プレミアムフライデー、その狙いと懸念点
2017年2月24日から、プレミアムフライデーと呼ばれる働き方が導入されようとしています。これは、毎月の最終金曜日は、午後3時をめどに従業員に仕事を切り上げさせて消費をうながそうという経済産業省と経団連からの呼びかけです。
不況をなんとか打開しようという政府の意図からこのような提案がなされましたが、その働き方に対しては賛否両論あるのも事実。プレミアムフライデーの狙いと、実施に対する指摘の声について解説します。
プレミアムフライデーの狙いとは
経済産業省と経団連は、毎月末の金曜日をプレミアムフライデーとして、企業は午後3時には業務を終えるという働き方の変革が打ち出しました。これは、従業員の消費をうながそうということを狙った取り組みで、2017年2月24日から開始予定とされています。消費を盛り上げるだけでなく、労働者の長時間労働の是正といった働き方改革にもつなげたいという思いがあるようです。
この改革は、アメリカの「ブラックフライデー(黒字の金曜日)」という年末商戦がモデルになっています。ブラックフライデーは、感謝祭(11月の第3木曜日)の翌日にあたり、正式な祝日ではありませんが休暇になることが一般的です。これをモデルとして、日本でも導入が図られることとなったのです。
プレミアムフライデーの実施に向けて、既に航空会社が月末金曜日から行ける旅行のパッケージプランを組んだり、地方自治体の商工会議所が飲食店などの小売業に早めに店をオープンさせるなどの働きかけがおこなわれたりしています。今後、地方自治体や企業の中で、プレミアムフライデーに向けた対策が整備されていくと考えられます。
プレミアムフライデー実現に向けた課題とは
「従業員の働く時間が短くなり、消費も活性化するのであればいいことづくめではないか」とも思われます。しかし、多くの課題が投げかけられているのが現状です。どのような異議の声が出ているのでしょうか。
・有給休暇の消化を促すのが先決ではないか
プレミアムフライデーよりも前に、社員の有給休暇の消費率を100%にすることの方が重要ではないかという声が多く挙がっています。世界の先進国の年次有給休暇の消費率がほぼ100%なのに対して、日本はまだ平均して60%程度と言われています。「休むと他のメンバーに迷惑がかかる」「休むと言い出せない雰囲気」などの理由から、有給を使い切る方向にはなかなか進まないのです。こうした日本の企業文化を変えることの方が、プレミアムフライデーよりも先決ではないかという主張が強いのです。
・日々の労働時間の削減を優先すべき
有給の消費率とリンクしますが、長時間労働は日本社会における大きな問題です。月末の金曜日にだけ、午後3時に仕事を終えられたところで、他の日が深夜まで残業をするような状況では従業員の負担は軽減されません。毎日の長時間労働の疲れから、休日も消費活動をするどころか、家でゆっくり休むという会社員が多いのが実態となっています。そのため、まずは企業における働き方を変えないことには消費活動を促すことにはつながらないのではないかという声が挙がっています。
・個人のライフプランより消費活動を優先した制度となっているという指摘
長時間労働の是正よりも、プレミアムフライデーの導入という道を選んだ政府に対して、「結局、個人の幸せよりも経済の循環を優先させた」という批難がなされています。
・「絵に描いた餅」となるのでは
企業がプレミアムフライデーをどれだけ実現できるか、プレミアムフライデー運用するために業務整理を行えているか、などのチェック機能や罰則規定がなければ、結局制度だけが存在する「絵に描いた餅」になるのではないかという指摘もなされています。いかに企業の実情を把握した制度設計ができるかが、重要なポイントになるといえるでしょう。
新たに導入されるプレミアムフライデー。日本に定着するか否かは、こうしたいくつもの“壁”をどう乗り越えるかにかかっているといえそうです。(ライター:香山とも)