非正規社員の「5年ルール」と「2018年問題」
2013年4月に実施された改正労働契約法。これにより、2013年4月を起点として有期雇用契約が5年経過した人(非正規社員含む)には、無期雇用に転換可能な権利が付与される決定がなされました。
この「5年ルール」が初めて適用されるのは、2018年4月ですが、そのときに起きる問題ついて議論が起きています。この「5年ルール」と「2018年問題」とはどういうものなのか、概要と問題についてご紹介します。
非正規社員の「5年ルール」とは?
非正規社員の「5年ルール」とは、パートやアルバイト、契約社員など非正社員の勤続年数が5年を超えたとき、会社から契約期間の定めを外してもらえる制度のことです。これにより正社員と同じく、定年まで同じ会社で働き続けることができるようになります。この5年ルールは、2013年4月に労働契約法が改正されたことにより新設された制度で、安倍首相が推し進める成長戦略に従って整備されたものです。
ただし、現在同一の企業に5年以上勤務しているからといって、すぐに正社員と同じ扱いになるわけではありません。どういうことかというと、「会社に義務づけられているのは、契約期間を“期間の定めのない契約”に変更することだけ」なのです。極端に言えば、「1年のパート契約」を「無期のパート契約」に変更されることもあるでしょう。正社員と同等の扱いになるというわけではなく、ボーナスがない、退職金がないなどの条件はそのままの可能性が高いのです。
5年ルールに対する企業の受け止め方
労働政策・研修機構の調査(2013年11月時点)では、この5年ルールに対する企業の受け止め方を考察できます。非正規社員を「何らかの形で無期雇用にしていく」と回答した企業の割合は、「フルタイムの契約社員」については42.2%、「パートタイム契約社員」については35.5%となっていました。
人手不足や人材が定着しない業界・企業においては、非正規社員を勤務地限定の正社員にする企業も増加しています。そうした企業にとっては、時代が追いついた制度といえるでしょう。しかし、6割程度の企業は、「すべての非正規社員を無期契約にはできない」と考えているのも現実です。
5年ルールにより引き起こされる「2018年問題」
5年ルールによって、安定的に働くことができることを期待する労働者が多い一方、問題視する声もあがっています。それは「非正規社員の全員を無期雇用へ移行させるはずがない」という懸念にもとづいた考えです。特に、2018年4月は「5年ルール」が運用される初年度。このタイミングで、以下のような問題が起きるのではないかとされています。
- 2018年4月を目前にして契約を延長されない労働者が大量に出る
- 契約期間を無期とすることを条件に、配置転換やフルタイム勤務、給与の引き下げなどを交換条件とされる。
- 家庭やプライベートとの両立など、非正規雇用ならではのメリットが労働者の意図に反してさまたげられる
- 5年ごとに契約を切る企業が増加する可能性がある。結果的に、一箇所で働き続けられない労働者が増加する
すでに、雇用契約時点で「更新上限は5年とする」と書かれた契約書にサインを求めらる人も出ているといいます。5年ルールは、安定した働き方を求める非正規社員にとってプラスとなりますが、その運用段階で結果的に働く場を失ってしまっては元も子もありません。専門機関に寄せられたそうした相談事例をもとに、「2018年問題」対策が早急に進められる必要があるといえるでしょう。(ライター:香山とも)