人手不足時代に進む“働くロボット”の導入
全国的に人手不足が進む中で、ロボットを活用しようという動きが活発になっています。以前から活用されていた製造業の現場だけでなく、例えば自動運転車による配達、ロボットによる病院での問診、ドローンを使った測量など新しい事例も登場しています。ロボットによる人手不足解消の事例を紹介し、増加の背景を紹介します。
ロボットによる人手不足の事例
自動車や家電機器といった大量生産品の製造工場では、以前から製造ロボットが活用されていましたが、本格的な人手不足時代に突入した現在、そうした分野以外でのロボットの導入が進みつつあります。しかも製造ロボットのような「決まった動作だけをするロボット」ではなく、「個別の作業を自動判断して作動するロボット」が増えつつあります。その例をいくつか紹介しましょう。
1. 運搬用ロボット
ヤマト運輸がディー・エヌ・エーとタッグを組み、配送用ロボット「ロボネコヤマト」の事業を開始することを発表しました。これは、受け取り客がスマートフォンで指定した時間・場所に、車体の一部を宅配ロッカーに改造した自動運転車が配送するというもの。30分前後で配送できるシステムになるということで業界から注目を集めています。人手不足が解消されるだけでなく、作業効率事態も3倍になるといわれています。
また、人員が動きにくい深夜や早朝などの時間にも働くことができると期待されています無人運転でのデモなどを実施しながら、試行運転を始めていく予定です。
2. 商品仕分け・搬送用ロボット
日立物流では、物流分野の施設でロボットの活用に力を入れています。日立製作所が開発した自動搬送ロボット「Racrew(ラックル)」は、自動的に動く商品棚です。これまでいちいち作業スタッフが棚の前まで歩いて移動し運んでいたのと違って、ロボットによりワンストップで荷物の運搬ができるようになります。また運用データをもとに、より効率的な配送ルートを選択したり、頻度の高い棚をピックアップしやすい場所に戻したりする機能も備えており、作業効率が約3倍アップするといわれています。
3. 診療所で活用されるコミュニケーションロボット
病院の外来業務において、患者から症状を聞き出すコミュニケーションロボットが普及し始めています。これまで医療従事者などが患者に尋ねていた問診を、ロボットが代行します。入力データがロボットにより分析され、重症度の高い患者の場合にはアラートを出すような設定をすることも可能です。高熱の患者を優先して診察したり、感染を防ぐために他の患者と隔離したりするなどの瞬時の判断ができるのは大きな特長でしょう。紙の診断表がなくなることで、作業自体も効率化されます。
4. 介護ロボット
人手不足が大きな問題となっている介護の現場においても、コミュニケーションロボットが普及しています。ケアをするためだけでなく、認知症予防のゲームやリハビリのための体操などを行う役割を担うことが多いようです。こうした役割は富士ソフトの「PALRO」が先行しており、介護施設に入っている高齢者の方たちに向けてレクリエーションを実施しています。介護ロボットが広まれば、スタッフは要介護者の見守りなどに時間とパワーを使うことができるため、業務を効果的に回していくことができるのです。
ロボットの仕事増加の背景
ビジネスの現場におけるロボットの広がりは、日本社会における慢性的な人手不足があります。特に、介護やサービス業、製造業、運搬業など人員が集まりにくい職場においては、救世主となりうる存在だといえるでしょう。また、雇用関係を結ぶよりもコストがかからないという点でも、注目されています。例えば、ビジネス向けの「Pepper for Biz」は、本体のレンタル料として、基本プランで月額5万5000円が目安とされています。1か月人を雇うよりもずっとコストを下げることができるのです。
さらに、業務の効率化・効果化も大きなポイントです。工場での品質管理やレジ業務のスピードアップ、製造業において部品が足りなくなりそうであれば先回りして発注しておくなどのメリットがあります。企業の安定経営にも一役買うのが、ロボットの普及の背景にはあるのです。(ライター:香山とも)