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    増加する低賃金の「非正規公務員」 キャリアアップの道はあるのか?

    2025年1月16日 転職の基本  -  転職ニュース

    非正規公務員近年、非正規公務員の増加が顕著となっています。財政難や行政サービスの多様化を背景に、柔軟な人員配置の必要性が高まる中、非正規公務員は重要な役割を担うようになりました。その一方で低賃金や雇用の不安定さなど、様々な課題に直面しています。

    今回は、増加する非正規公務員の現状を分析し、彼らのキャリアアップの可能性について探ります。公共サービスの質と労働者の権利のバランスを保つ上で、非正規公務員の処遇改善は避けて通れない課題です。彼らのキャリアパスを考えることは、行政サービスの持続可能性を高めることにもつながるのです。

    1.非正規公務員の増加状況

    非正規公務員の数は急速に増加しています。2023年4月1日時点での非正規公務員の数は74万2725人に達し、2020年の前回調査と比較して6.9%、約4万8252人の増加となりました。この増加傾向は長期的に続いており、2005年の約45万6000人から2020年には約69万4000人へと、15年間で1.5倍に増加しています。

    非正規公務員の割合も上昇しており、現在、地方公務員の5人に1人が非正規公務員であると推定されています。特に市区町村レベルでは、職員の3人に1人が非正規公務員となっています。一部の調査では、市区町村の非正規率が40%を超えるとの報告もあります。

    この増加傾向は、行政サービスの提供体制に大きな影響を与えています。正規職員と非正規職員の業務分担やサービスの質の維持など、新たな課題が浮上しています。また、非正規公務員の増加は、地方行政の人材育成や組織の継続性にも影響を及ぼす可能性があります。

    2.増加の背景

    非正規公務員の増加には、複数の要因が絡み合っています。

    財政難

    自治体の財政状況が厳しい中、人件費抑制のために非正規職員の採用が増加しています。地方交付税の削減や税収の減少により、多くの自治体が財政難に直面しています。この状況下で、正規職員の人件費を抑制し、より低コストで柔軟な雇用形態である非正規職員の採用が増加しているのです。

    業務の多様化

    行政サービスの拡大や多様化に伴い、柔軟な人員配置が必要となっています。住民ニーズの多様化や、新たな行政課題の出現により、従来の正規職員だけでは対応しきれない状況が生まれています。特に、専門的な知識や経験を要する業務や、一時的な業務増加に対応するため、非正規職員の採用が増えています。

    正規職員の減少

    行政のスリム化により、正規職員数は1994年をピークに減少傾向にあります。「小さな政府」を目指す行政改革の流れの中で、正規職員の採用が抑制されてきました。その結果、必要な人員を確保するために非正規職員の採用が増加しているのです。

    これらの要因が複合的に作用し、非正規公務員の増加をもたらしていますが、この傾向は同時に様々な課題を生み出しています。

    3.非正規公務員の問題

    増加する非正規公務員には、いくつかの重要な問題・課題が指摘されています。

    低賃金

    多くの非正規公務員の収入は250万円未満となっています。これは、正規職員と比較して著しく低い水準です。同一労働同一賃金の原則からも、この格差は問題視されています。低賃金は、非正規公務員の生活の質を低下させるだけでなく、優秀な人材の確保や定着を困難にする要因ともなっています。

    雇用の不安定さ

    年度末の雇い止めなど、雇用の継続性に不安があります。多くの非正規公務員は、1年ごとの契約更新を繰り返しています。この不安定な雇用状況は、長期的なキャリア形成を困難にし、生活設計にも大きな影響を与えています。また、雇用の不安定さは、業務への集中力や意欲にも影響を及ぼす可能性があります。

    専門性の軽視

    経験や専門性が十分に評価されない場合があります。非正規公務員の中には、長年同じ業務に従事し、高度な専門性を身につけている人も少なくありません。しかし、その専門性が待遇に反映されないケースが多く、モチベーションの低下や人材流出につながる恐れがあります。

    これらの課題は、非正規公務員個人の問題にとどまらず、行政サービスの質や継続性にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、非正規公務員のキャリアアップの道を考えることは、個人と組織の双方にとって重要な課題となっています。

    4.キャリアアップの道

    非正規公務員がキャリアアップするためには、いくつかの選択肢がありますが、それぞれに課題があります。

    (1)正規公務員を目指す

    正規公務員になるには、公務員試験に合格する必要があります。年齢制限がある場合が多く、30〜35歳までが一般的です。資格職や専門職では59歳まで受験可能な場合もあります。試験は難易度が高く、800時間以上の勉強が必要とされています。

    この方法のメリットとしては、安定した雇用と待遇が得られることです。また、公共サービスに携わる仕事のやりがいがあります。

    留意点としては、試験準備に時間と労力がかかります。また、年齢制限により受験機会が限られる可能性があることにも注意が必要です。

    正規公務員を目指す場合、業務経験を活かしつつ、計画的な試験対策が必要となります。一部の自治体では、非正規職員から正規職員への登用制度を設けているケースもあり、こうした制度の活用も検討に値します。

    (2)民間企業への転職

    民間企業への転職も一つの選択肢です。しかし、注意すべき点が二つあります。まず、地方では転職先が限られる可能性があります。次に、転職によって必ずしも収入がアップするとは限りません。場合によっては、収入が減少することもあるため、慎重な検討が必要です。

    この方法のメリットとしては、能力や成果に応じて給与が上がる可能性があることです。また、新しいスキルや経験を得られる機会があります。

    留意点としては、地方では転職先が限られる可能性があります。また、転職先によっては公務員と比べて雇用の安定性が下がる場合があります。

    民間企業への転職を考える際は、自身のスキルや経験が民間でどのように評価されるか、十分な調査と準備が必要です。また、地域の雇用状況や産業構造も考慮に入れる必要があります。

    5.その他のキャリアアップ方法

    上記の選択肢以外にも、以下のようなキャリアアップの方法が考えられます。

    (1)スキルアップ

    業務に関連する資格取得や研修参加を通じて、専門性を高めます。これにより、正規公務員試験や民間企業への転職の際に有利になる可能性があります。

    例えば、行政書士や社会保険労務士などの資格取得は、公務員としての業務にも直結し、キャリアアップに有効です。また、デジタル化が進む中、ITスキルの向上も重要なスキルアップの一つとなるでしょう。

    (2)臨時職員から正職員への登用

    一部の自治体では、臨時職員から正職員への登用試験を実施しています。現場経験をアピールできるメリットがあります。この制度は、非正規職員のモチベーション向上と人材確保の両面で効果があると考えられています。ただし、実施している自治体は限られているため、自身の勤務する自治体の制度を確認する必要があります。

    (3)会計年度任用職員制度の活用

    2020年度から始まった新制度で、一部待遇改善がありました。ただし、雇用の安定性には課題が残っています。この制度では、これまでの臨時・非常勤職員よりも待遇が改善され、期末手当の支給や休暇制度の充実などが図られていますが、依然として単年度契約が基本であり、雇用の安定性という点では課題が残されています。

    これらの方法を組み合わせることで、より効果的なキャリアアップが可能になるかもしれません。重要なのは、自身の状況や目標に合わせて、最適な方法を選択することです。

    制度的な改革も必要不可欠

    非正規公務員の増加は、日本の行政サービスの在り方に大きな変化をもたらしています。一方で、低賃金や雇用の不安定さなど、多くの課題も浮き彫りになっています。

    これらの課題解決には、個人のキャリアアップへの取り組みだけでなく、制度的な改革も必要不可欠です。今後は、非正規公務員の処遇改善や、正規職員への転換制度の拡充、スキルアップ支援の強化など、多角的なアプローチが求められるでしょう。

    同時に、行政サービスの質を維持・向上させつつ、働き手の権利を守るバランスの取れた施策が必要です。非正規公務員のキャリアアップの道を開くことは、個人の生活向上だけでなく、行政サービスの質の向上、ひいては社会全体の利益につながります。この課題に対する社会の理解と支援が、今後ますます重要になってくるでしょう。

     

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