35歳以上の転職者が増加傾向…その背景とは?
かつては“転職35歳限界説”と言われ、「35歳以上の転職は難しい」とされてきました。しかし、近年は35歳以上の人材もどんどん転職しており、転職者全体の3割にまで上っているといわれています。なぜ今、35歳以上の転職が増えているのでしょうか。その背景に迫ります。
35歳以上の転職者が増加している
2012年上期、転職事業企業3社合計の転職紹介人数は約1万7000人で、そのうち36歳以上の転職紹介人数は約3200人でした。割合でいうと、36歳以上のシェアは18.8%となっていました。
さらに2015年上期では、3社合計の転職紹介人数は2万3600人で、うち36歳以上の転職紹介人数は5300人にのぼりました。36歳以上のシェアは22.7%なり、3年間で約4ポイントの増加となったのです。全体の転職紹介人数も増加していますが、それ以上に36歳以上の転職は急激に増加しているのです。
また、転職サイト「doda」が2007年~2016年にかけて転職したビジネスパーソン約11万人を対象に調査したところ、2016年の転職成功者の29.7%が35歳以上となりました。そして、40歳以上も15.1%と過去最高。平均年齢も見ていくと、男性が32.9歳。女性が29.7歳。平均して、32.3歳となりました。こちらの転職平均年齢も過去最高となっています。
35歳以上の転職者増加の背景
では、なぜいわゆる“若者以外”の転職者が増えているのでしょうか? 背景にはさまざまな社会的要因があります。
要因1. 日本全体的な労働者人口の減少
まず考えられるのが、日本社会全体での労働者人口の減少です。少子高齢化が進み、働く人材層そのものの年齢も上昇傾向にあります。土木建築、モノづくりなどの業界では特に顕著で、人手不足が問題になっています。そのため、若手だけでなくビジネスの基礎知識を身につけた35歳以上の人材を求める企業が増えているのです。
要因2. ベンチャー起業の台頭
現在、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドによるベンチャー企業への出資が盛んです。しかし創業間もないベンチャーなだけに、経営層が若手だったり経験が乏しかったりします。そこで、実績のあるビジネスパーソンを重役として招くために、30代以上から募集するといったことも少なくないのです。
要因3. プレイングマネージャーの増加
10~20年前ならば、40代といえば多くの人が管理職でした。現場から離れ、マネジメントに徹するのが日々の仕事という人がほとんどだったのです。しかし、現在は人件費抑制の観点やスピーディーな意思決定を実現させるため、“管理しながら現場でも働く”というプレイングマネージャーが主流となっています。縦横無尽に働ける人材を、多くの企業が求めていることから35歳以上の転職が増加しているのです。
要因4. 年下の上司・年下の部下に違和感がなくなった
かつて35歳前後の人材は「現場社員として採用するには年上すぎるが、管理職として採用するには若すぎる」という微妙な年齢でした。しかし、現在は年齢と役職のひもづけがゆるくなり、“年上の部下”や“年下の上司”も珍しいものではなくなっています。そのため、35歳と年齢区切りを気にせずに転職しやすくなっています。
要因5. 企業が即戦力人材を求めている
新卒採用をして、ゼロから社員を育てるよりも、社会人スキルなどを身につけた年齢層を採用したいと考える企業が増えています。そのため、35歳以上のビジネスパーソンの転職が活発化しているのです。新卒採用しても、3年も待たずに辞めてしまう若者が少なくないことも、こうした企業の考えを後押ししているようです。
要因6. 年功序列・終身雇用の崩壊
年功序列・終身雇用の企業においては、新卒で採用された企業に残っていれば次第に給料も役職も上がっていきます。しかし、近年はこうした年功序列制度をやめる企業が少なくありません。そのため、「このままこの企業にいても、給料は上がらないのではないか」「会社が不況なので、リストラの危険もあるかもしれない……」といった思いを持つ人が増え、転職にうって出る35歳以上の優秀な人材が増加したのです。
「年齢で転職をあきらめるのは早い」、現在はそんな時代に突入しつつあります。きちんとした実績とスキルがあれば、35歳以上でもどんどん転職していくことができるので、これを機にキャリア設計を新たに見直してみるのはいかがでしょうか。(ライター:香山とも)