若者雇用促進法の意義と課題点
2016年3月1日より、若者雇用促進法(「青少年の雇用の促進等に関する法律」)が本格的に施行されました。 これは、就職活動中の学生に求められた場合、企業が職場情報を提供する義務があるという規定です。ブラック企業対策としての注目も集まるこの制度。そもそもどんな狙いの制度なのでしょうか?メリットと合わせてご紹介します。
若者雇用促進法施行の背景と狙い
若者雇用促進法の正式名称は、「青少年の雇用の促進等に関する法律」です。これは、若者が適切に職業選択をおこなえるように定められたもので、就職活動中の若者が、能力や希望に応じた就職の機会を得られることを目的としています。
就職希望者が求めれば、開示対象となる以下の3項目について、企業の職場情報を提供することが義務づけられています。この中で、それぞれ1項目以上を明確化することを求めることができます。
●募集・採用に関する状況
- 過去3年間の新卒採用者数・離職者数
- 過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
- 社員の平均勤続年数
●職業能力の開発・向上に関する状況
- 研修の有無および内容
- 自己啓発支援の有無および内容
- メンター制度の有無
- キャリアコンサルティング制度の有無および内容
- 社内検定などの制度の有無および内容
●職業能力の開発・向上に関する状況
- 前年度の月平均所定外労働時間の実績
- 前年度の有給休暇の平均取得日数
- 男女別の前年度の育児休業取得対象者数・取得者数
- 役員に占める女性の割合および管理的地位にある者に占める女性の割合
当法律は、若者を搾取するブラック企業が社会的な問題になっていることから設けられました。就職活動の時点で企業の実態を知り、ブラック企業への就職のストッパーとなることも期待されています。
職場情報を求めるポイント
実際に、職場情報を求めるための方法としては、(1)企業の採用ページでプレエントリーする際に質問する、(2)書面やメールなどで、名前や住所など問い合わせる側の情報を明らかにした上で企業に尋ねる、(3)ハローワークや学校の就職課が扱っている求人案件の場合は、その機関を通じて質問する、などがあります。適宜質問しやすい方法を選んでいくとよいでしょう。
若者雇用促進法メリットと課題
この若者雇用促進法にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 就職活動をおこなう若者と、企業側にとってのメリットをそれぞれ考えていきます。
【就職活動中の若者のメリット】
企業の詳細な情報がわかり、ブラック企業への就職を防ぐことができます。また、入社前に自身のキャリアプランや働くイメージをもって就職することができるというメリットもあります。
【企業にとってのメリット】
若者雇用促進法と同時に、若者の雇用管理が優良な中小企業を認定するマーク(愛称:ユースエール)の運用も開始されました。こうしたマークをつけることによって企業にもメリットが生じます。大きくは下記4点です。
- ハローワークなどで企業広報をすることができる
- 認定企業限定の就職面接会などへ参加できる
- 自社の商品、広告などに認定マークを掲載することができる
- 若者の採用・育成を支援する関係助成金を加算
一方で、質問した学生が不利益を被る可能性がないかということも懸念されています。例えば、情報提供を求めた若者に対して、採用選考に関する情報を提供しない、情報提供を求める行為をマイナスに評価にするなどが引き起こされる危険性があるのです。また、情報開示については、あくまで企業の「性善説」に基づいており、虚偽の情報を開示したとしても罰則規定がありません。企業の都合のいいように改ざんされた残業時間、有休取得日数があふれてしまっては、就活生にとってマイナスでしかないでしょう。
こうした不利益や不都合が生じないよう、さらなる改正や運用上の工夫、サポート体制を整えていく必要があるといえそうです。(ライター:香山とも)