働く男性の育児をさまたげるパタハラ問題
男性社員が育児休業をとったり、育児支援目的の短時間勤務やフレックス勤務を活用したりすることに対し、批判的な態度をとる職場は未だに少なくありません。こうした働く男性の育児をさまたげる「パタハラ(パタニティー・ハラスメント)」が、いま問題になっています。
これは、男性の育児が妨害されるだけでなく、女性だけに育児負担が偏るという社会的な問題もあります。パタハラの実態とはどんなものか、また問題の背景や解消に向けたヒントなどをご紹介します。
パタハラとはどんなもの?
パタハラとは、パタニティー・ハラスメントの略です。“パタニティー(Paternity)”は 「父性」の意味。したがって、パタニティー・ハラスメントは、男性が育児参加で父性を発揮する権利を、企業の上司や同僚などが妨げることを指します。具体的なハラスメント行為としては、下記のようなものが該当します。
・子育てのための育児休業取得などを認めてもらえない
・育児休暇の申請をすると、異動や降格などをもちかけられた
・子育てのための育児休業や時短勤務などから、嫌がらせにつながった
・育児休業などを利用したら、降格や閑職に追いやられた
育児介護休業法の改正で、男性の育休取得の対象範囲も広がりましたし、実際に男性でも育児休業などの制度を利用できるようになったということも広く知られるようになりました。しかし、認知度が高いにもかかわらず、こうしたパタハラによって取得が阻害されている実態があります。
パタハラ問題の背景とは
パタハラが生まれる背景にはどんなものがあるのでしょうか。
1. 育児制度を利用した男性の仕事をサポートする仕組みが整っていない
育児休暇制度などを利用した際には、代わりの人員が必要になります。しかし、企業に余裕がなく。サポート人材を配置したり、社員を採用したりすることができていないという背景があります。こうした状況ですと、結果的に社員の不満を招き、パタハラにつながる可能性があるのです。
2. 上司に男性の子育てを歓迎しない雰囲気がある
企業のトップや経営陣の考え方は職場に大きな影響を与えます。企業の中心に位置しているような年配の世代は、未だに「男は仕事、女は育児家事」という考えを持っている方が少なくありません。そうした上司がほとんどを占める職場では、パタハラも起こりやすいといえるでしょう。
3. 同僚の理解がない
上司だけでなく、同僚にも子育てに対する理解がなければ職場でパタハラが起こりえます。「妻が頼れる人が周りにいないので、私が育児に参加する必要があるのです」「子どもの迎えがあるので、早く帰らせてください」などの状況を伝えていく必要があるといえるでしょう。
パタハラ問題解消へのヒント
パタハラを解消するために、個人としてどのようなことに気をつければいいでしょうか。解決のヒントを考えてみましょう。
・子育てに参加するための制度と権利を確認する
現在は、育児休業制度、時短勤務制度、在宅勤務、リモートワーク、出張の是正措置などを保証している企業がほとんど。しかし、自分にどんな権利があるのかを認識していなければ使うこともできません。正当に企業と交渉できるよう、各種の制度・法律をきちんと確認しましょう。
・育児休業制度を取得する前に根回しをする
直前に育休を取得したいと伝えると、上司や同僚の反感を買う可能性があります。そこで、子どもが産まれる前や育休を取得したいと思った時点で、自分の考えをきちんと伝えていく必要があります。そうすることで、子育て参加をいかに重要だと考えているか、あなたの思いが周囲に伝わるはずです。準備する時間が十分にあれば、フォロー体制を構築するために上司や階差も動き出しやすくなるでしょう。
・人事部や働き方改革推進の部署に相談をする
企業としては、“働きやすい企業”というブランドイメージを大切にしたいものです。また、こうした部門は客観的な立場から社員の働き方を支援してくれる組織でもあります。事前にこうした部門に相談を重ね、支援をしてもらうことが、育児休業制度などを利用する上で重要です。
男性が育児にも参加する会社は、長い目で見れば会社としての魅力アップにつながります。また、世の中全体にとっても育児負担を軽減することにつながるでしょう。今後も社会全体で、パタハラ解消に向けて動き出していく必要があります。(ライター:香山とも)