建設業界で増える「けんせつ小町」とは?
現在、建築業界では「けんせつ小町」が注目を集めています。「けんせつ小町」とは、建設業界で働く女性たちのこと。彼女たちが注目を集める背景には、建設業界の深刻な人出不足があります。男性従業員だけでは、なかなか業界を支えていけないという不安が顕在化してきているのです。
そんな中で登場した「けんせつ小町」のがです。「けんせつ小町」の現状と課題とは、どういったことでしょうか。また、「けんせつ小町」が働きやすいように、実際にどんな取り組みがなされているのかも見ていきましょう。
「けんせつ小町」とは? その現状と課題
国土交通省は2014年8月に「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」と題した行動計画を策定しました。その中で、女性技術者・技能者の数を5年で倍増させる目標を掲げています。これを受けて、建設業界でも女性の採用が活発化。2014年以降、女性の技術系社員の採用人数が大きく増加するなど、業界全体で女性活躍を盛り上げています。「けんせつ小町」というネーミングが生まれたのも、こうした取り組みの一環です。建設業界で働く女性たちを「けんせつ小町」と名付け、注目度を上げ、現場の待遇を改善していこうという動きなのです。
一方で、「けんせつ小町」を取り巻く課題があることも事実。女性専用のお手洗いや更衣室がない、休みが不定期のため家庭との両立が難しい、女性上司を望まない社員もいる……など、クリアしなければいけない課題は、設備面・制度面・人間関係など多岐に渡るのです。
「けんせつ小町」増加に向けた取り組み
実際に建築業に携わる企業においては、「けんせつ小町」を増やせるようどのような取り組みをしているのでしょうか。ご紹介します。
・女性専用のトイレや更衣室の設置
レンタルでもよいので、工事現場などに女性のトイレや更衣室をセッティングする必要があります。現在は、ウォシュレットがついた美しい仮設トイレも出ている時代。男性目線だけで決めず、女性の意見を聞いてチョイスすることも大切でしょう。
・女性管理職の登用
建築業は男性の職場というイメージを払拭するためには、一般従業員の女性が増えるだけではやはり不十分でしょう。女性の管理職が増え、「建設業界では男女関係なく昇進できる」という意識が一般化されていけば、「けんせつ小町」の拡大につながっていきます。
・勤務時間や出勤日の柔軟な調整
男女平等とは言いますが、これは待遇や人事考課の側面での平等をうたったものであり、男女同じように働かなければいけないということではありません。体力的な差や結婚・妊娠・出産・育児などに際しては、男女の違いを踏まえたさまざまな調整が必要です。こうした柔軟な調整がなければ、女性が長く働き続けるのは難しくなってしまうでしょう。また、子どもを育てながら働く場合には、勤務時間がある程度固定・限定されていないと難しいでしょう。長時間労働を避け、定時に仕事を終えられるような仕組みづくりをしていく必要があります。
・女性の立場を理解できるようにチームに促す
男性にはなかなか理解できない、女性が置かれた状況というものがあるものです。出産、育児、介護などの担い手はまだまだ女性が大多数。そうした女性を取り巻く状況を男性メンバーがきちんと理解しておくことで、女性の働きやすさは飛躍的に増すでしょう。
・オフィス、事業所を清潔に保つ
汚れたところで働きたいと思う女性はいません。仕事の生産性も安全性もオフィスや事務所をきちんと整頓することで上がります。そのため、整理や掃除をこまめに実施するように習慣化するとよいでしょう。
・産休制度や育休制度の充実
産休・育休がなければ、女性が長く働き続けることは難しいです。これがきちんと出来ていなければ、女性を雇用できたとしても、しばらくしたら辞めてしまうといったことも出てくるでしょう。女性を雇い入れ、その労働力を定着させるためには、産休・育休制度を充実させていくことが欠かせません。
女性が働きやすい建設業界をつくることは、結果的に男性にとっても働きやすい建設業界をつくることにもつながります。「けんせつ小町」がどれだけ活躍していけるかは、それぞれの建設会社の取り組みと業界全体での問題意識にかかっているでしょう。(ライター:香山とも)