用する必要性が高まっています。また、女性の参入を後押しする施策が進む中で、実際の環境整備や働き方改革が業界全体で求められています。
今回は、なぜ建設業で女性活用が欠かせないのか、その背景を整理した上で、現在進行中の取り組みや課題、さらに解決策を解説します。これから建設業を目指す女性にとって、業界の現実を知るきっかけとなる内容を目指します。
なぜ建設業で女性活用が欠かせないのか
建設業において女性活用が必要な理由について整理します。
1.労働力不足の深刻化
建設業界は少子高齢化の影響を大きく受けています。国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について」によると、2023年時点で建設業に従事する人の約36.6%を55歳以上が占めているとのことです。特に技能職においては世代交代が進んでいないため、労働力不足が深刻な問題となっています。
同じ資料によれば、29歳以下の若年層の割合は約11.6%にとどまっており、次世代を担う人材の確保が急務です。このような状況から、女性の活用は喫緊の課題とされています。
2.多様性による職場の活性化
多様な人材が働く職場は、新しい視点やアイデアが生まれやすくなります。女性特有の細やかな気配りやコミュニケーション能力が活かされることで、現場の管理や設計業務が円滑に進む場面も増えています。これにより、建設業界全体の生産性向上が期待されています。
3.社会的責任と企業イメージの向上
SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資が注目される中で、男女共同参画社会の実現は企業の評価にもつながります。女性活用を進めることは、単なる労働力不足の解消だけでなく、企業の競争力や社会的責任の向上にも寄与します。
女性活用の取り組みの経緯と現状
建設業における女性活用の取り組みは10年以上続いており、成果も出ていますが、依然として課題も残っています。
1.国の施策と進展
女性活躍推進は国土交通省を中心に進められています。2014年に策定された「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」は、建設業界における女性の活用を促進するための具体的な施策をまとめた計画です。
この計画は、国土交通省と建設業の5団体が共同で策定し、女性技術者や技能者の数を5年後に倍増させることを目指しています。具体的には、女性専用のトイレや更衣室の整備、作業環境の改善、企業による採用数値目標の設定などが含まれています。
「けんせつ小町キャンペーン」も2014年に開始された取り組みで、建設業で働く女性を応援し、その活躍を広めることを目的としています。特にSNSを活用した情報発信やセミナーなどが展開されており、若い世代の女性に建設業の魅力を伝えることが重視されています。
2.現場での環境改善
近年では、ICT技術を活用した作業効率化が進み、重労働を軽減する動きが見られます。特に建設機械の自動化や遠隔操作技術の導入は、女性の参入を後押しする大きな要因となっています。一方で、中小企業ではこうした整備が進まない現場も多く、地域によるばらつきが課題です。
3.女性従事者の増加と課題
国勢調査によると、女性技術者や技能者の数は2010年から10年間に約85.1%増加し、特に設計や施工管理分野での活躍が顕著です。具体的には、女性建設技術者は2010年の約2万4700人から2020年には約4万5710人に増加しました。
しかし、企業規模や地域によって環境整備の進度には差があり、全体的な成果には依然として課題が残っています。具体的には、女性専用のトイレや更衣室の整備が不十分な現場も多く、働きやすい環境を整えるための取り組みが求められています。
課題と解決策
女性活用の進展には多くの課題がありますが、同時にそれを解決するための取り組みも進んでいます。
1.現場環境の整備不足
多くの現場で女性専用トイレや更衣室が不足している状況があります。また、資材運搬など力仕事が求められる場合には、安全配慮が十分ではない場合も見受けられます。この課題に対して、企業は軽量化された資材や安全器具を導入し、環境整備を進める必要があります。
2.働き方改革の遅れ
特に中小企業では、週休2日制の導入や長時間労働の是正が遅れています。女性がライフステージに合わせて柔軟に働ける環境を整えることが重要です。
3.キャリア形成の壁
女性技術者や技能者がリーダー職に就くケースは少なく、結婚・出産後の復職支援も十分とは言えません。企業は、技術スキルを磨くための研修制度や、復職支援プログラムを導入することで、女性がキャリアを継続しやすい環境を作るべきです。
4.社会的イメージの改善
建設業界は「体力勝負」のイメージが強く、女性には不向きだという誤解が広まっています。これを解消するために、女性が活躍する事例を積極的に発信することが重要です。
女性が描く建設業の未来
建設業界における女性活用は、労働力不足の解消だけでなく、業界全体の活性化にもつながります。これから建設業界を目指す女性には、挑戦を通じて新たな可能性を切り開いてほしいと思います。
企業や国の支援制度を活用しつつ、自分のキャリアを主体的にデザインしていくことが鍵となります。建設業界での挑戦は、社会に新しい価値を生み出すだけでなく、自身の成長にもつながるはずです。未来の建設業を支える一員として、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。