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    働き方改革関連法で改正された「残業時間の上限規制」の中身

    2024年11月8日 転職の基本  -  転職ニュース

    2019年4月に施行された「働き方改革関連法」は、長時間労働の是正と労働者の健康確保を目的に導入されました。特に注目されたのが、「残業時間の上限規制」です。この規制は、過労死や過重労働による健康被害が社会問題化したことを受けて、初めて労働基準法に明確な上限を設けたものです。

     

    今回は、改正内容の具体的なポイントや適用時期、適用猶予や除外の条件、企業が取るべき対応策、そして今後の課題と展望について詳しく解説します。この規制が、労働環境の改善とワークライフバランスの向上にどう寄与するのかを見ていきましょう。

    残業時間の上限規制とは?

    改正された上限規制では、原則として月45時間、年360時間を超える残業が禁止されています。ただし、労使協定(36協定)の特別条項を設けた場合は、一定条件下でこれを超えることが許されます。

     

    特別条項がある場合でも、年720時間以内、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)という厳格な基準が設けられました。また、月45時間超の残業は年6回までに制限され、これを超えた場合は罰則の対象となります。

     

    上限規制に違反すると、企業には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

    改正前と改正後の違い

    改正前の労働基準法には残業時間の上限が明確に定められておらず、36協定さえ結べば長時間の残業が合法的に行われていました。しかし、改正後は、特別条項付きの36協定を結んだ場合でも、前述のように年720時間以内などの具体的な上限が設定されることになり、より厳格な管理が求められるようになりました。

     

    また、36協定の届出様式も変更され、労働者の健康確保措置や協定内容の周知状況などの記載が義務付けられています。さらに、使用者には労働者の労働時間を適正に把握する義務が新たに明記され、管理監督者やみなし労働時間制の適用を受ける労働者も含まれるようになりました。

    適用時期と適用猶予・除外

    上限規制の適用は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から開始されました。一方で、特定の業種には適用猶予や除外の措置が設けられています。

     

    具体的には、建設業、自動車運転業務、医師などは2024年3月31日まで適用が猶予されており、新技術・新商品の研究開発業務については、上限規制が適用除外となっています。

     

    これにより、業務の特性に応じた柔軟な対応が可能ですが、労働者の健康確保は引き続き重視されます。

    労働者の健康確保措置

    残業時間の上限規制は、単なる労働時間管理の強化だけでなく、労働者の健康確保措置を促進するものです。

     

    具体的には、長時間労働者に対する健康診断の実施や、ストレスチェックの強化、メンタルヘルス対策の推進が求められます。企業は、従業員の心身の健康を守るための施策を積極的に導入しなければなりません。

    企業が取るべき対応策

    企業が残業時間の上限規制に対応するためには、まず労働時間の管理体制を見直すことが求められます。具体的には、勤怠管理システムの導入や、労働時間の見える化、フレックスタイム制度やテレワークの導入など、柔軟な働き方を推進する取り組みが効果的です。

     

    また、生産性向上を目的とした業務プロセスの見直しや、業務の自動化・効率化を図ることで、残業時間の削減が可能になります。

    今後の課題と展望

    上限規制の導入により、長時間労働は一定の改善が見られましたが、現場では新たな課題も浮上しています。代表的なものが、労働時間の「付け替え」と管理職の労働時間管理の難しさです。

     

    「付け替え」は、残業時間の上限を守るために、業務時間を会議や研修など別のカテゴリーに置き換える行為を指し、実質的な労働時間短縮につながらない問題があります。これにより、労働者の健康リスクが残るだけでなく、管理の透明性が損なわれ、企業の法令順守への信頼が低下する恐れがあります。

     

    また、管理職は労働時間規制の対象外とされるため、自身の長時間労働が軽視されがちです。彼らの過剰な負荷を放置すると、職場全体に長時間労働の慣習が広がる可能性があり、結果的に生産性の低下や人材流出を招くリスクがあります。

     

    これらの課題を解決するためには、さらなる法改正や運用の見直しが必要とされます。特に、労働時間の管理体制の透明性向上と管理職の負担軽減が求められます。労働時間短縮と生産性向上を両立するために、企業と労働者が協力し、より健全で持続可能な労働環境を構築することが重要です。

    人的資本経営と労働時間開示

    近年、人的資本経営が注目される中で、労働時間に関する開示も企業の透明性を高める重要な要素とされています。2022年に政府が発表した「人的資本可視化指針」では、労働慣行が主要な開示項目として挙げられ、労働時間管理や労働条件に関する具体的な情報開示が求められています。

     

    また、2023年3月期決算からは上場企業に対して、有価証券報告書における労働時間管理の方針や指標の開示が義務化され、平均残業時間や有給休暇取得率などの定量的指標が外部に示されるようになりました。

     

    労働時間の開示は、単なる情報公開に留まらず、長時間労働の抑制や従業員の健康管理の重要性を示すものです。これにより、企業は従業員の健康とワークライフバランスを重視した経営方針を打ち出すことができます。

     

    さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の評価対象としても、労働時間管理は企業価値向上の鍵とされています。人的資本経営の文脈では、労働時間の適切な管理が、持続可能な成長と従業員エンゲージメントの向上に直結するため、企業は戦略的に取り組むことが求められます。

     

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