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    ヤングケアラーの過酷な実態と求められるサポート

    2016年10月25日 転職の基本  -  転職ニュース

    日常的に家族の介護をおこなう10代の若者を「ヤングケアラー」といいます。高齢化が深刻になる日本社会において、このヤングケアラーが大きな課題になりつつあります。「介護=家族の仕事」と考えられやすい日本では、ヤングケアラーが多大なる負担を抱え、就学・進学、就職の足かせとなるケースが少なくないのです。ヤングケアラーの実態と問題点、そして期待されるサポート・制度をご紹介します。

    ヤングケアラーの実態

    ヤングケアラーとは、病気や障がいを持つ親・祖父母など家族の介護をおこなっている18歳未満の子ども・若者を指します。ケアの内容は、介護が必要な家族の症状により異なりますが、家事全般、入浴や排泄などの介助・兄弟の世話など様々なものを担っています。

     

    ヤングケアラーが増加している背景には、介護を担う人手の不足、一家全体の経済的苦境があります。頼れる身内が少ないために、学生であっても両親・祖父母の面倒を見る必要が出てくる……、また金銭的な余裕がないために、施設への入居や入院という選択を取ることができない……。こうしたことから、10代の子どもたちがケアを担わなければいけないといった実情があるのです。行政に助けを求めようとしても、未成年であるという理由から門前払いにあうということも少なくありません。

    ヤングケアラーが抱える問題点

    ヤングケアラーは、まだ就学中であるケースが多く、そこに家族のケアの負担がかかることで解決しづらい問題に発展しがちです。置かれている環境によって、様々なパターンがありますが、多くのヤングケアラーが陥る大きな問題は以下の4つです。

     

    ①教育機会を奪われてしまう

    介護・家事などに追われて、学ぶ機会を逃してしまうケースが少なくありません。学校に遅刻・欠席することで単位が取れず、クラスメイトからも浮いてしまい、次第に足が遠のいてしまうこともあるでしょう。また、進学希望だったにもかかわらず、学習についていけずにあきらめてしまうこともあります。

     

    ②就職で不利を強いられる

    家族の介護を優先しなければならない状況では、当然ながら就職活動にも影響が出ます。介護費用を稼ぎたいとは思っても、「介護のため実家から通える会社」「急な欠勤も認められる会社など」“介護に理解のある会社”を選ばなければなりません。クリエイティブ職やスポーツ選手といった職業を目指すのも難しくなるでしょう。

     

    ③理解者の不在

    「家族の問題は家族で解決すべき」という傾向が日本では根強くあります。そのため、悩みを抱えていても、友達や教師に相談できず、孤立していくケースが少なくないのです。また、進学や就職などを控えた学生時代に介護をしなければいけなくなると、社会参加の機会がなくなってしまうということも考えられます。

     

    ④経済・金銭的問題

    保護者が働くことができなくなったり、家族の中で高額医療費が必要になったりすると、どうしても経済的に苦しくなっていきます。そのため、家族の介護や看病をするだけでなく、家計を支えるためにアルバイトをするなどの選択をする若者もいます。経済的な理由から、進学や夢を諦めることもあるでしょう。

     

    ⑤ヤングケアラー自身の問題

    精神的に自立していない子どもの頃から、家族の介護という重大な負担により、ヤングケアラー自身が心身のバランスを崩してしまうことがあります。なかには、常に無力感を抱くようになってしまったり、うつ状態に陥ったりする若者もいるのです。

    ヤングケアラーへの期待されるサポートや制度

    少子高齢化がますます進む日本においては、ヤングケアラーの問題は今後確実に増えていくと予想されます。そのためにも、ヤングケアラーのためのサポートや支援制度が必要です。

     

    ヤングケアラーが相談できる窓口の創設

    ヤングケアラーは身近に相談できる専門家もおらず、周囲から孤立してしまいがちです。どのようなサポートを受けたらよいのかわからず、一人で頑張り続けてしまう若者が少なくないのです。そのさせないためにも、ヤングケアラーが困った時に相談できる窓口の設置が急務といえます。行政やNPOなど、たらいまわしにすることなく、窓口で受け止めて、しかるべき対策を実施できる存在が重要になってきます。

     

    ・ヤングケアラー同士がコミュニケーションを取れる仕組み

    ヤングケアラーの中には、家族の問題が発生したことにより、これまで一緒に遊んでいたような同世代と突然住む世界が変わったように感じる人も少なくありません。腹を割って話せる友人が一人もおらず、精神的追い込まれる子もいるでしょう。そこで、同じような境遇に置かれたヤングケアラーがつながれる場が必要となります。SNSなどでのネットワークも考えられますが、実際に集って胸の内を吐露できるような実際の場があってもよいでしょう。

     

    ・教師が支援者と連携できるネットワーク構築

    ヤングケアラーで学校生活がおぼつかなくなっているという子どもの状況に、最も早く気がつくのが教師でしょう。そこで、教師と、地域包括支援センターなどの支援施設が気軽に相談したり、情報交換できたりするネットワークの構築が重要になってくると考えられます。

     

     

    ヤングケアラーはその存在が見えにくく、大人にはなかなか想像しづらい問題点を多く抱えています。若い世代がのびのびと活躍できる社会を創るためにも、その支援制度の創出が急がれるでしょう。(ライター:香山とも)

     

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