増える“時短派遣”その背景とメリット
近年、「週2~4日」や「1日4~6時間」の時短勤務で働く、“時短派遣”の労働者が増えつつあります。子育て中の女性などが仕事と育児の両立ができると注目されるとともに、人手不足に悩む会社にもメリットがあるようです。時短派遣とはどのような働き方なのでしょうか。その増加の背景と、メリットについてご紹介します。
時短派遣の働き方と増加の背景
普通、派遣社員といえども週5日・1日7~8時間程度で勤務するのが基本です。時短派遣では、その働き方をガラリと変え、週2~4日で1日4~5時間勤務など、労働時間を短くした派遣社員のことをいいます。
こうした働き方が増えている背景には、労働力不足の企業の増加があります。「正社員を採用する予算はない」、「社員を募集してもなかなか優秀な人材が集まらない」という理由から、派遣社員に頼る企業は増えていますが、その中で、フルタイムで働くほどは必要なく、時間を調整しながら仕事をしてほしいと考えるケースも少なくないのです。そうした、限られた時間で働いてほしいというニーズから、時短派遣が注目されているのです。
ニーズがある一方で、派遣労働者は年々減少しているのが現状です。現在、派遣社員として働いている人たちも、正社員を希望しているケースが多いのです。そこで、派遣社員登録者を確保するために、人材派遣会社が時短勤務などの魅力を打ち出しているのです。また、一億層活躍社会と言われる昨今、育児と両立しながら働きたいと考える女性も増えています。
さらに、今後一層増加する“介護と仕事の両立”という点でも、期待されています。時短派遣は、他の仕事と両立しながら働くことができたり、趣味と両立しやすかったりというメリットもあり、価値観の多様化が進んでいる社会において注目されているのです。
時短派遣のメリットは?
では、このような時短派遣のメリットとはどう言ったものでしょうか。
【労働者視点】ワークライフバランスが保たれる
育児や介護などの理由でキャリアをあきらめなければいけなかった人にとって、時短で勤務できる働き方はメリットが大きいです。負担を軽くしつつ、継続的に働くことができるでしょう。1日4時間ほどの労働パターンもあるので、幼稚園や保育園に迎えにも遅れることがなくなります。延長保育にかかる費用が、働いた分と相殺されてしまう……といった悩みも解消されるはずです。
【労働者視点】キャリアの断絶を防ぐことができる
退職後、全く働かず10年間などを過ごしてしまうと、「パソコンが使えない」「新たなビジネス常識についていけない」といった問題が発生するケースがあります。時短派遣という形で、少ない時間でも仕事を続けていれば、仕事の勘どころを失わず、キャリアを断絶させずにいることができます。「育児期間はフルタイムで働けないが、子どもが小学校に入ったらまた正社員として働きたい」と考える人は少なくありません。将来、正社員として再就職を考える際にも、“働き続けていること”はアドバンテージになるはずです。
【労働者視点】アルバイトやパートよりも給料面で恵まれている
アルバイトやパートの場合の時給と、派遣社員の時給とでは、後者の方が上。特殊なスキルがあれば、なおのこと給料は上がります。正社員には及ばないことが多いですが、金銭面を考えると、アルバイトよりも時短派遣の方がメリットが大きいといえそうです。
【企業視点】人件費を抑えられる
労働者だけでなく、企業にとってもメリットがあります。派遣業者に登録している人材が減少する中で、フルタイムの派遣社員との契約料が高騰しています。まして、正社員を雇えば、さらに人件費はかかります。そうした企業にとって、必要な分だけ働いてもらえる時短派遣は魅力的な制度なのです。
勤務時間が理由で働くことを制限されていた人たちや、あきらめていた人たちにとって、ひとつの解決策になるでしょう。もちろん、フルタイムで働きたいという派遣社員の人たちが不本意な時短派遣を強いられることのないよう、きちんと使い分けする必要もありそうです。