転職・就活・キャリアが変わる? 話題の「HR tech」とは何か
いま人事の世界で話題になっているのが、「HR tech(エイチアール テック)」です。これは、高度なITと人材サービスを組み合わせることで、ビッグデータに基づいた採用・人事評価・人材育成・配属などが可能になるという仕組みです。
すでに、国内でもさまざまなサービスが登場しており、「面接官の好みで決定されてきた人材採用も、すべての人が納得するような指標・データで判断できるようになる」、「社員に一律に受けさせていた研修を、個々の適性に合わせてカスタマイズできるようになる」といったことが可能になると言われています。HR techとは何か、そして、HR techを導入することで働き方はどう変わるのでしょうか。
HR techは“人事とテクノロジーの融合”
HR Techとは、「HR(Human Resource)」と「Technology」を掛け合わせた造語です。金融とテクノロジーを掛け合わせた“Fin Tech”や、教育とテクノロジーを掛け合わせた“Ed Tech”などと同じく、高度なITと人材サービスを融合させたワードです。
HR techによって、クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など最先端のIT関連技術を用ることで、人事関連業務をスムーズに進めていくことができます。具体的には、採用・育成・評価・配置などが効率化できると考えられていますが、中でも特に、「生産性向上」「組織・人事戦略立案」「育成・キャリア支援」などの分野についての改善が期待されています。
HR techで人事・採用・研修はどう変わる?
では、HR techの技術は企業における“人”の扱いにどのような影響を与えるのでしょうか。具体的にご紹介していきます。
【1】人事管理業務の効率化
社員情報などの人材管理ツールや給与・労務管理ツールなどを用いて、関連する仕事を大幅に効率化できるでしょう。また、福利厚生やヘルスケアなどの管理も可能になると見られます。例えば、本人の意向や「適性・評価・属性」データ、業務特性をデータ化・定量化することで、適切な人材配置が可能になるでしょう。これまでの主観に頼った判断ではなく、客観的な指標を持って配属を決定していくことができるのです。
また、労務管理においては、入退社手続きを簡略化できたり、社会保険・雇用保険の手続きも自働化できたりするようになります。申請書類などを自動作成できる、役所への申請もクラウド上でできれば、工程やコストを削減できます。他にも人事評価や健康管理、在宅勤務やモートワークなどを含む働き方などを、管理できます。
【2】求人・採用のマッチング
HR techのシステムにより、求人・採用の簡便化・効率化をおこなうことができます。応募フォームの作成、求人のWebへの掲載などの応募者管理を一元化できる特徴があるのです。他にも、SNSなどを活用し、人材を発見・評価・スカウト管理や、転職口コミサービスの展開、社員以外の契約社員・業務委託者のマーケットプレイスなどにも応用ができると期待されています。また、求職者側も人工知能を活用した適職診断ツール、求人検索ツールなどを利用し、これまで以上に自分にマッチした求人情報を見つけやすくなるでしょう。
【3】適切な社員の学習管理
企業において、人材育成は重要なミッションですが、研修計画の立案・実行、研修教材の準備など、大変なコストがかかります。しかしHR techが当たり前になれば、「オンラインを通じた社員のオンデマンド学習」や「ビッグデータにもとづいた人材育成計画の立案」、「人工知能による研修のプロセスの評価」などが可能になります。これまで一括研修がメインだったのに対して、個人の適性やキャリア志向に合わせて人材教育をカスタマイズしたり、「こういう業務にはこういう研修が必要」といったことが即座に判断できるようになったりするでしょう。また、遠隔拠点をつないでのディスカッションやビデオカンファレンス、フォーラムの開催などのシステムも可能になります。
このように、人事部門の大きな革新につながるHR tech。今後、日本企業でも多く広がっていくことが予測されます。それにともない個々人の転職・就活、入社後のキャリア形成にも大きな影響を与えるのではないでしょうか。(ライター:香山とも)