Oターン転職から考える地方への転職
地方創生の高まりや、東京一極集中への反発から、都心から地方へ移住&Uターン転職する人が増えています。しかし一方、「地方での暮らしに馴染めない」「仕事が思ったよりうまくいかない」などの理由から、再び都心へと戻って転職する「Oターン転職」も増えているようです。Oターン転職の背景と実態や、地方へ転職することの注意点を考えてみましょう。
Oターンの実態とその背景
いわゆる“Uターン”は、地方で生まれ育った人が首都圏に行き、出身の地方に戻ることをいいます。同様の動きとして、都市部出身の方が地方の企業へ転職・就職する“Iターン”、地方の出身者が進学や就職で都市部に移住した後、故郷に比較的近い地域に移住して就職・転職する“Jターン”などもあります。
こうした活動は、人口減少に苦しむ地域の活性化の観点から注目を集めています。「地方創生」の取り組みの一環として居住者を呼び込む活動が各地で進められているのです。実際に移住者も増加しており、田舎暮らしの実現を支援するNPO法人ふるさと回帰支援センターによると、移住についての問い合わせは2016年で2万6426件と前年比22.4%も増加しました。
このような様々な地方移住が進む一方で、再び都市部へ戻る“Oターン”も増えています。Oターン転職では、想像していた地方暮らしと実際の地方暮らしのギャップに悩んだ末に、都心部へ戻るというケースが多いようです。
具体的には、「地方では想像以上に働き口が少ない(or 収入が少ない)」という声や、「保育園などの育児支援サービスが足りず、共働きが困難」といった声が目立ちます。また、仕事は問題なかったとしても「地方ならではの人付き合いに疲れた」という人も少なくないようです。
Oターンを招かない地方転職の注意点
未来の希望を描いての移住ですから、追い詰められた形でのOターンは避けたいものですよね。そのようなことを防ぐためには、どこに注意をしたらよいのでしょうか。
(1) 地域に実際に足を運んでみる
Oターン転職を決断する多くの方が、理想に思い描いたような田舎暮らしとは違ったという理由を挙げます。写真やテレビでいくら素晴らしい映像を見ても、実際に行ってみなければわからないことはたくさんあります。買い物をするところがない、地元の人がよそ者に冷たい、病院や学校がないなどの中で、本当に生活していけるのか見極める必要があるのです。可能であれば、長めに滞在してプレ生活を体験してみることで、田舎暮らしができるかどうか判断をしていきましょう。
(2) 周囲の人に話しを聞く
地域のコミュニティに入れてもらえない、ご近所の付き合いが密接で個人のプライベートがない、などの評判はなかなか都会にいてはわからないものです。そこで、先に移住した人たちに話しを聞いたり、Oターン転職を選んだ人に意見を求めたりとして情報を収集しましょう。プラスの意見だけでなく、マイナスの意見にもきちんと耳を傾けることで客観的な判断ができます。
(3) 自分の気持ちを整理する
なぜ自分が地方移住して働きたいと思っているのか、その気持ちを整理しておく必要があります。例えば、「今の仕事を辞めたいから」などの理由であれば、地方で暮らしたいという理由には直接繋がっていないため、あまりうまくいかないかもしれません。自分の心を整理すると、「どんなところに住みたいのか」「どんな暮らしをしたいのか」「地域の人たちとどう繋がりたいのか」などが見えてくるので、リスクを減らして移住をすることができます。
(4) お金の出入りが変わることを正確に把握しておく
田舎暮らしは家賃が安いなどのメリットがある一方で、収入が大幅に減る可能性があります。20代の多くが手取り額15万円程度というエリアも少なくありません。また、公共交通機関も少ないので、個人の交通手段が必須になるケースがほとんど。購入費用、維持費なども考慮する必要があります。お金の出入りの仕方が都会に住んでいる時とは変わってくることをきちんと試算してから移住しましょう。
夢の地方移住生活を思い描いている方も少なくない昨今。その決意を良い未来へ結びつけるためにも、Oターン転職の実態と注意点をしっかりと把握し、事前の準備をきちんと行うことが大切と言えるでしょう。(ライター:香山とも)