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    「ヤングケアラー」の過酷な実態と企業が考えられるサポート

    2024年12月26日 転職の基本  -  転職ニュース

    病気や障害を持つ親や祖父母など家族の介護を日常的に担う18歳未満の子どもや若者を「ヤングケアラー」といいます。高齢化が進行し労働力不足が深刻化する日本社会では、家族介護の負担が子ども世代にまで及ぶことが増えています。

    日本では「介護=家族が担うべき仕事」といった固定観念が根強く、十分な公的支援が得られない場合も少なくありません。その結果、ヤングケアラーたちは、学業や進学、将来のキャリア形成に支障をきたし、社会から孤立してしまうケースも多く見られます。今回は企業が考えられるサポートも含めて検討します。

    ヤングケアラー発生の背景

    言うまでもなく、家族の介護は大人の責任で行うべきで、子どもが担うべきではありません。しかし、介護を担う人手不足や一家全体の経済的苦境のなかで、子どもが担わされている現実があります。また、頼れる親族が少ないため、学生であっても両親や祖父母の面倒を見る必要が出てくる場合もあります。

    金銭的な余裕がないため、施設への入居や入院という選択肢を取ることができず、10代の子どもたちがケアを担わざるを得ないという実情があります。行政に助けを求めても、未成年であるために手続きが複雑化し、十分な支援につながらないケースもあるようです。

    ヤングケアラーが抱える問題点

    ヤングケアラーは、まだ就学中である場合が多く、家族のケア負担が重なることで、以下のような深刻な問題を抱えがちです。

    1.教育機会を奪われる

    介護や家事に追われて学ぶ機会を逃してしまうケースが少なくありません。学校への遅刻や欠席が増え、単位を取れなくなることで、次第に学校から遠ざかることもあります。進学希望があっても、学習についていけずに諦めざるを得ないことがあります。

    2.就業機会が狭まる

    家族の介護を優先せざるを得ない状況では、就職活動にも影響が出ます。「介護のために実家から通える会社」や「急な欠勤が認められる会社」など、ケアに理解のある会社を選ぶ必要があります。特定の職業を目指すことが難しくなる場合もあります。

    3.孤立する

    「家族の問題は家族で解決すべき」という傾向が根強い日本では、悩みを抱えていても友人や教師に相談できず、孤立してしまうケースが多いです。また、進学や就職の機会を逃すことで、社会参加が難しくなる場合もあります。

    4.経済的な問題を抱える

    保護者が働けなくなったり、医療費がかさむことで経済的に苦しくなる家庭が多いです。そのため、ヤングケアラー自身が家計を支えるためにアルバイトを選択する場合もあります。結果として、進学や夢を諦めざるを得ない状況に追い込まれることがあります。

    5.心身の健康を害する

    精神的に未熟な段階で家族の介護という重大な責任を負うことで、心身のバランスを崩してしまう場合があります。無力感やうつ状態に陥る若者も少なくありません。

    企業による支援策

    ヤングケアラーは10代なので、企業が常用雇用する従業員当人となるケースは稀です。パートタイマーやアルバイトとして雇用する場合もありますが、ヤングケアラーにだけ特別に手厚い支援を行うことはなかなか難しいでしょう。

    したがって、ヤングケアラーの負担を軽減するために企業が果たせる役割は、親世代の働き方を支援し、家庭全体の負担を軽減することに絞られます。できることは限られますが、考えうる具体例を挙げてみましょう。

    フレックスタイムやテレワークの拡充

    柔軟に働ける環境を企業が整えることで、介護の負担を大人が担いやすくなり、子どもの負担が減る可能性があります。リモートワークの導入や労働時間の調整が可能な仕組みは、家庭全体の生活を支える大きな助けとなりえます。

    介護休暇や有給休暇の柔軟な運用

    介護が必要な時期に応じて、休暇を取得しやすい環境を作ることで、子どもの負担を減らすことができるかもしれません。特に、短時間の休暇や段階的な復職支援などの制度があることで、親世代の負担も軽減できます。

    福利厚生の拡充

    従業員が介護に関する悩みを相談できる窓口を設けることで、適切なアドバイスや外部サービスの紹介が受けられます。これにより、家族全体での負担軽減が期待されます。また、介護に関連する費用補助や提携施設の割引制度を提供することで、経済的負担を軽減できます。また、介護関連の情報提供やセミナー開催なども効果的です。

    できることは限られるが

    ヤングケアラー問題の難しさは、その多くが貧困と結びついていることです。親世代が健康問題などで働けないか、パートタイマーやアルバイトとしてしか働けなかったり、正社員であっても零細企業にしか就職先がなかったりする場合が多いです。

    したがって、勤務先に人材面や財務面の余裕がないため、従業員である親世代に対する十分な手当を打てないケースがほとんどでしょう。

    それでも、ヤングケアラー問題の深刻さや、その後の人生に与える影響の大きさを考えれば、決して放置しておいてよいものとは考えられません。

    企業には、柔軟な働き方や支援プログラムを通じて、家庭全体の負担を軽減する役割が期待されています。また、地域社会や教育機関との連携を進めることで、孤立することなく支援を受けられる環境を整える必要があるでしょう。

     

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