あなたの職場は大丈夫? クラッシャー上司とは
「有能ではあるけれど、自分のやり方しか認めず、部下を精神的に追い詰めてしまう上司」、そんな人を“クラッシャー上司”といいます。近年、このクラッシャー上司が問題視されるようになりました。クラッシャー上司とは何か、なぜ問題であるのか、どう接するべきなのか、ご紹介します。
クラッシャー上司とは何か
クラッシャー上司は、“指導”という名目のもとに厳しい発言や命令で部下をメンタル的に追い詰めていきます。ひどいケースでは、部下を休職や退職に追い込むことすらあります。
また、単なるパワハラ上司と違い、クラッシャー上司は“仕事ができる”という特徴もあります。業績を上げてきた功労者であるため、会社側もなかなかその上司に対して是正を勧告できないという課題もあるのです。クラッシャー上司本人も、「自分の行いは正しい」「部下が伸びるためには必要だ!」という盲信があるため、より事態を深刻化させています。
なぜクラッシャー上司が問題なのか
クラッシャー上司の問題は大きく3つあります。1つめは、人材の損失につながることです。会社の人間関係でうつ病などの精神疾患になるビジネスパーソンは少なくありません。一人前の社員を育てるためには、膨大な費用と時間がかかります。クラッシャー上司はそうした手間暇かけて育てた社員を追い込んで働けなくさせてしまったり、辞めさせてしまったりするのです。
2つめは、メンタル疾患の社員が増えたり、人間関係に問題がある会社だという評判が広まったりすれば、会社としての評判が落ちるということです。入社希望者が減り、若い担い手がいなくなってしまう危険性があります。そうなれば、将来的にはベテラン社員も育たなくなるということも意味します。
3つめは、会社全体のパフォーマンスを落としてしまうということです。クラッシャー上司を意識しすぎて、かえってミスを連発してしまったり、うつ病の初期症状として注意力が低くなってしまったりすることがあります。さらに、一人のパフォーマンスが落ちることにより、サポートする周囲のメンバーも自分の業務をストップさせなければいけなくなります。これにより、部署全体・会社全体の業務パフォーマンスを著しく下げてしまう可能性があるのです。
クラッシャー上司とどう接するべきなのか
もし、こうしたクラッシャー上司にあたった場合、どのように接していけばよいのでしょうか。具体的な対策をご紹介します。
1. 社外の人に話を聞いてもらう
社内ではクラッシャー上司を容認しているかもしれませんが、客観的に見れば多くの問題をはらんでいる可能性があります。まずは、社外の信頼できる友人に話を聞いてもらいましょう。相談するだけで心が落ち着くこともありますし、客観的な視点から課題をあぶり出してくれるかもしれません。
2. 専門家へ相談する
精神的に追い詰められている場合には、産業医やカウンセラー、医者の力が必要かもしれません。また、クラッシャー上司の振る舞いによっては弁護士や労基署の力を借りる必要性も出てきます。問題解決のために、また、自分の身を守るためにも、必要に応じて専門家の力を借りましょう。
3. 社内で味方を見つける
目に余るような振る舞いをするクラッシャー上司に対して、問題意識を持っている社員も中にはいるはずです。人事部やコンプライアンス部、クラッシャー上司よりもさらに上の管理職に、自分がどのような問題点に直面しているかを伝えてみましょう。その際には、証拠を提示したり、こんなことを言われたというメモを見せたりして、客観的に伝えるようにしましょう。
4. クラッシャー上司と直接話す
クラシャー上司に対して、自分の思いを伝えることが必要なこともあります。「指導していただいてありがたいと思っている」という前提を述べた上で、自分が今苦しんでいることを冷静に伝えましょう。その際、有効になるのは、自分への振る舞い・言動を客観的に提示すること。クラッシャー上司の多くは無自覚に部下を傷つけていることもあるので、それを目の前に突きつけることで、ひるむこともあります。
5. 転職する
どうやっても上司の態度が改善しない、会社側も対応を講じてくれない場合、転職することも検討しましょう。圧力を我慢しながら仕事を続けていては、スキルアップも望めませんし、心身を害する可能性もあります。自分がのびのびと働き続けられる会社に転職することもひとつの方法です。
クラッシャー上司により、会社にいるだけで暗い気分になってしまうなんてもったいないこと。実態を正確に把握し、自分の今の状況を打開できるように、的確に対処していきましょう。(ライター:香山とも)