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    「働き方改革」で削減された労働時間と残された課題

    2025年1月6日 転職の基本  -  転職ニュース

    自宅で隠れ残業「働き方改革」が進む中、長時間労働の是正や労働環境の改善に向けた取り組みが注目されています。法改正による時間外労働の上限規制や有給休暇取得義務化といった制度改革は、多くの企業で労働時間の短縮をもたらしました。

    その一方で「隠れ残業」や生活費への影響といった新たな課題も浮上しています。今回は、データに基づいて労働時間の削減傾向を詳しく分析するとともに、働き方改革によるメリットと懸念事項について考察します。

    労働時間の削減傾向

    働き方改革の推進により、労働時間の削減に一定の効果があったことは確かです。機械・金属産業の産業別労働組合JAMの「賃金・労働条件調査」によると、年間総実労働時間数は2019年を境に大きく減少し始めたことが確認できます。

    年間総実労働時間数は、2013年の2046.9時間から2022年の1995.9時間へと、約51時間減少しています。年間総労働時間数が2000時間を超える組合の割合は、2017年には63.2%を占めていたものの、2022年には45.4%に減少しています。

    調査結果を基に要因分析をすると、以下のようになります。

    1.完全週休2日制の採用増加

    完全週休2日制を採用する組合の割合は、2014年の77.9%から2023年の82.5%へと、4.6%ポイント増加しています。

    2.年間休日日数の増加

    年間休日日数は、2014年の118.1日から2023年の119.8日へと、1.7日増加しています。

    3.有給休暇取得日数の増加

    有給休暇取得日数は、2013年の10.1日から2022年の12.8日へと、2.7日増加しています。有給休暇取得日数14日以上の割合は、2013年の14.8%から2022年には37.5%に増加しています。

    4.年間所定内労働時間数の減少

    年間所定内労働時間数は、2013年の1851.1時間から2022年の1827.8時間へと減少していることが確認できます。1850時間未満の割合は、2013年の48.5%から2022年の65.6%へ増加しています。

    5.年間所定外労働時間数の減少

    年間所定外労働時間数は、2013年の207.7時間から2022年の169.2時間へと、38.5時間減少しています。

    当初の懸念と実態

    労働時間を削減することで、以下のような新たな課題が生まれるのではないかという懸念がありました。

    1.「隠れ残業」を助長するのでは?

    働き方改革による労働時間管理の厳格化で、タイムカードや労働時間の記録をシステム化する企業が増え、未払い残業の削減が進んでいます。また、労働基準監督署が企業に対する監査を強化するなど、取り締まりの動きが見られます。

    一方で、仕事量自体を減らさないまま残業時間を制限する企業もあり、サービス残業や隠れ残業の発生が懸念されています。特に、仕事を早く終えるプレッシャーから「タイムカードを押した後に働く」ケースがあり、実際の労働時間が見えづらくなっているという指摘もあります。

    しかし、企業は「隠れ残業」を放置することで責任を問われますし、労災を高めますので、クラウドシステムなどを使って仕事量をデジタルで把握する仕組みを導入するなど、持ち帰り残業を防止する試みを進めています。

    2.残業代が減って生活が厳しくなる?

    一部の企業では、残業代を含まない給与体系を見直し、基本給の引き上げや生活手当の支給を行うことで対応している例もあります。また、業務効率化により、残業なしでも生産性を維持する取り組みが進んでいる企業もあります。

    とはいえ、残業代を生活設計の一部としている労働者が多い現実は存在します。特に、中小企業では基本給の引き上げが難しく、従業員の生活の質が低下する事態が懸念されています。しかしこの問題は長時間労働の復活ではなく、別の方法で解決されるべきでしょう。

    なお、労働者が残業代を補填するために、効率よく稼げる「すきまバイト」を含む副業を始める動きが見られますが、その一方で副業を認めない企業文化と対立する問題が残っています。

    3.「長時間労働は美徳」は変わらない?

    若年層を中心に、「効率よく働く」意識を持つ労働者が増加し、早く帰ることをポジティブに捉える風潮が徐々に広がっています。また、働き方改革を強調する企業では、上司が率先して早く退勤する取り組みが進んでいる例もあります。

    一方で、特に伝統的な企業では「長時間労働は美徳」という旧来の価値観が根強く残っています。このような文化は、規定や制度だけでは容易に変えられず、上司や同僚の目を気にして退勤をためらう労働者が依然として残っています。

    とはいえ、過労問題が労災に発展する企業への視線は厳しくなっており、多くの会社は文化を変えようとしています。

    「隠れ残業」は依然として課題に

    労働時間の削減に伴い、「隠れ残業」(未払残業)が増加したという調査結果があります。ニッセイ基礎研究所の報告では、サービス残業時間が2013年の11.4時間から2018年には9.9時間まで減少したものの、2019年には10.4時間と再び増加に転じたとのことです。

    これは、時間外労働の上限規制の導入により、企業の労働時間管理が厳格化された結果、手当の発生する残業時間が減少する一方、持ち帰りによる「隠れ残業」などのサービス残業が増加した可能性があるということです。 

    この背景には、テレワークの普及があり、勤務実態の見えにくい「隠れ残業」が発生している可能性があります。企業は「隠れ残業」へのしわ寄せを肯定、放置しているわけではありませんが、業務量の根本的な削減や業務効率化ツールの導入など、さらなる取り組みが期待されています。

     

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