シングルファザー増加の実態と課題点
昨今、就職支援や経済支援などの対象としてシングルマザー(母子家庭)が取り上げられるようになりましたが、それと同様に増加しているのが、シングルファザー(父子家庭)です。シングルマザーよりも、仕事や職業が安定しているので、十分に子どもを育てられるのではないかと思われがちですが、さまざまな課題も浮上しています。あまり表に出ないシングルファザーの実態と課題、そして今後考えていくべき支援について紹介します。
シングルファザーの実態
シングルマザーの世帯数は2011年の調査で128.3万世帯、一方シングルファザーの世帯数は22.3万世帯といわれています。数としてはシングルマザーのほうが圧倒的に多いのですが、25年前に比べて1.3倍に増加しており、今後も増加傾向にあると見られています。離婚数が増加するなかで、ひとり親の家庭が父子家庭・母子家庭関係なく急速に増えていることがわかります。
シングルファザーの家庭は、シングルマザーの家庭よりも仕事や金銭面で安定しているのではないかと見られることが少なくありません。確かに、シングルファザーの平均就労年収は360万円で、シングルマザーの年収よりも200万円ほど高くなっています。しかし、育児の問題があっても「男性だから仕事を休みにくい」「早く帰れない」「シングルマザーよりも、周囲の支援を得られにくい」といった問題があるようです。
シングルファザーが抱える問題
ひとり親家庭であること、育児が大変であることは、シングルファザーでもシングルマザーでも変わらないはずですが、上記のような無理解から、シングルファザーが孤立してしまう。また、両親の介護や自身の病気などで貧困に陥ってしまう……そんな問題が明らかになってきました。シングルファザーが抱えている問題を確認してみましょう。
①年収の減収
子どもを一人で育てていくにあたり、これまで通りの仕事を維持し続ける難しさに直面する父親が少なくありません。シングルファザーになる以前までは、残業や出張も可能で、それにより一般的な年収をもらっていたものの、子育てのためにそれができなくなる。家か、収入減につながることが考えられます。
②仕事との両立が困難
シングルマザーと同様に、シングルファザーが子育てと仕事を両立することは難しいものがあります。残業が多かったり、高頻度で出張にいったりする仕事の場合、子どもとの時間を十分にもつことができなくなってしまいます。そういった状況から、正社員の職を続けることが困難になることもあるようです。一方、無理してこれまで通りに仕事を続けた結果、体力的・精神的に追い詰められて、子どもへの虐待を招くこともあるようです。
③ひとり親家庭の輪から外れてしまう
シングルマザーよりも数が少ないため、シングルファザーは周囲からの理解が得られず孤立していくことも多いようです。例えば、シングルマザー同士のネットワークは各地にあるものの、シングルファザー同士のつながりはまだまだ少ないです。子育て、仕事と子育ての両立などに悩んだ際に相談することができず、1人で悩みを抱えてしまう方も多いです。また、シングルファザーを対象とした行政のサポート制度も、シングルマザーよりも乏しいという実態がります。
④「まさか」のときのセーフティーネットが少ない
両親の介護や自分自身の病気・怪我といった「まさか」のときの対処方法が、ひとり親家庭にとって最大の懸念事項です。これはシングルファザーも同様です。「自分が病気になったとき、子どもの面倒はどうしよう」「親の介護までやっていたら、子育てができない」といった不安が、父子家庭には常に付きまとうわけです。上記の③とも関連しますが、こうした「まさか」のときの対応策を考えなければならない難しさがあります。
シングルファザー問題の課題
離婚数が増加し続ける中、今後は家族のかたちも多様化することが想像されます。行政には、これまでの家庭の概念に縛られた支援制度ではなく、多様な家庭を適切に支援できるような体制を築いていくことが求められます。また、地域コミュニティーでは、シングルファザー同士が結びつけるような仕組みや、シングルファザーが孤立しない街づくりをつくることも重要となるでしょう。
そしてまた企業においても、シングルファザー家庭への理解を深めていくことが求められます。具体的にシングルファザーが子育てにどれだけ時間をかけているのかなどの実態を把握し、適正な仕事配分やサポート制度を検討していくことが大切になるでしょう。(ライター:香山とも)